第16話 遺跡の開放

 目の前には細身で眼鏡をかけた男性エルフが座っている。

 彼は自分の事を、このグランリア町、魔狩人マカド協会の総支配人ランバル・シスルファムと言った。


「シルマンダから、手紙がメルロウに乗せて届いていてねぇ。それで君達が来ることはわかっていたんだよねぇ」

「メルロウ‥?」

「イロハさん、メルロウって、手紙を運ぶフクロウの事なんですよ」

「へぇ…なるほど」


 独特な喋りをするランバルは、一息ついてまた口を開いた。


「サルーラム君の話だとぉ、イロハ君は遺跡を解放出来る力を持つとか持つとかぁ?」

「は…はあ…まだ分からないですけど…かも知れないって事で」

「ふむふむ。それは凄い!それが本当ならばぁ、一刻も早く解放して貰いたい物だねぇ。そうしたらこの寂れたぁ、グランリアの町もまた息を吹き返しぃ、溢れ出す魔物も減らす事ぉ…いや、全世界の為にもなるであろうともよ、ともよぉ」


 ランバルさんの話し方が少し耳につくけど。

 食事処の人や、ランバルさんが言っているみたいに、やはりこの門世界アラウザルゲートに異変が起きている事は確かなようだ。オルキルトさんがこの世界を去ってから約9000年で時代は進み、魔物がその時よりも跋扈する時代になったって事か。


「あの~聞きたいのですが、魔物ってそこまで多くなって来ているんですか?」

「ふむふむ。…知らないのかねぇ?」

「はい、最近になって町を出たものですから…世間知らずなんです…はははは…」


 七羽いろはは、そう言って頭を掻いて苦笑いした。


「む?そう言えばぁイロハ君、君は人間だろう?そもそもぉ、何故ぇ、エルフの中心地に人間が?…」

「それは…」

「ああああ…ウチのお婆様が捨てられていた人間の子供を拾って育てたんです!」

「ほう…それがイロハ君って事だったわけかぁ…なるほどなるほどぉ、人間をねぇ…」

「そのようですね…ははははは…」

「あはは…はははは」


 僕もイルも苦笑いしてそう誤魔化す。


「まあ良いでしょう。とりあえずぅ、遺跡へ向かいましょうかぁ?」

「そうですね。開放出来るのか、行かないとわかりませんからね」


 ランバルは深く頷き、席を立った。


 ◇


 僕とイル、そしてランバルさんは、他2人の魔狩人協会の従業員を連れて、迷宮遺跡へと向かった。


 そこへ行くと、この町のシンボルのように、神殿とその上に塔のように聳え立つ建物が鎮座していた。

 神殿の外観には、ギリシャにあるパルテノン神殿のような大きな柱が何本かあって入り口には4mほどの大きな鉄扉がついていた。


「開けてください」

「「はい」」


 2人の魔狩人協会職員は、魔法で重い扉を開ける。


「この迷宮遺跡の壁。何で出来ていると思いますかぁ?」

「さあ…なんだろう普通の石じゃないみたいですね」

「ふむふむ。そうなんですよぉ、何で出来ているのか、私達にも見当もつかない素材で出来ているんですよねぇ…。まるで絶対に壊されないように出来ているみたいでねぇ、、まぁ、良いでしょう。では中へ」


