第8話 そろそろ配信はじめる?

 ダンジョンでの戦いを終え、ドロップアイテムとして宝石のルビーと回復薬のエリクサーを手に入れた俺とサリナはルビーと魔物を倒して手に入れた魔石を換金するためにダンジョンを出てすぐ近くの場所にある換金所に来ていたのだが、今、目の前でとんでもない光景が広がっている。


「え、これって……夢?」

「俺も夢な気がしてきた」


 どうして俺たちがこのような反応になってしまっているのかと言うと、換金してもらうためにルビーと魔石を換金所の職員に渡したのだが、魔石が10万円で、ルビーがなんと500万円で換金されたのだ。


 確かに高い値段で換金されるとは思っていた。だけど、まさかここまで高額になるとは思いもしなかった。というか、誰が想像できただろうか。


「それではこちらがルビーの500万円と、魔石の10万円の合計510万円になります」


 職員が510万円の現金を俺たちに差し出した。

 そこでようやく夢じゃないんだと気づいた。


「ユウくん……」

「うん、これ現実だ……」


 動揺しつつもその510万円を受け取り、俺たちはその場を離れ、一旦俺の部屋に戻った。


「これ、どうする?」

「半分ずつ分けるんじゃないの?」

「でも、ミノタウロスを倒したのはユウくんだからユウくんの方が多くもらうべきだよ」

「いや、あれはサリナが時間を作ってくれなかったら倒せなかったんだからやっぱり半分にすべきだよ。何ならサリナが多くもらうべきだよ」

「さすがに私の方が多くもらうことはできないよ。わかった。それじゃ半分ずつ分けよう」


 俺たちは換金した510万円を255万円ずつ分けた。

 まさか急にこんな大金を手にすることになるとはな。


「とりあえず、換金も済んだことだし何か食べに行く?」

「うん、そうだね。まだ動揺しているけど、とりあえず何か食べながら心を落ち着かせよう」

「よし、決まりだね」


 俺たちは近くのレストランへと足を運んだ。

 普段の俺なら絶対に行かない少しお高めのレストランに。


*****


「うお~、凄い! こんなレストラン初めて来たかも!」

「ふふっ、ユウくんがこんなにはしゃぐことってあるんだね。かわいい」

「そりゃあ、こういうところ行く機会なかったからね。サリナはやっぱり仕事関係で行くことあるの?」

「そうだね。たまに行くこともあるけどそれでもあまり行かないから、私も楽しみ」


 俺たちはレストランに入ると案内された席につく。

 もちろんダンジョンにいた時の服装ではなく、ちゃんと着替えてから来たのだがこういう場に来るのに慣れていないせいで周りの視線が俺たちに向いているような気がしてならない。


 そんな俺をみていたサリナが優しい笑顔で俺の心を落ち着かせようととしてくれる。


「ユウくん、緊張してる?」

「うん、結構してる。緊張しすぎて、周りの視線がこっちに集まってるような気がするよ」

「大丈夫。そんなことないよ。私たちは料理を楽しもう!」

「そうだね。せっかく来たんだから楽しまなきゃ損だよね」

「そうそう!」


 サリナの言葉のおかげもあり少しは心が落ち着いたような気がする。

 もし、一人で来ていたらずっとガチガチに緊張して料理を楽しむどころではなかっただろうな。


 やっぱりサリナと一緒に来れて良かったと思った。


 談笑しながら料理を待っていると、料理が次々と運ばれてくる。

 運ばれてくる料理はどれもキラキラしているように見えた。メインの料理だけではなく一緒に運ばれてきたサラダまでもが普段食べているものとは全くの別物のような気がする。


「凄い……」

「どれも美味しそうなものばかりだね!」

「うん、例えが合っているか分からないけどまるで芸術品みたいだ」

「たしかにどの料理もキラキラしてるもんね。さっそく食べようか」

「うん」


 俺は切り分けられた牛肉に綺麗な色をしたソースがかかっている料理を口に運ぶ。


「ん……っ!?」


 噛んだ瞬間口の中に肉汁の旨味が広がっていく。

 今まで食べてきたどの肉料理とも違う。食べたことのない味。食べて進めていけばいくほどもっと欲しくなる。


 美味しい……。


 気づかぬうちに俺の緊張は完全になくなり、料理を楽しんで先ほどまでの少し堅かった表情が笑顔へと変わっていた。


「ユウくん、美味しい?」

「こんな料理食べたことがないよ! 美味しすぎて自然と笑顔になっちゃう」

「そっか、良かった。私もユウくんと一緒にここに来て、美味しい料理を食べることができて幸せだよ」


 サリナも俺と同じように幸せそうな表情で料理を次々に口へと運んでいた。


 俺たちはすべての料理を食べ終えると、会計を済ませて店の外に出た。


「ユウくんこの後時間ある?」

「今日はもう予定ないから大丈夫だけど」

「それじゃあさ、このまま配信用のカメラを買いに行かない?」


 サリナはこのままカメラを買いに行きたいと言ってきた。

 たしかによくよく考えてみれば俺たちは一緒に配信者になるとは決めたもののまだ配信で使うカメラを購入していなかった。


「そうだね。行こうか」

「やった!」

「今から買いに行くってことはそろそろ配信活動を始めるってことで良いのかな?」

「うんっ! 今日の戦いで私たちの連携力は高いことが分かったし、ユウくんさえ良ければそろそろ始めたいと思っているよ」

「俺はいつでも大丈夫だよ」

「それじゃあ決まりね!」


 俺たちは配信活動を始めるためのカメラを購入するために機材等を販売している店へと向かった。



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