「セイレンと私は二人で幸せになるの。姉さんは他の人を探しなさい」

「人族との交流を望んで来たぞ!」

ハルモニエラの庭園に妖艶な声が響く。

「特にそこの! セイレン・アイヴァーンとな!」

長い黒髪に深紅の瞳をもつ魔族が、セイレンへ言い放つ。その傍で、アリシアは頭を抱えていた。



「何しに来たのレナ姉さん」

アリシアは呆れた口調で尋ねる。


「何って、妹の心を射止めた人族を一目見たくてね。妹がどんな男に惚れたのか、姉さんも興味津々よ」

レナはニヤニヤしながらセイレンを見る。


「惚れてなんかないわよ!」

アリシアは慌てて否定する。


「そう? じゃあ、あなたには関係ないかもね」

レナは意味ありげに笑う。


「どういう意味?」

アリシアは不安そうに聞く。


「だって、私もセイレン君に興味があるんだもん」



レナ・ノクトゥルナ。彼女は魔族の中でも美しいと評判の女性だった。長い黒髪はしなやかに揺れ、深紅の瞳は鋭くも妖しくも輝いていた。彼女の肌は白く滑らかで、人族の女性とは違う艶やかさを放っていた。彼女の身体は豊かな曲線を描き、人族の男性を惑わせる魅力を秘めていた。彼女の服装は露出が多く、胸や腰や脚を惜しげもなく見せていた。


「セイレン君、私と一緒に遊ばない?」

ミラはセイレンの耳元で囁く。


「えっ、遊ぶ? どういうことですか?」

セイレンは驚いて聞き返す。


「あら、あんたがアリシアと遊んでるようなことよ。私も一度やってみたかったの」

ミラは笑顔で答える。


「遊んでるって……」

セイレンは言葉に詰まる。


「姉さん、やめてよ!」

アリシアは怒って割り込む。


「なによ、アリシア。私がセイレン君と仲良くするのが嫌なの?」

ミラは挑発的に聞く。


「嫌じゃないけど……」

アリシアは言い淀む。


「じゃあ、問題ないじゃない。私もあんたもセイレン君が好きなんだから、仲良くシェアしましょうよ」

レナはニコニコしながら言う。


「シェア!?」

セイレンとアリシアは同時に叫ぶ。


「そうよ、シェア。私もあんたもセイレン君のことを愛してるんだから、平等に扱ってあげなきゃね」

ミラは真顔で言う。



「君の姉はいつもこんな感じなのか?」

アリシアの耳元でセイレンが小声で聞く。


「はぁ……レナ姉さんはね、昔から自由奔放で好き勝手な人なの。魔王の座にも興味がなくて、私が跡を継いだときも何も言わなかった。人族と魔族の関係もどうでもいいと思ってるみたいで、エデンヤードに来てからは色んな人と遊んでるのよ」

アリシアはため息をつきながら説明する。


「遊んでるって……」

セイレンは不安そうに聞く。


「ええ、遊んでる。姉は人族の男性にも興味があるみたいで、よく口説いたり口説かれたりしてるの。私も一緒に連れまわされたことがあるけど、本当に面倒だったわ」

アリシアは苦笑する。


「そうなんだ……」

セイレンは驚きを隠せない。


「でもね、姉は本当は優しい人なのよ。私が魔王になったときも、色々と助けてくれたし、エデンヤードのことも応援してくれてるの。だから、姉がセイレンのことを好きだと言ってるのは本気なのかもしれないわ」

アリシアは少し寂しそうに言う。


「本気……?」

セイレンは戸惑う。

「それは困るな。僕には心に決めた女性がいるからね」

アリシアの手を握りながらセイレンは答える。


「はいはい、ありがとう」

セイレンの手を振りほどきながら、アリシアはレナに言う。


「レナ姉さん、セイレンにつきまとうのはやめてくれない? セイレンは迷惑してるのよ」

アリシアはミラに冷たく言う。


「えー、そんなことないでしょ。セイレン君は私のことが好きなんだもん。ねえ、セイレン君?」

レナはセイレンに甘えるように言う。


「いや、そんなことは……」

セイレンは困った顔をする。


「ほらほら、素直になりなさい。私たちは仲良くなれるはずだから。アリシアも一緒に楽しみましょうよ」

ミラはアリシアにも笑顔で言う。


「楽しみたくないわ。姉さんは私たちの邪魔をするだけだから。セイレンと私は二人で幸せになるの。姉さんは他の人を探しなさい」

アリシアはレナを睨む。


「幸せになる……あら素敵ね。姉さんも応援するわ」


「アリシア、二人で幸せになろうな……」


「あなたたちねえ……」

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