 扉を大きく開け終えた後にランバルさんが先行して進んで中へ入って行く。


 中も大きな柱が並んでおり、天井の高さは10mほどだった。

 灯りはすでに灯っていて明るい。

 祭壇のような物があり、そこまで進んだ。


 そこには大きな魔法陣が書かれた床があった。


「大昔はこの魔法陣で迷宮へと転送されていたそうなんだがねぇ…」

「へえ…迷宮って言うから洞窟のような物かと思っていましたが…違うんですね」

「文献によるとぉ、同じような迷宮遺跡は世界に50あると書かれていますぅ」

「50個もあるんですか!?」

「ふむふむ、で?解放できそうなのですかぁね?」

「ああ…ちょっと見て見ますね」


 僕はその辺を調べた。

 魔法陣を調べたけど別に何もなかった。


「イロハさん、ここは?」

「ん?」


 イルメイダが指を差した所、祭壇の壁に何かの印のような物が書かれた場所があった。


 七羽がそこに触れようとすると目の前に画面が現れた。


「おわっ!」

「む?」

「え?」


 僕が驚いたので、何事かと4人は僕を見ていた。

 僕が見ている物には目が行ってない所を見ると、多分僕にしかこれは見えていないようだった。


「何かぁね?」

「ああ…いえ、何でもありませんが…ここから何か出来そうな気がします」

「ほう」


 開いた画面にはこう書かれていた。


 ≪グランリア迷宮遺跡、使用者権限モード≫

 ≪現在自動停止中:開放オフ≫

 ≪迷路タイプ:迷路≫

 ≪階層3,4,5,6,⑦,8,9,10~50≫

 ≪宝箱:30~50個 アイテム生成設定:ランダム≫

 ≪階層ボスモンスター設定:7≫

 ≪注:ここでは開放オンオフ、階層設定しかできません。迷宮タイプ、モンスター設定、宝箱設定などはメイン創作設定でして下さい。≫


 何だコレ…

 開放はここで出来そうだけど…

 7に〇が付いてるって事は今の設定では7階層って事なのだろうか?

 それにしても、このメイン創作設定って何処でやるんだろう?


「イロハさん?何見てるんですか?」

「え?あああ…」

「あ‥」


 イルメイダは、何かを察して口を閉じた。


 よし、まあこれをオンに変えれば、この遺跡は解放されるはず。


 七羽は画面を軽く押すと開放オフがオンに切り替わった。

 すると、祭壇にある魔法陣が光り出した。


「ぬおおお!?」

「おおお…」

「おおお…」


 ランバルと魔狩人協会職員は、魔法陣が起動したのを見て驚きの声を上げた。

 魔法陣が光った後、その上に別空間に繋がるゲートが浮かび上がった。


「これはぁ…迷宮への入り口…ですよねぇ」

「ですよね!」

「やりましたね!支配人」


 職員達は歓喜の声をあげた。


「これで良いと思う」


 七羽いろははそう言って目の前の画面を閉じた。

 イルメイダ、ランバルと、魔狩人協会職員達は、目の前に湧き出た次元ゲートに目を奪われている。


「これが…迷宮遺跡の入り口…」

「この中に迷宮品の武具などがあるのですね!」

「うんうん、そしてまた人がこの町に戻ってきますね!ランバル支配人」


 魔狩人協会職員達は笑みを浮かべていた。


「イロハさん、お疲れ様です。やはりイロハさんなら解放する事が出来ましたね!んふふ」

「うん、それは良いけど、まだ中はどうなっているか分からないから、中へ入るのなら気を付けて行こう」

「はい、そのためにはパーティメンバーを募らないといけませんね…」

「うん、そこは…ランバルさんに協力してもらおう」

「そうですね」


 ランバルは職員二人に、先ずは勝手にこのゲートに入らないよう規制線を張るよう指示していた。

 職員二人は急いで遺跡を出て行った。


「イロハ君。まさか本当に解放できるとはねぇ…有難うと礼を先ず言いたい。有難うございます」

「いえ、僕達も中へ入りたかったので、開いて良かったと思ってます」

「約9000年ぶりに迷宮遺跡が開いたのだからぁ、一気に噂は広がりこの町に各地にいる魔狩人マカドが迷宮品を求めて来る事だろう」

「でも…ひとつ気になるのは、この町へ人が押し寄せて他の町が手薄になったりしませんかね?」

「そこは大丈夫だぁね。我々も先ずはこの遺跡に入れる魔狩人ランクを制限を設けると共に、ここは魔狩人協会がガッチリと管理しますからねぇ。後はぁ、解放者が他の遺跡にも向かっていると適当に言っておけばぁ、自分の近所の遺跡も時期解放になると思わせる事もきますしぃし」

「なるほど…」


 自信満々に、ランバルはそう言った。


「それでランバルさん。僕達この中へ入るためにパーティを組みたいんですけど?」

「ふむふむ。じゃあ、私がちゃあんとみつくろってあげましょう」

「お願いします」


 それからすぐに魔狩人協会の規制が入り施設は一時騒然となった。

 僕達はパーティを募集すべく魔狩人協会へ戻る事になった。

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