第485話 そして、子供達からの説得。 中編

「父上、傷心の所、失礼致します」


(あいかわらず九歳にして身長でけえ)


 カリメラちゃんの相棒にしてリア先生との長女、

 メアリちゃんが颯爽とやってきた、いやほんとにそんな感じ。


「もし母上方から怒って逃げるのであれば、私を倒してからにして下さい!」


 そんな、木の剣を向けられても!

 ……いや、こう見えてこの剣で学校じゃ男の子をしばき回してるんだよなぁ、

 この剣だからこそか、あんまりやり過ぎるとカリメラちゃんに止められるらしい。


「えっと、さすがに九歳相手では」

「実の娘に手を上げると母上が黙っておりませんが」


 ぎくり


(ずるい手を使うんだよなあ)


 九歳にして狡猾である。


「今度、久しぶりに一緒に寝てあげますから」

「あっはい」


(本当はメアリの方が寝て欲しいくせに!)


 いつもは奥さんの誰かに僕を占領されるから、

 実は僕の添い寝って子供たちの間では価値が高いらしい、

 こんなダメ貴族、いやダメ親父なのに!


(母性はそこらじゅうにあるけど父性は貴重なんだろうな)


 たまに僕の父上が来ると娘連中が群がるのもそのせいか。


「父上? 父上、大丈夫ですか?」

「……まだちょっとクラクラしてる」

「では、これをどうぞ」


 おでこにチュッとキスしてくれた、

 これが案外、意外と嬉しいかも……。


「さあ父上、これでまた母上方の尻に敷かれて下さい」


 そう言い残し、颯爽と去って行った……

 去るって言ってもすぐ奥の子供溜まりに戻っただけだけれども。


(あっ、次はエスリンちゃんの長女の!)


 やってくる姿を見るといつもドッキリする、

 栗毛のエスリンちゃんとの子供なのに金髪で、

 どこをどう見ても僕の従妹だった、アリアにそっくりなのだ。


(髪も、顔も、姿も、なにより声が同じだ)


 このあたりの説明はちゃんと受けたっけな、

 アリアの子宮を使っているから仕方が無いっていう。

 とはいえ、アリアのようなワガママには育ってない、と言いたいが……


「ミストお父様、我慢なさい!」

「は、はいっ」

「ちゃんと『エリスのために我慢します』と言って下さい!」


 うん、ワガママというか、全てを自分に向けたいらしい。


「エリス、また髪型変えたのか」

「あら、よく気付いて下さって、これはエスリンお母様が……」

「ごめん続きは後で」「という事は、出ていったりは、しませんね?」


 あっ、エリスはエリスなりに心配しているんだ、

 近くでその様子を色んな意味で心配しているエスリンちゃん、

 こうやってふたり、見比べると表情が似ている事が、たまにある。


(姿や髪色は違っても、やっぱり母と娘なんだなぁ)


 さあ次は、と思ったらミランダさんの娘、

 ミルラちゃん八歳がお水を持ってきてくれた、

 偉いなあ、あいかわらず子供用メイド服がかわいい。


「ありがとう」

「どういたしまして!」


 飲んで気を少し落ち着かせる。


「お兄様」

「えっ、あ、マクシム!」


 しれっと僕の、実の弟が混じっていた!!


(九歳のはずなんだけど、意外と背が低いんだよな)


 まあ、ウチの娘でやたら高いのが二、三人居るし。

 注:亜人を含むと三人になります


「面白い事があると聞いて奥で隠れて見ていましたが、

 これ、面白がっても良いのでしょうか、あと相変わらず、

 同い年なのに『おじさん、おじさん』言われています」


 うん、娘や息子からすれば『叔父(おじ)』なのは仕方がない。


「んー……あっ、彼女はどうしたの、ジッポンの牡丹(ぼたん)姫」


 チヨマル王子の従妹である。


「こ、こここの間、て、手を、二十秒くらい握って、って僕に逃げないで下さい!」

「うん、逃げたい」

「とりあえず、事の成り行きを父上に報告しないといけないので、見ていますね」


 年齢の離れた弟が娘や息子と同い齢だと、

 なんていうかこう、接し方が難しいねっ!


(いや、今更こんな事を考えている場合じゃなかった)


 次に来たのは目の前への、瞬間移動だった!!


(あっ、今度は単独で来たのか)


 そう、亜人国『みんなの森』で国王呼ばわりされている、

 ダークエルフハーフのミハイくん、すっごく冷たそうな目と表情が人間の女子に大人気らしい、八歳なのに!!


(って子供たちの説得? これみんな母親に前もって言われて来てるな)


 僕も二十六歳となると、さすがに気が付きます。


「パパ、逃げるなら『みんなの森』しかないけど、

 他へ逃げたら俺が捕まえる側に混じらないといけないからやめてくれよ」

「う、うん」「よかったー、パパ、逃げないってさーーー!!」


(いやいや決定しないで!!)


 子供溜まりに瞬間移動で戻って、

 ダークエルフハーフの兄弟姉妹で喜んでいる、

 ちなみに妹、七歳の長女プルピナちゃんの方が背が高い事に触れるのは地雷魔方陣らしい。


「んっと、んっと、ねえパパ」

「あっ、セリーちゃん」


 メカクレの時点で誰の娘かわかるよねっていう、

 八歳にして計算の達人なのは母親譲りなのだろう。


(っていつ来たんだ、僕がミハイくんに見とれている隙か)


「パパが怒った場合、計算したの」

「どんな計算?」

「もしパパが怒って家を飛び出したら、二十六日目に、死にますっ!」


 嫌な計算だなおいっ!!


「でも、もし僕が死んじゃったら、ソフィーさんとベルルちゃんも」

「だから、パパは家を飛び出せない風に、絶対なっている、はず、です」


(でしょうねえ)


「うんわかった、セリーちゃん、あとはパパの方で考えるから」

「考えるだけムダーーー!! ケケケケケケ!!!」


 あっ、奇声を発して逃げた!

 相変わらず怖い娘だ、うん、いろんな意味で。


(あっ、さすがに母親のサリーさんにちょっと怒られてるみたいだ)


 次は誰だ誰だ、

 ほんっとショックで落ち込む暇も無いなあ。


(……ハッ、そういう作戦かな?!)

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