第377話 合同教会への聖女選抜面接ダイジェスト 中編
ぞろぞろと入って来た女性六人が綺麗に整列した、
それぞれ名乗るのを黙って聞いて(名前はまあ省略)、
全員が終わるとソフィーさんがわざわざ列側に回って説明する。
「新年度からの合同教会勤務予定者です、聖女中心ですが聖女候補も居ます」
「あっはい、ミスト=ポークレット侯爵です、来年度は公爵です、ここのオーナーです」
「一応、女神像本体エリアでの仕事もしたいそうですが、いかがいたしましょう」
と言われてもなあ、ようは下っ端だ、
だっ、だからこそさっきの奴隷にやらせようとした事ができるのか、
でも、どう考えてもまだ早いよなあ……?
「ソフィーさんとしては」
「ミストくん、決めて下さい」
「あっはい」
これはどういう事だろう、僕が決める事が重要なのか、
それとも僕が試されているのか、むしろ僕が彼女たちを試せ、とか……
「ええっと、聖女候補者がもし選ばれたら」
「その時点で正式な聖女に認定されると思います」
「ほんとに?!」「それだけの権力を、得る訳ですから」
これは責任重大だな、保留っていう選択肢はあるんだろうか?
きっとソフィーさんベルルちゃんの事だから、
受験順、ここへ連れて来る順番もきっと意味があるに違いない。
(一番の線は僕がこの六人、全員をちゃんと落とせるか? って気もするけれど……)
そうだ、あの手を使おう。
「ええっと、では皆さん、今から数字当てゲームをしていただきます」
あっ、今の僕の言葉で全員が一斉に頭から『?』を出したみたいな顔になってるう!!
「これが1、これが2、これが3」
と、指を立てて見せる、後は4と5、っと。
「僕がこの右手で何本指を立てるか当てて下さい、
当たった人に女神像本体まで入る権利を与えます」
これは僕が学院で拾って読んだ小説にあった話だ、
海賊が船を襲って船長や乗組員を殺し荷物を奪った後、
大陸移住のために乗っていた罪もない乗客をどうするかってなった時、
『俺が指何本立てるか当てろ、当てた奴は陸へ帰してやる』
そう言って海賊の親分が乗客全員に指を立たせて、
結果、親分の出した答えは指を一本も立てない0本で、
正解できた乗客が居なくて皆殺ししたっていう……
(あれって殺す理由が欲しかっただけだよな)
それと同じことをしようと僕は椅子の背もたれの裏に手を伸ばし
げんこつを用意してソフィーさんに確認を促す。
「ソフィーさん、指が何本立っているか、見て憶えて下さい」
「はい……はい、見ました」
「さあではみんな、いくつ立てていたか……」「あ、それ読んだ事あります、ゼロですよね」
余計な事を言った見習い服の女性を僕は見る。
「えっと、ええっと、貴女、失格です」
「えーなんで?! 当たりましたよね??」
「僕が失格と言えば失格です」
これ、僕、悪くないよね?!
「ミストくん」
「はいソフィーさん!」
あーこれ僕が怒られるのかあ、と思いきや。
「ごめんなさい、私達の教育不足です」
「えっ?!」
つかつかと空気の読めなかった女性に近づくソフィーさん。
「私達の見込みが間違いだったようです、貴女は合同教会の勤務に相応しくありませんわ」
「ええっ、答えを当てましたよね?」
「何が悪かったか、どう間違ったかの説明は致しません、もう会う事は無いでしょうから」
その言葉にリア先生が彼女を捕まえ扉の方へ……
「え? えっ? ええっ??」
「来年度からの勤務内定取り消しです、ご縁がなかったという事で」
「なっ、な、なんでーーー?!」
(あーあ、まあ仕方ないよね)
「さてミストくん」
「はい」
「続きをどうぞ」
(えええええぇぇぇ……)
結果、指を四本立て直して、ひとり当てた。
「という事で合格者は一名です、後は一年後、頑張って」
受かった聖女は大出世だな、
まあ聖女っていうだけで将来は約束されたようなものだけれど、
道さえ踏み間違えなければ。
「よし、では次だが、これまた訳ありだ」
「あっはい、誰でしょうか」
「少し前に会った聖女だ、連れて来てくれ」
今度は低身長メイドエルフのレジーさんが連れて来る、
やってきたのはこれまたお胸がボリュームたっぷりの……!!
