第323話 またなんかおかしな連中が来た!

「先日から街をおかしな連中が闊歩しているそうです」

「おかしな連中?」


 結婚式まであと35日、

 招待状は30日前に届けるというこの国の慣例にのっとり、

 準備をしていた僕にモリィさんからの報告である。


「噂は聞いている、王都から来た兵士やヴァルキュリア騎士団員がぺたぺた触られているらしい」

「えっリア先生、女性もですか?! 相手は」

「それが結構な、カッコ良い男が中心らしいのだが、右腕が動かないそうだが左手一本で剣の腕が立つとか」


 うーん、ほぼ焼野原になった帝国あたりから流れてきたんだろうか?


「モリィさん、その連中の目的は」

「戦力のスカウトだそうです」

「スカウトねえ、前衛目的でしょうか」


 もし帝国が補強に来たのなら好きにさせる訳にはいかない、

 かといってソフィーさんベルルちゃん、ここ数日ずっと魔法研究所に籠ってるし……


「今はどこだ」

「はい、冒険者ギルドのロビーですね」

「よしミスト、ちょっと行ってくる」「あ、僕も!」


 少しの時間ならと招待状の準備を放っておいて、

 リア先生についていくとモリィさんまで一緒に来てくれた。


(うわあ、あいかわらず僕の像が無駄にかっこいい)


 僕に見えない僕の像を横目に入ると、

 確かに男性騎士団みたいな五人組がいた、

 出入りするガタイの良い冒険者を捕まえては身体のチェックをしている。


「あれ、そこそこ迷惑ですよね」

「警備は何をしているのだ……おい、お前たち!」


 リア先生が行くと男共は色めき立っているのがわかる、

 特に中心人物の男が口笛を吹いた程だ、うん、確かに格好良い。


(身体のバランスも良いし筋肉も凄い、剣士中の剣士だ)


 僕と真逆で正反対というか、

 しかも身長はリア先生より少し高い。


「とんでもない上玉がお出ましだな!」

「なんだ、勝手に身体検査をするな」

「俺はルメシアから来た、ディアン大陸だ」


 あーーーアルドライドから西の!

 あの大きな大陸かあ、わざわざ海を越えてやってきたのか。


「ルメシア国か、冒険者、ではないな」

「こう見えても俺はルメシア防衛隊隊長、メラニアっていう者だ」


 オレンジの髪があまり見た事無い人種を思わせる、

 取り巻きも長さは違えどみんな同じだ、そして揃って強そう。


「私はアルドライド騎士団長のリアだ、うちの団員が気味悪がっていてな」

「なんだ人種差別か?」「違う! お前たちはぺたぺた触り過ぎだ」


 現に取り巻きがリア先生の身体を触ろうとして睨まれている。


「これが一番わかりやすいんだ、我が国は戦士が足りない、俺の右腕が動けば問題は無いのだが」

「なんだ、しくじったのか」

「敵将の命と引き換えに神経を斬られた、安くないが高くもない対価だな」


 凄いな、そのレベルの戦いは僕とは無縁だ。


「よし、その右腕を治してやるから帰れ、良いな」

「いやいやいや、金で治せるならとっくに治して」

「金では治せないからこそ治してやると言っているのだ、ミスト、いいな」


 ついてこいという仕草のリア先生がオレンジ髪の一団を連れて外へ、

 あ、こいつらモリィさんにも興味を持った、アサシンは貴重な戦力だからね。


「……こっちだ」

「あー、この教会なら行ったぞ、何でも治すって嘘じゃねえか」

「嘘では無い、それ相応の金かコネが必要だ」


 リア先生が先頭なので列を抜いてあっさり中へ。


「コレだよコレ、魔力なんて出て無いんじゃないか?」


 メラニアが怒っている対象は『飾り女神』だ、

 女神像本体の御前立の、さらにその前で確かに治癒能力は微弱だ。


「なんだ、これを見ただけで帰ったのか」

「違うのか? 偽物かこれ?」

「信仰のためのレプリカだ、身体を治す本体は中だ」


 今日はクルケさんもイデーヨさんも居ないのかな、

 顔は見るけど名前は知らない神官さんが奥への扉を開けてくれる、


「うわ、眩しい!」

「これでもまだ御前立だぞ」


 飾り女神を拝んでいる皆さんが漏れ出る光に歓喜している!

