第42話 肉は正義

「え、あ、はい。ぜひ食べたいです! ってあなたは?」

「村長!」

「おお、これはナーバル村のアリアか。大きくなったなあ」


「え? あ、失礼しました。えっと、タイチと言います」


「よろしくのう。わしはこの村の村長をしている、ダガンというものだ」


 ダガン村長は白い髭をたくわえ、頭にはターバンのようなものを巻きつけ杖を持っている。目つきはとても鋭く、その眼光だけで人を殺めそうな勢いがある。

 服装はゆったりとしたローブを着ており、村長にしてはかなり質素だ。


「それで? モーホーンを買い取りに来たのか?」

「あ、いえ」


「タイチさん。ここは私が説明を」

 アリアさんが説明を始める。

 二人は話を始めるとすぐに村長の顔色が変わっていく。


「アリア、なぜそのことを?」

「こちらのタイチさんのお力です。ダガン村長、ぜひ私たちに協力させていただけませんか?」


「いや、しかし」

「大丈夫です、お話頂ければ必ずタイチさんが力になってくれるはずです!」

「しかしこやつは本当に渡り人なのか? 信用できん者に話すわけにはいかん!」


「ダガン村長、この村の人たちを救いたくはないのですか? 今がその時なのです!」

「う、うむ。わかった、アリアを信じよう。ついて来い」


「ありがとうございます。タイチさん、行きましょう!」

「は、はい」


 こうして僕たちは村長宅へ向かった。


 ダガン村長の話では、もともとこの村は畜産を行っていた。タイチの予想通り、モーホーンを乳や肉の供給源として家畜化され乳は食品として摂取される他、乳製品(チーズ、バターなど)の原料としても、肉は食材として利用してきたそうだ。


 しかし水害の後、モーホーンの頭数も減り困っていた所に、村に魔獣が現れるようになったというのだ。


 その魔獣はティグリスという魔獣で非常に知能が高く定期的にモーホーンを狩っていくという。


「ティグリスは、この村から少し離れたところにある渓谷に住み着いておる。奴はモーホーンだけではなく人間まで襲うようになってしまった。しかも奴の住処は断崖絶壁に囲まれた天然の要塞。とてもではないがこの村の戦力では太刀打ちできぬのだ」


「わかりました。なんとかします!」

「なんとかってお前なあ、大丈夫なのか?」

 ロイさんの心配をよそに僕は胸を張って答える。


「大丈夫です! 牛肉と牛乳のためですから! 多少の無茶はするかもしれませんが肉のためです、仕方ありません」


「どうしたんだ、タイチ。そんなにうめえのか、モーホーンってのは?」

「間違いありません。ですよね、村長さん!」

「あ、ああ。昔はなあ。放牧と餌の配合でそりゃあうまい肉も作れたんだがな」

「大丈夫です! 心配いりません! 僕が倒します! ティグリス!!」

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