第355話 独身最後の休日、生意気な後輩の末路

「ミスト、今日は休日らしいな」

「あっはいリア先生、もうすっかり朝を通り越してますね」


 僕の寝室、

 すっかりお寝坊さんな時間に朝食と昼食を兼ねたような食事をいただいてる、

 今日、僕についてくれているのはメイド長のミランダさんだ。


「ミスト様、お紅茶を」

「ありがとう、うん、このサンドイッチ美味しいね」


 程よい重さである、いや重量じゃなく。


「一応、報告や今後の確認があって来たのだが、そういった話もしたくないのであればキスだけして戻るが」

「いえいえそんな、そこまで休みにするつもりは、いつも楽をさせて貰っていますし」

「とはいえ今日はミスト、おそらく独身最後の休日だと思うが」


 そうか、もう結婚式がそんなに間近に、

 ってその前に誕生日がもうすぐだけれども。


「じゃあ、さくっと済ませましょう、リア先生も忙しいでしょうし」

「……ミスト、結婚式を迎えても私はミストにとって『リア先生』で行くのか?」

「それ、教師と生徒の結婚あるあるらしいですよ」「そうか」「よっぽど嫌なら」「いやいい」


 リア先生が折れちゃった、

 このあたりはまあ結婚してから話し合っても良いだろう。


(かといって『リア、愛してるよ』なんて言ったら笑われそうだ)


「リア様も紅茶をどうぞ」

「すまないミランダ、今日はミストの世話を頼んだ」

「承知しております」


 そこは、かしこまりましたじゃないんだ。


「では報告からだ、グレナガの事だが」

「ええっと、誰でしたっけ」「覚えてないのか」


 んーーー、これは頑張って思い出してみよう、

 ええっと、えっと、えええええっとおおおおお……


「あっ!!」「思い出したか」「リア先生争奪戦のトーナメントに参加した!」


 手で目を覆って首を前に傾けたリア先生、

 つまりハズレっていう事か、じゃあ誰なんだろう?


「ミスト、先日、少し前だが王都へ、城へ公爵就任のための書類提出に行っただろう」

「はい、エスリンちゃん含め四人でデートした、あの日ですよね」

「そこで、城で私を待っている間、絡んできた学院の後輩が居たではないか」


 ……あーっ!!


「思い出しました、あの生意気な後輩!」

「ああ、奴についてミストがリクエストした内容は思い出せるか」

「んーーー……なんでしたっけ」


 紅茶をぐいっと飲むと少し思い出した。


「あっ、あれですよね、お城の勤務になったって自慢してきたんですよね」

「そうだ失礼な態度でな、そこでミストはもう城で顔を合わせたくないと」

「言いましたっけそこまで」「そういう意味の希望を私に頼んだぞ」


 腹立ったのは思い出した、だからそう言っててもおかしくない、いや言ったなきっと。


「で、お城のどこで働く事になったんですか、例の奴隷と一緒に下水道掃除?」

「いやアルドライド城内では無い、南西の亜人地区、その奥の奥の奥地の池だ」

「い、いっ、池?!」「正確には湖(みずうみ)だな」


 そこでぷかぷか浮くのかもしくは沈められるのか。


「なんでそんな所へ」

「ミストのおかげであの一帯の争いが終結し、最大のダンジョンも攻略し平和になった」

「はぁ、僕のおかげかどうかは別にして、良かったですね」


 うん、他人事だ。


「平和になるとどうなるかというと、物好きな観光客や違法な亜人狩りが出る」

「あーはいはい、その取り締まりですか」

「見張りだな、もちろん獣人は強いからあまり心配は要らないが、一応、アルドライドからも人を出す」


 じゃあそれに選ばれたのか。


「でもそれってグランセントのお城の勤務じゃないんじゃ」

「一応、他国の大使館はグランセント城内という扱いになる」

「じゃあその亜人地区って国外扱いなんですか」


 少し考え込むリア先生、

 うん、美人だ、僕のお嫁さんになるんだよな。


「微妙だな、亜人の治める地域ではあるが、曖昧だ」

「でも奥の方なんですよね」

「ああ一番奥だ、そこの巨大な池に、湖に幻の『人魚族』というのが居てだな」


 あー、絵本や小説に出てくるやるだ、

 下半身が魚だったり全身が魚と人間が混じったみたいなのだったり、

 その肉を食うと不死になるとかなんとか。


「実際に居るんですか」

「もちろんだ、今まではそこへ人が行くのは事実上、不可能だったが」

「平和になって行けるように」「だからこその見張りだ」


 とても重要な役割だけど、

 これはとんでもない左遷だな、

 いや島流しに近い、湖だけれども。


「そこの大使館に」

「といってもテントだ、転移テントではないぞ」

「そこに、いか程」「十年だ」


 ひいいいいいぃぃぃ……


「もう行ったんですか」

「そうだな、一人で大変だとは思うがまあ、のんびり働いてもらおう」

「釣りもできますし!」「いや禁止だ、人魚族が住んでいるのだから」「あ、そっか」


(結局、僕が実は侯爵だったって事は知ったのだろうか?)


 コン、コン


「失礼致します」

「なんだノーリか、入れ」


 王都から来た全メイド教育係のノーリおばさ、いやノーリさんだ。


「お客様でございます、貴族の方が今すぐに会いたいと」

「誰にだ、私か? それともミストにか?」

「それが、ミランダに会いたいと」


 ええっ、ウチのメイド長に貴族が?!


「どこの貴族だ」

「それが北の、隣国の」

「……そうか、ミランダ、心当たりは当然あるな」「……はい」


 あーこれはそうかあれだ、

 ミランダさんが以前居た貴族の。


(他国へ逃げたのに何の用だろう)


「ミストどうする、休みなら来なくても良いぞ」

「いえ、ミランダさんをつてに重病人を治したいって来たのかもしれませんし」

「ミランダは来るか?」「かしこまりました」


 うん、どんな、どういう用件でも対処できるように心構えしておこう。


「……ミスト」

「はい、さあ行きましょう」

「いや、さすがに寝間着はよせ」「あっ、いっけねーーー!!」


 公爵予定とはいえ、さすがに寝間着で貴族の対応は良くない

  だめ貴族でもね! ミスト。


(さっさと貴族らしく着替えて、領主謁見の間へ行こう)

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