 むしろこのために来ている、まであるからね。


「さっさと入れ、1人だけだ、残りはここで待て」


 モリィさんが他四人を足止めしてくれるみたいだ、

 中へはリア先生と僕とメラニアだけで入る。


「おお、確かに右腕が、僅かに動く!」

「本番はここからだ、ミスト、入れてやれ」

「はあ、まあリア先生が言うなら」


 僕は御前立横の白く濁った壁へ手招きする。


「なんだ、そもそもお前は神官なのか?!」


 あ、お前呼びにリア先生が怖い顔になった!


「いいから来て下さい、この壁、すり抜けますから」


 とまあ引っ張って奥へ。


「うっわ、眩し過ぎるだろここ!」

「だったら目を閉じてください、動く方の腕を伸ばして」

「こうか?!」


 僕もちゃんとは見えないけれど、

 女神像本体に触れるどころか抱きついてるみたいだ。


(後でちゃんと拭かないとな)


 高い位置はベルベットちゃんが飛んで拭いてるみたいだけれど。


「おお、動く、右腕が動くぞ、めっちゃ動く!」

「はい良かったですね、戻りますよ」


 壁を再びすり抜けて御前立まで戻ると、

 右手をグーパーして感触を確かめている。


「すげえ、神経が戻ったのか?!」

「基本的に欠損までは治せませんが、なんとか修復の範囲内だったんでしょう」

「ずりいよ、奥にこんなのがあったなんて誰も教えてくれなかったぞ!」


 コネ無しで来るからだよ……

 別大陸とはいえ一国の偉い隊長なら、

 国王クラスから手紙のひとつでも持ってくれれば案内したのに。


(リア先生はまだ怖い顔をしている)


「よし治ったな、さっさと支払いを済ませてこい」

「えっ、金取るのか?!」

「お布施だ、二回払ってもらう」


 とまあ最初はベルベットちゃんのお店、

 本人は今日は孤児院へ遊びに行っているらしく、

 代理の知らない女性僧侶がはりきって売っていた。


(あ、一番高い女神像が新しいのになってる!)


 しかも顔が新しくなってるうううう!!!


 ヘ ヘ

 メ メ

  ガ

  ミ


 うん、ちょっとおすまし顔かな?


「じゃ、この銅貨一枚の石で」

「いいですけど表で捨てるとかやめて下さいよ」

「わあってるよ」


 帰り道で投げ捨てそう。


「最後は拝観料だ、まさかこっちはケチるなよ」

「前に来た時に入れたぞ」

「治してもらったんだろう」「へいへい」


 銀貨ひとり一枚か、

 うーんこんな奴でも治すのが教会、でいいのか?


「よし、では来い」

「まだ何かあるのかよ!」

「お前の腕の確認だ」


 強引に連れて行った場所は……コロシアム?!

 今日は騎士団の練習場になっているというか、

 フォレチトン兵士団候補者をヴァルキュリア騎士団が稽古つけてるはず。


「よし、ここでいいな、さあ、かかってこい」

「おま、リアとかいったな、俺とやろうっていうのか」

「あくまで稽古をつけてやるだけだ、治った腕の確認をさせてやる」


 こうして僕やモリィさん、

 メラニアのお付きが見守る中、

 リア先生は一方的にボッコボコのフルボッコにしたのであった。


「いでえ、いでえよ、なんで俺がこんな目に」

「当然だろう、お前は腕を治してもらったのに、ただの一度もお礼を言っていない、そうだなミスト?」

「あっ、そういえば」


 お礼の大切さを痛感する

  だめ貴族だもの。 ミスト


「さあ立て、まだまだだ」

「も、もう動けねえよ」

「そうか、ならば一方的に打たれ続ける事になるぞ」


 とここへキリィさんが走って僕の所へやってきた。


「領主様、王都から連絡が」

「えええ、お前、領主だったのか?!」

「リア先生、コイツ強めに蹴っておいてください、それでキリィさん、連絡とは」


 真面目な顔で告げるキリィさん。


「帝国が……最後に残っていた第二都市が、陥落しました」


(やっとかぁ……)

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