第338話 子持ち愛人エスタさん

「……という事があったんですよ」

「まあ、それは大変でしたね」


 夜、僕は王都別邸に残り準愛人のエスタさんに甘えていた、

 夕食は四人デートの第二弾として結構、いやかなりお高いお店に入り、

 マナーに苦労したもののエスリンちゃんも同じように出来てなかったのが救いだった。


(別に店員に怒られなかったのは、特別個室なうえリア先生が居たからかな)


 いや、何気にサリーさんが居たからってパターンもあるな、

 第四公爵家となると、かなり国王陛下に近いと言っても過言ではないかも。

 そして食後、リア先生を筆頭にサリーさんエスリンちゃんを連れ、フォレチトンに帰って行った。


「でも今日はこうして、最後にエスタさんと過ごせる時間があって、良かったです」

「明日の朝まではご心配なく、泊まってらっしゃる帝国貴族の皆さまにも声は聞こえませんから」


 じゃあ朝になったら防音魔法か何かが解けるのか、

 という訳では無くエスタさんが普通にメイド業に忙しいからだ。


「そういえばアンナちゃん大丈夫かな」

「はい、先ほど覗いたら、ベルベットちゃんと仲良く」


 そう、今夜はエスタさんを借りる代わりと言っては何だが、

 メイド長の寝室に合同教会からベルベットちゃんが来てくれていて、

 仲良くお泊り会をしてくれている、たまにはこういうのも良いだろう。


「その、エスタさん、今夜こうして来たのは理由があります」

「はい、いったい何でしょう?」

「まずはその、言い難いかもしれませんが……」


 灯りを抑えた薄暗い寝室で、僕はエスタさんに問う。


「どうして僕を好きなのですか?」

「まあ」

「どうして準愛人になってくれたのですか」


 僕の髪をやさしく撫でてくれるエスタさん……


「まずは、恋愛、いや、愛情の説明を後にしてしまう失礼を、お許し下さい」

「はい、それで」

「そうですね、一言でとなれば、娘のため、と答えてしまうかもしれません」


 アンナちゃんのためかぁ。


「ええっと、そのために、自分を殺して?」

「はっきり言うと私は罪人です、夫を亡くし娘を護るためとはいえ、悪事に手を染めた貴族の重要なメイドでした」

「そういえば、元々はそうでしたね」


 この屋敷も元は、その貴族の持ち物だ。


「殺せと言われれば娘のために殺しもするような、そんな悪いメイドです」

「でも娘さんのためですよね」

「はい、ですから娘のために結婚、愛人くらい容易い事です」


 まるでアンナちゃんを人質に結婚を、いや準愛人になる事を迫っているみたいで嫌だな。


「エスタさんは、それで良いのですか」

「娘のためなら、母親は何だってします、本当に、何でも」

「じゃあ、僕を殺すとかも」「娘のために必要ならば、間違いなく……実行は阻止されるでしょうけれど」


 凄いな、娘を護るためなら、母親はこうも強いのか。


「それじゃあ僕の事を愛しては」

「もちろん愛しています、好きですよ、理由は娘のためであっても」

「つまり、そういう事なんだ」「ガッカリしないで下さい、たかがメイドですよ?」


 そう言いながらも、やさしぃく包み込んでくれる……包容力が半端ない。


「愛すると決めた以上、もちろん本気で愛します、娘のためにも」

「アンナちゃんのために……僕だってアンナちゃんを護るよ、だって」

「もうアンナのパパですものね、それだけで私がミスト様を愛する理由としては、十分です」


 僕がアンナちゃんのパパになったから、

 アンナちゃんのママであるエスタさんは僕を愛する、それは当然だと、

 でもアンナちゃんってエスタさんを僕が十番目の嫁にしたからこそ娘になったんじゃ……??


(こういう順番は重要なのか、それともどうでもいいのか、うーん、わかんない)


 そうこう会話しているうちのエスタさんの手が段々と……ふわあぁぁ……


「も、もうひとつ、お聞きしたい事が」

「はい、何でしょう」

「ソフィーさんとベルルちゃんが僕を好きな理由って、知ってましたっけ」


 聞くタイミングとかあったのだろうか?


「はい、ミストシティで年明けに、ご説明を受けました」

「そうなんだ、そ、その、何かヒントは、ヒントで良いので」

「そうですね、私のメイド仲間、他のお屋敷ですが、そちらにもそういう方がいらっしゃいましたね」


 ええっと、つまりこれはどっちの事だ?!


「そういう方ってつまり」

「ソフィー様やベルル様がミスト様を好きな理由に、近い理由を持つ既婚メイドの方が居るという話です」

「あーそっち、旦那さんが僕に近いんじゃなく」「同じことですよ」


(?????)


 頭が少しこんがらがる、僕の悪い所だ。


「んっと、ヒントとしては、同じようなケースは他にもある、居ると」

「大小というか強弱というか、そういう差はありますが」

「差がある???」


 また新しいヒントを貰ったのはいいけれど、

 なんかこう、うまく整理と言うか、理解ができない。


(とにかく、僕だけのレアケースでは無いって事か)


「これ以上先は、答えに誘導してしまいそうですね」

「あっはい、ではこのあたりで」

「どのあたりですか? ここですか? こことか?」


 ああ、僕の顔が急に熱くなってくるううう!!!


「そのエスタさん」「はい」「今日は副メイドの加勢は、無しで」


 お互い唇を……


「……ふふ、ここから先は、朝まで他の女性の事を考えるのは、無しですよ」

「わかっています」

「こんな年齢ですが……アンナの妹か弟を……ふふふ」


 年齢の事を言われ真っ先にアメリア先生が浮かんだ

 他の女性は考えるなって言われた直後に!!

  だめ貴族だもの。 ミスト


(いやこれ、貴族というより、単なる駄目な……)


 これ以上は考えるのはよそう、

 エスタさんだけを考えるんだー!!

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