第14話 遺跡へ。

 あの後、僕、相沢ほなみ、柏原桜子、駿河浩平ら4人のグループLINEを作った。

 忘れる事は出来ないだろう、この一件で4人はぐっと親密になったような気がする。


 昨日もずっと一日中4人でLINE会話していた。

 ただ、携帯は門の世界へ持って行く事は出来ないので、あらかじめ親族の家へ暫く行くから連絡が出来ないかもと言っておいた。


 これで、また連絡が取れないとか言われることもないだろう。


 そして僕は、門の世界へ入った。


 ◇


「あ、イロハさんお帰りなさい」


 部屋を出ると、メイ婆さんとイルメイダが普通に挨拶をしてくれた。


「おはよう、メイ婆さん、イル」

「うむ、朝食。食べて行くだろう?」

「はい」


 テーブルにいつものように、パン、スープ、果物が置かれた。

 3人で朝食を摂る。


「イロハさん、オルキルト様の本に書いてあった遺跡なんですけど」

「うん?」

「今日から行ってみますか?イロハさんが強くなるためにはその遺跡にある脳豆が必要なんですよね?」

「そう書いてあったね。それに、エルフの長老様からも遺跡を解放しろって言われたし、とりあえずの目標はそこになるかな?」

「エルフの森にある迷宮遺跡は、シルマンダの町を出て、馬車で4日ほど走った所にあります。そこに「グランリア」と言う町があるのですが、遺跡自体が今は閉ざされているので、人も過疎化してしまいましたが…迷宮遺跡が開いている時は活気のある町だったんですよ」

「へぇ…迷宮遺跡の町かぁ、うん、行ってみよう」


 ◇


 先ずは「シルマンダ」の町へ行って、魔狩人マカド協会へ行った。

 この間のゴブリンレジェンド討伐の功績で、魔狩人協会の幹部っぽい人が、僕をEランクからその上のDランクへ昇格させてくれるって事らしい。


 手続きも終わり。

 これから迷宮遺跡へ行くと言うと事情を聞いてくれた。


「ほう…つまり、イロハ殿があの閉ざされた遺跡をもう一度解放する事が出来るかも知れないと言う事なのですかな?」

「うーん…深くは言えませんが、エルフの長老さんはそう言ってくれたんです」


 僕の言葉に、魔狩人協会幹部のエルフは少し考えていたがすぐに口を開いた。


「ふむ。まあ、いろいろと事情などは皆が持っている事だ。深くは聞くまい…それなら、ウチのヤム車を使うといい」

「えええ?ヤムを…良いんですか?」

「ああ、あの長老様が言うんだ。そのくらい協力してやっても問題ないだろう」

「有難うございます!」


 イルメイダは喜んで頭を下げた。

 この間、イルメイダが言っていた。

 ヤムと言う、某ゲームのチョ〇ボみたいな大きな鳥は軍用によく用いられる生き物だ。

 馬より、気丈で、速く、長く走れるヤムはこの世界では重宝されている。ただそこまで調教するのが大変らしい。


 ヤム1頭だけだが、しっかりとした荷馬車が取り付けられている。

 そこまで大きくはないが、中は4人乗りだった。


「これなら、馬より早くグランリアに着くはずだ」

「有難うございます…えっと…」

「ああ、申し遅れた。私はこのシルマンダ魔狩人協会副支配人のサルーラム・アルバスと言う、礼は要らない、遺跡を本当に開放出来るのなら、この国にとって重要案件でもあるからね」


 そう副支配人エルフは言った。


「じゃあ…お言葉に甘えます。サルーラムさん」

「イロハ殿、イルメイダ殿、武運を祈っています。ああ…それから、もしも迷宮遺跡が開いて中へ入るのなら、グランリアの魔狩人協会で仲間を最低3人ほど募集して中へ入った方が無難かと思いますよ」

「仲間ですか…」

「はい。もう大昔の記録になりますが、迷宮遺跡の中には人工で作る武器防具などよりも強力な魔法が付与された物がドロップすると言われています。その通称は「マジックアイテム」と言われる物なのですが、それを守る様に魔物がウジャジャいると言われています」


 サルーラムがそう言った後に、イルメイダが口を開いた。


「なるほど、つまり、パーティを組んで中へ入らないと危険って事ね」


 まあ、ダンジョンって言えばRPGでありきたりのパターンだけど。

 たしかにゲームでも、宝箱などの前に強力な魔物がいたり、ボスがいたりするものだったよね…


「わかりました。グランリアに着いたら仲間になる魔狩人マカドを探してみます」

「うむ。それが良い、寂れた町になったとは言え、昔からあそこを拠点にしている魔狩人も多いでしょうから、募集には困らないと思いますよ。それと私の名前を出せば協力してくれる手はずになっていますので、受付に頼むと良いでしょう」


