第383話 結婚するまで混ぜるな危険 結婚しても混ぜるな危険

「ぶわっははは、聖教会の奴らより先に会食してやったわい」


 お昼、僕はソフィーさんのご家族と一緒に食事をしている、

 いやソフィーさんのお母さんが美人過ぎて緊張しています。


(それはそうと絶縁どうなった)


 これに関しては以前より、


『家族との付き合いは無いが大教会信徒同士としては付き合う』


 という事でソフィーさんの祖父、

 このミゲル司教と話はついていたのだが、

 どう見ても結婚前の大会食会である。


(僕の父上母上が居たら完全にそうなるな)


 そのかわりにベルルちゃんリア先生が座っていて、

 第四夫人であるエスリンちゃんは今日もメイドに徹しているが……


「済まないなエスリン、同じ妻としてソフィーを支えてやってくれよ」

「は、はひぃ」


 威厳ありすぎなソフィーさんのお父さんに言われ、

 めっちゃ緊張して眼鏡がずれそうなエスリンちゃん、

 お母さんの方もベルルちゃんと会話が弾んでいる。


「そう、ルルーシャの弟子にそのような娘が」

「はいですの、将来はわたくしの魔力をも超えましてですわ」

「将来が楽しみね、そんな子がルルーシャの男児と結婚するだなんて」


 あらためて言うとルルーシャというのはベルルちゃんの大教会での名前だ、

 ちなみに自由教での名義はべベールと言い、砂漠の首都アッサムポッサムで使っている。

 

「すみませんミゲル司教」

「今は家族として来ておる、義爺様で良い」

「そ、それではミゲルお義爺様、何か距離が近いのですが」


 僕が中心席というかお誕生日席、いや誕生日は明日だが、

 その僕から見て右側にずらりソフィーさんベルル(ルルーシャ)ちゃんリア先生が座り、

 左側にミゲル司教、ソフィーさんのお父さんお母さんと座っている。


(あっ、リア先生は大教会側です、それで聖域の権利避けたのかな? 芝居まで打って)


 思考がごっちゃになりそうなので話を戻そう、

 考え込んでいたミゲル司教、いやミゲルお義爺様がようやく言葉を出す。


「嫁ぐ相手が公爵家になるからな、大教会のトップが名義上でも国王陛下な以上、

 その陛下が認める公爵家に嫁ぐとなれば、嫁に出すと無関係、とはもう言えん」


 あー、公爵家になっちゃうから対応もさすがに変えるのか、

 これまたあらためて説明するとソフィーさんの実家ミンスラー家は、

 家訓で『他所へ』嫁ぐと一番地味な服ひとつのみで追い出されるのである。


(実情は裏技が色々と、ってこれは今は関係ないや)


 今度はソフィーさんが説明する。


「ミストくん、合同教会は大教会、聖教会、自由教会の合同で作った教会という事になっています」

「はい、あとそれ以外の教会も理念としてはウェルカムですが」

「大教会としてはもう立派な『大教会の教会』として登録されています、これは当然、ご存じですよね?」


 あーはいはい、

 何かそんな書類にサインした憶えがあるな、

 いつだっけ、侯爵内定の時の提出書類だったっけ、もっと前か後?


「ご存じも何も登録申請の書類にサインを」

「その申請書に責任者ベルベット、所有者ミストくんで書かれていましたよね」

「そうですけれど、あっ、それが登録されたという事は」「書類的に大教会の信徒です」


 今更ながら。

 ていうか王都で大教会の集会に参加されられたとき、

 もうその時点で信徒扱いだった気もするのだが。


「んむっ」


 口を拭きながらそうだと言う唸り声を上げるミゲルお義爺様。

 僕はソフィーさんと話を続ける。


「じゃあ『他所へ出す』という定義は」

「他の大教会へ嫁ぐという事であれば問題ないので縁を切る必要は無い、という事です」

「そういう訳じゃ孫よ、なあ」「ああ息子よ」「素敵な息子ができて嬉しいわ」


 そんな家族揃って急に距離を詰められても……

 遅れてソフィーさんの姉、元盲目聖女のアンジさんが入って来た。


「お爺様、お父様、お母様、連れて来ていただいた大教会の方々の治療が終わりました」

「うむ、完治したのだな」「聖教会の連中より先にだろうな」「アンジ、貴女も食事になさい」「はいお母様」


 席が用意されてエスリンちゃんサリーさんが料理を運び込む、

 アンジさん今までも聖域まで入れていたのに、治療させる権利は以前から持ってたはずなんだけど、

 きっと治療して良い人のハードルが下がったのだろう、結婚式後、そのハードルは目一杯上がるからね。


(とはいえ権利を与え過ぎたけど、新たに二十人かぁ)


 よくよく考えたらアンジさん個人で治療できるんじゃ、

 と思ったがアンジさん個人では治し切れずあの女神像でやっとって病人が居るのか、

 アンジさんが個人治療するハードルが高くて女神像ならとか……あとお布施を合同教会へ入れさせるため?


