第467話 エスリン=ポークレット
「さあご入場はオムロック=スチュアーム聖教会司祭だ、皆、拍手っ!」
(誰えええええええ?!?!)
……あっ、思い出した、確か孫がベルルちゃんの婚約者だった!
公爵の先輩かつ何かのパーティーで来てくれていたっけな、うん、
僕の持つ公爵一覧の冊子にも名前と似顔絵があった、だから思い出せた。
(やはり大教会、聖教会、大教会ときたら次は聖教会か)
めんどくさっ。
こちらはお孫さんのアテンドで来るが、
意外と足腰大丈夫そうだな、そしてあの孫が確か元婚約者。
(これがベルルちゃんとの式ならアレだけど、エスリンちゃんなら、まあいっか)
またテーブルが用意される、
あのお水いっぱい飲むのをまたやらされるのか?!
さすがにトイレに行きたくなるぞ、アイテム袋にする訳にもいかないし。
「聖教会司祭オムロックじゃ、婚姻の儀を執り行う、良いな!」
「はいっ」「はい司祭様」
僕の隣でエスリンちゃんが眼鏡を直している。
「聖教会所属、大神官ミスト=ポークレット並びに聖教会員エスリン」
あっ、孫のリーフくんだっけ、が聖杯を出すが今度はちっちゃい!
そして半分に切ったボカスの実を入れる、うん、これもすっぱいやつだ。
「さあ、飲むが良い」
「はいっ、では……」
ちょっとで良いんだよね?
今度は無理せず……うん、こんなもんで。
「はいエスリンちゃん」
「……いただきます」
あっ、コキュコキュと飲み干しちゃった、
残ったのはボカスの実だけ、うん、まあいいや。
「これで聖教会の認める夫婦とする、さあ、指輪じゃな」
「はい、エスリンちゃん」「あの、やさしくして、くださいね」
いや言い方! 誤解されるからー!!
(いつも僕が乱暴にしてるみたいじゃないかー!)
むしろ夜のベッドでは逆に……って今は結婚式だ。
「それじゃあ、ゆっくりと」
華奢な指、これでよくメイドをしてくれていたよ、
孤児院から引き取る時も本当はもっとメイド向きの子を選べただろうに、
どういう経緯かは聞いた事がないけど、でも、でも今は……エスリンちゃんで良かった。
「……ミストさん、ありがとう」
「うん、痛くなかったよね?」
「心地良い、です」
良かった。
「では私も」「う、うん」
エスリンちゃんにはめてもらう、
なぜか昔、まだエスリンちゃんが来て間もない頃、
ベッドから出るのをグズった僕に寝てるまま靴下を履かせてくれた事を思い出した。
「……はい、ミストさん」
「ありがとうエスリンちゃん、これで夫婦だね」
「はい、ミストくんと、夫婦です」
あっ、エスリンちゃんの目から涙が!
「うむ、では、次は、まあ、のう」
オムロック司祭、わかってます!!
「じゃあエスリンちゃん」
「……ミストさん、動かないで……」
背伸びをしたエスリンちゃんの方から一気に!!
(んぐ、んぐっ、んぐぐぐぐ!!!)
情熱的過ぎいいぃぃぃ!!
(……うん、ボカスの味がする)
そして口内を蹂躙されたのち、唇が離れ落ち着く僕ら。
「では最後に二人よ、順に名乗れい」
「はいっ、ミスト=ポークレットですっ」
「エスリン=ポークレットです」
そして、夫婦ですっ!
「互いに何か、相手に言いたい事はあるかの?」
台本でもあるかのようなこの流れ!
いやこれ、きっとあるな。
「エスリンちゃん、当主として言わせて欲しい、昨日付けでメイドの任務を解くよ、
今日からは自由だから、自由になったうえで、僕の奥さんになって欲しい」
「ふふ、もう成っていますよ」
(エスリンちゃんが、笑ったあああああ!!!)
笑われたのに嬉しい
だめ貴族だもの。 ミスト
いやこれ喜びの笑顔だからっ! だよねっ?!
「ミストさん」
「はいっ」
「結婚できました、ありがとう!!」
ああっ、ぎゅうううって抱きついてくれてるう!
僕も少しなら抱き返しても良いよね? うんっ、幸せだあ。
「女神セレネ様も喜んでおられるじゃろう、これから存分に幸せになるが良い」
「「はいっっ」」
こうして四人目の結婚式も無事に終了、と。
「聖教会オムロック=スチュアーム司祭の退場だ、皆で、あ皆で拍手、拍手うーーー!!」
イジュー先生の変な言い方は気になったが退場の司祭様をみんな拍手で送る、
孫がちらちらベルルちゃんを見ながらついて去っていくが、まあ気にしない!
さあ、これで正妻側室が終わったのだが、この後はもちろん、当然の事ながら……
「さあそれではしばしの休憩だが、結婚式、この後も、まだまだ続くぞ!」
いやイジュー先生、何その言い方。
(でもナイスなトイレタイム!!)
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一方その頃、砂漠の国最南部の検問地点では……
「さあ君たち、良かったね若い欠損が出なくて」
リアの下の弟、アイザックがゴロツキのような青年達を相手にしていた。
「お、俺たち、いや俺だけでも、実家に連絡を」
「全員もうしてあるよ、国外追放、しばらくナスタンで待てば、
家族思いの親兄弟が来るかもしれないし来ないかも知れないな」
不安そうな表情の男たち、
ミストの友人検査で不敬となった者達だ、
ミストの一学年上でGクラスだった連中と同学年でFからEに上がった男の計四名。
「な、なんでこんな目に」
「本来は不敬で死罪だ、それを欠損兵士が出た時のパーツとして保留し、
年度が変わったから国外追放で済むんだ、国王陛下の命令だ、従わなければ今度こそ……」
剣を向けられて怯える四人。
「わ、わかったよ」
「くそっ、こんなことになるなら来るんじゃなかった」
「追放金とか無いのかよ」「無一文で放り出すつもりか?!」
男たちを蹴るアイザック。
「逆らうなら始末して良いと陛下に言われていてね、ま、どっちでも良いのだけれど」
「わ、わあったよ!」「あのテントで行けば良いんだろ?!」
「お前のせいだ、お前たちが同じクラスだったからって誘いやがって」「ひっ! 殺さないでくれー!!」
こう言ってナスタンの方へ逃げて行った不敬者たち、
転移テントに入ったのを確認してため息をつくアイザック。
「ふう、姉上の結婚式に間に合うかな、披露宴には間に合うはず……!!」
その後の不敬四人がどこでどう生きたかはミストは知らない、多分。
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「ふう、すっきりした」
戻るとソフィーさんはドレスの裾を持つ係だった子らに声をかけていた。
(気配りもバッチリだなこの正妻様)
そしてコロシアム内にイジュー先生の声が。
「それでは結婚式の続きを行う!!」
さあ、今度は……って、まとめて来たーー!!!
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