 僕が答えると、サルーラムさんはそう言ってニコっと微笑んで頷いた。


 ◇


 ヤム車に乗った僕ら二人は、ヤムを走らせた。


 馬車では4日かかると言われていた道のりだったが。

 ヤムの強靭的な走りのお陰で半分の2日も掛からずにグランリアは見えて来た。


「見えましたね、イロハさん、あれがグランリアです」

「うん?」


 今までは、まだエルフの国なので森が鬱蒼とした場所ばかりを通過してきたが。

 草原が広がり、その先に、高い石の塀に囲まれた大きな町が見えた。


 近くへ駆け寄ると、塀の高さは15mくらいだろうか。

 上には間隔を置いた各所に見張り台もあった。

 堀が深く掘って有り、そこに大きな橋が架かっている。


 橋の前には関所があって、中へ入ろうとする人を兵士のような人達が検問をしていた。



「よし!そこで止まれ」


 ヤム車を停めた。


「魔狩人プレートか、商人タグを見せてくれ、それ以外なら調べさせてもらうが?」

「シルマンダから来た魔狩人よ。はい、プレート」


 イルメイダは、僕のプレートと一緒に兵士に見せた。


「ふむ。間違いないな。それと…良いヤムだ、はははは。ようこそグランリアへ!」


 兵士はヤムの首をポンポンと軽くたたいてそう言った。


 イルメイダはヤムを走らせて門を潜って行く。


 ◇


 門を潜ると、グランリアの町が広がっていた。

 石や木造の家々が立ち並び。

 いろいろな亜人が行き交っていた。


「過疎化したとか言ってたけど…結構、人いるね?」

「そうですね。一度、その土地に馴染んだら早々、町を移る人はいないと思いますわ。やっぱ、その町々で魔物の種類や慣れがありますから」

「そっか」


 街の中に大きな馬車置き場があった、そこへヤム車を連れて行く。

 そこにも兵士がいて、管理しているようだった。


「ねぇ、イル」

「はい?」

「ここもエルグラン・ルシール国の管理なんだよね?」

「はい、エルグラン・ルシール国は大きな町は5つはあるんですよ。このグランリアもその一つです。すぐ隣は人間の国「アーバルス王国」があります。その国境よりはエルフ国にあるのでここもエルフの土地って事ですね」


 人間の国との国境付近なんだ?…

 そう言えば、塀の上のエルフ兵士達が多い。やっぱ国境だからなのかな?


「駐停所は、1日銀貨1枚だ」

「はい」


 イルメイダは銀貨1枚を兵士に渡してヤム車を停めた。

 ここは、銀貨1枚でヤムのエサも与えてくれるらしい。


「では、イロハさん行きますか」

「うん」


 街の中を歩く。

 舗装はされてはいない、土の道が規律よく引かれている。


「イロハさん、塔みたいな建物が見えますよね?」


 イルメイダが指を差した方向を見ると白く塔のような作りの建物が見えた。


「ああ、見えた」

「あれが、迷宮遺跡です」

「へぇ…」

「でも、先ずは魔狩人マカド教会と、…宿も取らないと行けませんね」

「うん」


 街を歩いて行く。

 食事処、武器屋、防具屋、酒場、雑貨屋、いろいろな店舗があるが、あまり客入りはよくないような雰囲気をしている。


「イロハさん、お腹空きませんか?」

「うん…そう言えばそうかな?」

「じゃあ、ご飯食べてから行動しましょうか?」

「うん」


 近くにあった食事処へ入った。


「いらっしゃい」

「あのオススメを2つ下さい」


 エルフの老婆が挨拶をし、イルメイダが注文を適当にそう言った。


「はいよ。見ない顔だね?旅人かい?」

「はい、シルマンダから来ました」

「精霊宮殿近くの町から来たのかい。それはそれは…向こうは精霊のお陰で魔物も少ないだろう?」

「そ…そうでしょうか?」

「ここは、町の規模に対して、兵士以外の魔狩人が昔よりかなり減ったからね。昼夜、外で騒ぎが起きてるんだ…人間の国の方が大きな仕事はあるみたいだからねぇ…」

「そうなんですね…」


 そう言葉を吐き捨てて、エルフの店員は奥に行ってしまった。





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 後書き

 こちらの方も、小説家になろうでも重複投稿致しました。

 ですがカクヨムファンの皆様、こちらから新しい投稿はしていきますので宜しくお願い致します。



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