(このへん面倒くさいから、考えるのはやめよう)


 兎にも角にも僕はソフィーさんの家族にちゃんと認められた訳だ、

 正妻だからね、それに合同教会、女神像を今後自由に使うためでもあるのだろう。


「そこでだミストよ、我が孫よ」

「はいミゲルお義爺様」


(そこでって、どこだよ……)


「もう終わったようだが、治癒女神像に触れる聖域に入れる者の候補、

 我が大教会からも面接に出したが、当然、聖教会より多い人数であるな?」


 こっちもかよ!

 あいかわらずどんだけ仲が悪いんだ。


「同じです、今回は厳選に厳選を重ね、教会推薦枠は1人づつです」

「……まあ良い、今回はな、それで次は」「一年後です」「その時は」「わかっています」


 聖教会にああ言っちゃったからね、仕方ないね。


「わかれば良い、さすが孫と褒めておこう」


 お義父さんお義母さんも満足そうだ。


(褒めてくれたのはいいけど、孫娘の、そして娘の幸せはどう思っているのだろう)


 そのあたりもソフィーさんが僕を一番好きな理由にかかってくるのかな、

 ソフィーさんの御両親も理由を知っていたうえでのこの笑顔だと良いのだけれど、

 まあ知っているよね、色々と情報を収集した結果、わかってないのは僕ひとりだけ、すらある。


「あの、あらためて、ソフィーさんをお嫁さんにいただきます!」

「うむ、正妻ゆえ、一番大切にするのだ」「それは大教会もな」「ソフィーも幸せそうで良かったわ」

「はいっ、ソフィーさんの事は、お任せ下さいっ!!」


 そうして食事がデザートになった頃、

 僕はソフィーさんに、ご家族に聞こえてもまあいいやくらいの小声で尋ねる。


「ソフィーさん、そろそろベルルちゃんの家族も呼んで二家族一緒に」

「……それは結婚式が終わるまで控えた方が、きっと料理を投げつけあいます」

「ええっ、あのお綺麗なソフィーさんのお母さんまで?」「熱々のスープをぶっかけるでしょうね」


 何度も思う、大教会と聖教会、どんだけ仲悪いんだと。


(モラベスクでの青空就任式、自由教が緩衝地帯になったとはいえ、開催できたの奇跡に近かったんだな)


「それじゃあソフィーさん、結婚式後なら」

「その時は一緒に、床に散らばった料理や割れた食器を片づけましょう」

「駄目じゃん!!」


 まさに混ぜるな危険である。


「何か良からぬ事を企んでいるようじゃが」

「いえいえお義爺様」

「くれぐれも大教会の一員である事を、ゆめゆめ忘れる事なかれ、じゃぞ」


 こうして満足そうなミンスラー家の皆さん、

 いやアンジさんは苦笑いしていたけれども、

 その家族をとりあえず見送る事となった。


「では明日の誕生日祝い、身内として参加させてもらうからの」

「はいミゲルお義爺様、お義父様もお義母様もお待ちしております」

「何かあればすぐ来てくれ、身内の力が必要な時はの」


 そう言って旧中央街への転移テントへ向かって行った、

 アンジさんもついていったのは案内なのかな、あと状況説明とかかも。


「ソフィーさん、皆さんの宿って」

「旧中央街の元廃墟を潰してできた、新しいゲストハウスですね、新築の方の」

「あー僕の生まれ育った屋敷じゃない方の! そんなの出来たんだ」


 きっとミストシティの大きいホテルにベルルちゃんの家族が泊まるからなんだろうな、

 おそらく街でも絶対に会わせないように気を使うに違いない、

 こういうのを無くすためにソフィーさんベルルちゃんはウチに来たんだよなあ。


(合同教会を認めて貰えているのも、これもまた奇跡か)


 いやメリットを考えると、そりゃあねえ。


「それでミストくん、無事、ミンスラー家の身内となった感想は」

「身内って言っても婿養子じゃないからなぁ、あと……」

「あとは何でしょう?」


 純粋な目で聞いてくるソフィーさんに、

 少し申し訳ない気持ちで僕は聞いてみる、いや、聞いてしまう。


「ソフィーさんのご両親の名前って、何だっけ???」


 相変わらずである

  だめ貴族だもの。 ミスト


「ミスト、両親の名前を知らなくて良いのは私だけだぞ」

「リア先生……」


 こっちもこっちで面倒くさい。

 いや先生の場合はフォレチトンに入れなきゃいいのか。


(さあ、お昼ご飯が終わった後も、来客の対応だ!)


※それはさすがにもう端折ります

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