「あっ確か、僕の第四準愛人になりたいって言っていた!!」
「ひいい、ごめんなさい、許して下さいいいいいぃぃぃぃぃ~~~~~……」
「どうしたのどうしたの、ええっと聖教会の、ピノリスちゃん、だよね?!」
さすがに巨乳相手となると名前覚えが良い、
っていやついこの間、王都で会ったからっ!!
「ミスト、こやつについてこっちで色々調べて判明したぞ」
「確かリア先生が、彼女の言う事は嘘だらけって言っていた」
「そうだ、この聖教会所属聖女、ピノリスの真の姿は……」
ええっ、まさか、魔物、淫魔だったとか?!
「その姿は?!」
「ああ、一言で言い表すと、『ハーレムクラッシャー』というやつだ」
「な、なんなんですかそれ?!」
へたり込んで何度も何度も頭を下げるピノリス。
「ベルルの姉の紹介で来たものの、実際は敵対している方の姉の差し金でな」
「じゃあ、そこは嘘だったんですか」
「ああ、そして真の目的は正妻側室の仲を激烈に悪くして、ポークレット家を内部分裂させる事だ」
なんでまたそんな事を。
「目的は何ですか、内部分裂させる目的は」
「大教会と聖教会が仲良くする事が許せなかったらしい、
このふたつを繋げるミストも骨抜きの傀儡にする計画だったようだ」
「ええ……ピノリスちゃん、本当?!」「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいいいいい!!!」
ソフィーさんとベルルちゃんを見ると頷いている、
そして話を続けるリア先生。
「もっとも、ミストはすでにソフィーとベルルに骨抜きの傀儡なんだが」
「そ、そうですね」
「十二番目の夫人の位置から一気に『事実上の正妻』のような立場まで登り詰め、
合同教会そしてフォレチトン、ポークレット公爵家を乗っ取るつもりだったようだ」
正真正銘の悪女じゃないですかー!
聖教会の学院を首席卒業して、やる事がそれって……
「それは、その計画は事実として確定なんですか?!」
「ああ、本人の自白に裏を取った、後は、聖教会での後始末はベルルとビアンカでやる」
結局、聖教会の派閥争いに巻き込まれちゃったって事かぁ。
「この後この彼女、ピノリスちゃんは」
「それをミストに決めてもらうために連れてきた、
ピノリスは間違いなく聖女としての才能はトップクラスだ、
よって真面目に、まともに合同教会で働く分には申し分ない」
ていうか、それ程なら申し分どころか、おつりが出そうだ。
「でもハーレムクラッシャーですよね」
「聖教会のスパイだな、だからこちらの駒としてダブルスパイとして使うか」
「もしくは普通に、記憶を消してとか?」「それも手だな」「いやあああああ!!!」
うん、記憶を消されるのって死ぬのと同じようなものだからね。
「今後の使い道はいくらでも考えられるが、さあどうするミスト」
「もう味方になったと考えて良いのですか?」「そうは聞いているが」
「許してえええ!! 許して下さい、この通りです、この通りですううう!!!」
(必死すぎて引くなぁ)
「んー、なんでこうなっているんですか」
「お仕置だな、なあソフィー、ベルル」
「そうですね」「そうですわ、調教ですわ」
そっかそっか、それじゃあ……
「わかりました、では合同教会の女神像エリアに入る許可は、保留にします」
「えっ、じゃ、じゃあ私は」
「そして一年間、お仕置、調教続行です!」
メイソンの妹もお仕置再実行でようやくまともになったもんな、
うん、これで本当の意味で従順な聖女になってくれる事を祈ろう。
「そういう訳だ、レジー、連れて行け」
「はっ!!」「いや、いやあっ、も、もう、もう十七分割にされるのは嫌あああああああ!!!!!」
(えええっっ?!)
なんだかとんでもなくえげつないお仕置をされていた
だめ貴族もびっくり ミスト。
「では次だが、スペシャルゲストのご登場だ、入ってくれ」
やってきたのは毎度おなじみあの……!!
「デュフデュフデュフ……」
「出たな妖怪いぃーーー!!!」
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