第443話 後は事実上、明日の結婚式を待つだけだそうです。

「それでは第二部前半を終了致します、しばらくの準備ののち、第二部後半の演習を開始致します……」


 美声カテリナさんの声が響くコロシアム、

 まるで除隊式が終わるのを待っていたかのように雨が本降りになってきた。


(これから、この中で演習するのは大変そうだなぁ)


「ではな」「は、はいっ!!」


 国王陛下に深くお辞儀をするとバルコニー貴賓席ではなく中央特別来賓玄関へ、

 この様子だともう帰っちゃうのか、アメリア先生もリア先生と僕の方へやってきた。


「じゃあ寒いから屋敷へ戻るわね」

「あっはい、わざわざ申し訳ありませんでした」

「リアのためだもの、明日の結婚式が控えている事だし、もう休むわ」


 手で合図したのちメイドエルフに引かれて行っちゃった、

 あっそうだ、あれを渡すのをすっかり忘れていたんだっけ!!


「アメリア先生、これを」

「なあに? これは……まあ!」

「結婚式前日になっちゃいましたけど、婚約指輪です」


 そう、『輝く生命の指輪』いざとなったら命を護ってくれるという。


「ありがと、でも渡すタイミングが無茶苦茶ね」

「ごっ、ごめんなさい」

「それがミスト殿らしいわ、はめてちょうだい」


 そっと左手の薬指に差し込んだのち、

 その手の甲に口付けをする……うん、これでいい。


「あら、リアと間接キスね」

「えっ」「ふふ、冗談よ」


 うっとりと指輪を見つめるアメリア先生。


「ミスト殿の指輪は?」

「ええっと、はい、このように一応は」

「それ、絶対に外さないでね、結婚式が終わるまで、絶対に」


 ……アメリア先生に渡すのが遅れちゃったせいかな、

 できるだけ長い時間、互いに婚約指輪をはめている時間が欲しいのだろう。


「わかりました、出来るだけつけておきます」

「お風呂も、寝る時もよ?」

「あっはい、ではそうします、結婚式までは」


 ちなみに結婚指輪はそれはそれで別に用意してあります、

 皆さんの分、発注先はもちろん動く増量ウェディングケーキ先輩に。


「じゃあね」「はいアメリア先生、愛しています」「私もよ」


 こうして見送り、

 モッコス将軍夫妻やら騎士団関係者やらもいつのまにか居なくなっていて、

 かわりにやってきたのはソフィーさんベルルちゃんエスリンちゃんたちだ、あと変態メカクレ。


「ミストくんお疲れ様」

「ミスト様、素敵でしたわ」

「ミストさん、リア様との戦闘、良かったです」「はわわわわ、わたくしめも見惚れてしまいましたあ」


 なんだかよくわからないけど、褒められている。


「う、うん、じゃあこれから後半と第三部を」

「今日はこれで終わりだ」「えっリア先生?!」

「もう安心して任せられる、三部に至っては弛んでいれば夜まで行うだろう、そこまでは付き合えぬ」


 あっ、更にやってきたのは、

 我がお抱え冒険者パーティー『マジカルリスタート』の面々だ!


「ジンくん!」

「領主様、見せつけていただきました、ありがとうございます」「何をー?!」


 それはそうと、みんなすっかり戦う装備だ。


「これから演習なんだ」

「はい、新騎士団長の初模擬戦らしいので、頑張ってきます」

「そういえば弟分、『ミラクルスタンダート』は」「第三部からですね」


 一緒じゃないんだ。


「では行ってきます!」

「うん、頑張ってね」


 何をどんな風に演習するのか、気にはなるんだけれども。


「ミストくん、明日の結婚式に向けて、この後、私達は準備です」

「えっと何をすれば」「おそらく待っていれば色々あるかと」


 何をどう準備するかもお膳立てされているのか、

 ほんっとだめ領主でごめんね、だめ新郎でごめんね、だめ貴族だもの。 ミスト


「ソフィーさんたちも」

「もちろんです」「主に何を」「秘密です」

「秘密ですわ」「ああ秘密だ」「ごめんなさい秘密です」


 秘密かぁ。


「あわわわわ、わ、わたくしめは、サリーはこのまま演習を、みっ、見届けますう」

「そうなんだ、ごめんね、お願いね」

「はいいい……も、もちろん結婚式も参加させていただきますう」「何役で?」「準愛人役でぇ」


 このあたりの位置とかどうなるんだろう、

 そのあたりの打ち合わせも、これからになるのかな。


「じゃ、じゃあみんなで屋敷まで、お城まで一緒に戻ろうか」

「その前にミストくん、さっきちらっと見ましたが」「あっはい」

「婚約指輪、絶対に外しちゃ駄目ですからね、絶対に、わかりましたね?」


 あー、聞こえちゃってたのかな、

 そりゃあアメリア先生は事実上の第五夫人として大切な人だ、

 その想いを傷付ける訳にはいかないからね。


「わかりました、絶対の絶対に……ネタ振りじゃないよね?」

「ミストくんっ!」「はいいぃぃぃ」


 わかっていますとも、ええ。


「ミスト様、約束ですわ、もし破ったら通常のお仕置では済みませんわ」

「えっ、何それ怖い」

「ミスト、こればかりは守ってくれ、大切な事なんだ」「わっかりまっした」


 変な言い方になっちゃった、

 ここまで念を押されると恐ろしいな。


「ミストさん、結婚式までの辛抱ですから」

「いや、そこまで不自由は、確かにお風呂や寝る時は外したいけど」

「結婚前夜は一緒に居られませんから、本当に、お願いします」


 うん、ここまで言われたら僕に逆らう権利は無い。


「わかりました、結婚式までずっと付けておくことを誓います」

「ではミストくん、夕食までの間は自由時間です、ご自由にどうぞ」


 そう言われても打ち合わせがいっぱいありそうだ。


(さすがにもう、変なトラブルとか、無いよ……な?!)


 残されたイベント、それは事実上、あとは結婚式のみ!

 ……のはず。

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