第11話 姑息な戦法

ボンボン学校の一日目も終わり、早速友人もできた(黒野)俊輔は校門前に止まっているリムジンに近づく

豪勢なリムジンでの移動も慣れてきた俊輔はシートに座ると下を向いて眠り始めた

偶然か必然か横に倒れて北条の胸部にもたれてしまう

俊輔自身一瞬”それ”を理解したが、どうにでもなれという思いで北条に甘えた


もしミラがいたのならドン引きされるに違いない行為だがリムジンの後部座席内は外からも運転席からも見えない

それもあっての行動に北条はニコッと笑いながら、俊輔の頭をなでる

彼女なりに母性本能がうずいたのだろうか。まるで我が子を愛するように俊輔を愛撫する。


気付いたころに俊輔は彼女の膝枕で爆睡しており、一瞬で自宅に着いたような感覚だった


「ご主人様。着きましたよ」


耳元で北条の魅惑的な囁きが響く

もう少しここにいたいという感情を抑えながら俊輔はのそっと起き上がった


「ありがとう。北条さん」


自分の荷物まで北条に持たせていることに申し訳なさがあったが北条自身が「私が持ちますので、ご主人様は明日に備えてお風呂にでもお入りくださいませ」と言われ颯爽と家に入った

明日の朝早くからチャンピオンズリーグの決勝が始まるため

それに備えて早く寝ようという試みだ


いつもながらの夜のルーティンを始めようとした俊輔、しかし同刻。


俊輔の屋敷の近くにある変電所に黒い部隊が集まっていた


「位置に着きました。予定通り24時にこの変電所を落とします」


男の一人が無線に向かってそう言うと女性の声が無線から聞こえた


「了解。しくじらないように」


そう携帯で返事したのはなんとミラの護衛をしていたあのレナだった

不気味な笑顔を浮かべながらレナはミラのそばに仕えたまま心の中では笑っていた


(ふふふ。俊輔・山宮。お前はミラ様と言う素晴らしき婚約者(私は認めてない)がいるにもかかわらず他の女に対しデレるなどあり得ない行動をした奴だ)


「ではレナ、私は夕食にする。レナも休んでいいぞ」


何も知らないミラの笑みをありがたく拝むレナ

この笑顔を守れるのは私しかいないと勝手に思い込む


彼女は生まれたときからハーゼンクレーヴァー家に仕えることが決まっており、ミラはレナやレナの家であるラントルート家に強い信頼を寄せている

それしてレナ自身も優しく強く美しいミラと初めて出会った頃から一目ぼれしており、いきなり現れたアジア人との婚約に心底ショックを受けた


(この笑顔は絶対に私が守るんだああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!)


そう心で誓ったレナの行動は俊輔の家の電気を一時的に止めるという物だ

そう聞くとただの停電だと思うかもしれないが、それは違う

レナは山宮俊輔という人間を徹底的に調べ上げており、その好みも知っている


そう、明日5時から始まるチャンピオンズリーグ決勝を視聴させまいとレナは企んだのだ!

これはサッカーファンにとっては最悪の攻撃であり、ガンジーが助走をつけて殴るレベルの行為だ

人を殺さずに人を殺す方法をレナは熟知していた

不気味な笑顔が夕焼けと共に大きくなり、レナは一言小さく呟いた


「俊輔山宮、お前がどんな顔で絶望するかが楽しみだ」


チャンピオンズリーグ視聴をかけた壮絶な戦いが俊輔の知らないところで始まったいた!





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