第4話アーロン坊っちゃま
坊っちゃまの部屋へと案内される前に誰も居ない部屋へと案内される。
「ここは…」
「私の部屋です、何かあればここに言伝を置いておいてください」
グランドさんの机の上をポンと叩き、メモ帳のような物とペンを取り出した。
「わかりました」
私は頷くとグランドさんは話を続ける。
「あなたの仕事は坊っちゃまのお世話です。朝起きたら坊っちゃまの着替え身支度を整えて食事の配膳。その後は坊っちゃまの服を洗濯、部屋の掃除に坊っちゃまの御用はなんでも聞くこと、何かわからなければ自己判断は絶対にせずに私か屋敷の者に指示を仰ぐ事」
「は、はい」
「ここまでで何か質問はありますか?」
「はい、まずは坊っちゃまの服は何処でしょうか?あとは洗濯をする道具の場所。坊っちゃまの好きな物や苦手な物なども聞けたら嬉しいです。あとグランドさんがいない時は他の人って事ですがグランドさん以外は厨房の料理人さんぐらいしか人に会ってませんが…誰がいるのでしょうか?」
私が質問をまくし立てるとグランドさんが一瞬呆気に取られる。
「あ、あの?」
「あっすみません、まずは坊っちゃまの洋服ですが部屋のクローゼットに一通り揃っております。洗濯が終わったらそこに戻すように、洗濯の道具は先程案内した外の洗い場にありますので好きなように使いなさい」
「はい」
「坊っちゃまの好きな物は…ありません。嫌いな物はたくさんあります。それは料理長のボムが知っているので大丈夫です。私が見つからない時はメイド長のマリエルがいます。今は出ているので後で紹介します」
「わかりました」
私は今のことを頭の中で繰り返してどうにか覚える。
そんなに難しい事もなさそうなので大丈夫そうだった。
また分からなければ聞くことにしよう。
でもその前に、最後に一番重要な事を聞いた。
「坊っちゃまはなんのご病気でしょうか?」
グランドさんは何も言わずに見つめてくる。
「それはあなたには関係ありません。決して伝染るものでは無いので安心しなさい。では坊っちゃまに紹介します。坊っちゃまはジロジロと見られるのを嫌いますので気をつけなさい。あと決して#叫んだり声をあげないように__・__#」
グランドさんに年を押されて私はゴクッと唾を飲み込み、コクっと頷いた。
そしていよいよ坊っちゃまの部屋の前へと来るとグランドさんがコンコンと扉をノックする。
中から返事はないがグランドさんが声をかけた。
「アーロン坊っちゃま、新しく入った使用人を紹介します。失礼致します」
グランドさんはゆっくりと扉を開けた。
中は昼間なのにカーテンがかかっているのか真っ暗でよく見えない。少し目が慣れて来ると広い部屋にベッドがポツンとあるのが見えた。
そこに小さな膨らみがあり、アーロン坊っちゃまがシーツを被って丸まっているのだとわかった。
グランドさんに目で合図されて私は声をかけた。
「アーロン様、今日からお世話係になりましたマリルと申します。坊っちゃまの為に一生懸命お世話をさせて頂きますのでよろしくお願いします」
ペコッと頭を下げるとシーツが少し動く音がするが返事はない。
「ではまずは部屋の掃除からしなさい」
グランドさんは返事が無いのは当たり前のように話を終えると私を見てから部屋を出ていった。
「では坊っちゃま少し部屋の掃除をするのでうるさくなってしまいますがよろしくお願いします」
私は一応声をかけると部屋のカーテンへと手をかけた。
サー!とカーテンを開くと日差しが部屋に差し込み部屋の細かな様子が見えてくる。
すると坊っちゃまが大きな声を出した!
「閉めろ!」
「え?」
「カーテンを閉めろ!」
シーツの中から幼い声で必死に叫んでいた。
「は、はい!」
私は慌ててカーテンを閉める。
「明かりは嫌いだ」
「で、ですが明かりが無いと掃除が…」
「掃除なんていい!」
坊っちゃまは喋る気が無いとばかりに口を噤んでしまった。
私は仕方ないと見える範囲で掃除を始める。
部屋は坊っちゃまが明かりが嫌いなせいかホコリっぽくカビっぽい。
空気が悪くて窓を開けたかった。
「ぼ、坊っちゃま…カーテンは開けないので窓を開けさて貰えませんか?少しだけでいいので」
私が必死に頼むと少しして「わかった」と小さな声で返事がした。
「ありがとうございます!」
私は明るくお礼を言うと坊っちゃまから一番遠い惑を少しだけ開けた。
するとスーッと新鮮な風が入ってきて部屋の空気が少し良くなる。
カーテンが揺れる度に部屋を少し明るくしてくれるのでその明かりを頼りに掃除を開始した。
あらかた掃除したので今度は洗濯をする事にする。
「坊っちゃま、お布団を洗濯したいのでそこから移動して貰うことは可能ですか?」
「やだ」
坊っちゃまは動きたくないと拒否する。
「わかりました、ではそこ以外の物は洗わせていただきますね」
私はベッド以外で汚そうなものを掴むと洗い場へと向かった。
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