第315話 急な催しなのにお客さんがそこそこ入りました
「本日は冬期臨時闘技大会にようこそいらっしゃいました……」
花火のあと、美声カテリナさんの声がコロシアムに響くお昼、
さすがに急遽決まった大会で朝から夕方までやるプログラムは組めなかった。
(それでもお客さん、結構入ったなあ)
入場料は安め、孤児院の子らは招待といった感じで、
なんとか人を集めようとしたが急な告知なのに3~4割は埋まっている。
「警備の皆さんも突然の大会で申し訳ないです」
「なあにミストのためだ、こういう時のために我が騎士団はある」
そういやリア先生もまだ騎士団長なんだっけ、
結婚してから落ち着いて貰えると良いのだけれど。
「その、お昼のお弁当ですぅー」
「あっサリーさんもお疲れ様、今夜はリア先生と過ごして良いよ」
「ほっ、ほんとうですかーーーーー?!」
うっわ、軽く冗談混じりで言ったのに本気で喜んでいる!
「リア先生」
「ミストがそう言うのなら」
「う、うれしいですうううう!!」
……まあ奥さんと準愛人だし、
いつぞやソフィーさんとベルルちゃんが過度にいちゃついてた夜もあったから、
高度な寝取られプレイを楽しむとでも思って……ってほんとにいいのかコレ。
「あの、ミストさん、私も」
「エスリンちゃんも?! うーん、サリーさんが良ければ」
「はいぃぃ、エスリンさんでしたらぁ」
こんなに喜ばれたら取り消せないな。
「リア先生ごめんなさい」
「なあに、埋め合わせはして貰う」
「は、はいっ、僕に出来る事でしたら」
こうしてコロシアム名物、
『ソフィーの愛妻弁当』『ベルルの愛妻弁当』を食べていると、
僕らの前の席にベルベットちゃんが少年を連れてきた。
(あ、もう起き上がって歩けるんだ)
とことことやってきた5歳か6歳か行って7歳?
そんな感じの黒髪の少年、髪が独特に結ばれているジッポンの王子様だ、
さらに後ろからメイドや女性僧侶がずらずら、そしてふかふかの席に座らせる。
「アサミとムラサメはどこじゃ!」
「さいごでー、いっちばんさいごでー!」
「さあチヨマル様、お食事でございますよ」
王都別邸のメイド長エスタさんがわざわざ来てくれていてチヨマルの世話をしている、
子持ちだからね、そして娘のアンナちゃんが王子の隣に座って、反対側はベルベットちゃんで両手に花だ。
(すげえな、なんていうか、我が国、いや我が領地、おもてなしをわかっている)
「箸は無いのか!」
「私が食べさせてさしあげますよ」
「毒見はどうした!」
うーん、これぞジッポンの王子!
小さいながらも威厳を保つこの態度、嫌いじゃない。
「ベルベットがひとくちいただきまーーー!!」
「ではこのキノコを食え!」
「はーーーい」
あ、これ嫌いな物を押し付けたな。
「ミスト、一応挨拶するか」
「はい、じゃあぐるりと回って」
このまま話しかけてもいいけど上から言葉をぶつけるみたいになるからね、
チヨマルの列までわざわ降りて挨拶に行く、キリィさんモリィさんが居ないからリア先生が従者的な位置だ。
「食事中済まない、アルドライド騎士団長のリアと申す」
「うむ、話す事を許す!」
「我が領主が挨拶をしたいそうでな、聞いていただきたい」
王子のあたり、やたら温かいな、
病み上がりで風邪ひかないように暖房魔石で囲んでるみたいだ。
「ようこそはるばるいらっしゃいました、アルドライド王国フォレチトン領主、ミスト=ポークレット侯爵です」
「うむ、くるしゅうない、ご苦労である、我はチヨマルである!」
どこの国の第何王子とかはさすがに言えないか、まあいいけど。
「おひとりで寂しくないようにしておりますが、何かありましたらご遠慮なくお申し付け下さい」
「アサミとムラサメは無事なのか?!」
「はい、チヨマル様のために、このあと最後に戦いを披露しますよ、チヨマル様の治療の対価、代金として」
お茶を口まで運んで貰って飲んでご満悦のチヨマル様、
そういえば今飲んでる緑茶、王都別邸で出されてたのと同じだけど、
元々はジッポンから来た葉だとか聞いた覚えが。
「殺し合いか?!」
「そんな訳ありません、うちのアサシンが相手ですが、あくまで試合ですよ」
「ならば良し!」
今度はアンナちゃんが食べさせてあげている、
頬を緩ませて喜んでいるなチヨマル殿、うん、おもてなしは良好だ。
「皆様、お待たせいたしました、只今より第一試合を開始致します!」
ヴァルキュリア騎士団一の美声カテリナさんの声が響くと、
中央に出てきたのはなぜか……ボリネー先輩だった。
「では席に戻らせていただきます、といってもすぐ後ろですが」
「うむ、下がって良い」
チヨマル様、ここまで喋れるって事は7歳どころか8歳か9歳まであるぞ?
なんて考えながらリア先生と席に戻るとボリネー先輩が音響装置で喋りはじめた。
「吾輩はサンネイズ商団のボリネー=アビタラーナであーる、只今より我が奴隷商会の、
お奨め高級奴隷を戦わせるデュフ、まずは狼獣人と虎獣人の戦いをお見せするデュフ!」
あーーーさすが先輩、抜け目ない!
自分の商品のお披露目にこの場を使いますか。
(あれ? もう始まっちゃうけど、ソフィーさんと、ベルルちゃんは……?!)
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「……本当にこの勝負に勝てば、若を、チヨマル様の命を助けていただけるのですね」
「もしそうであれば、この命を捨ててでも敵を倒させていただきます」
コロシアム控室、入念に武器の手入れをするクノイチふたり、
それを見ている聖女服のふたり、もちろんソフィーとベルルだ。
「殺し合いではありません、あくまで闘技大会です」
「ですわ、そのあたり、相手を降参させるか気絶もしくは戦闘不能にすれば審判が止めますわ」
動きやすさ重視の、黒い網のような服を着たクノイチふたり、
大事な所は中を黒い布で覆っているものの、
身体のラインがくっきりわかってセクシーだ。
「本当に、本当に若は助かるのですね?」
「我が国ではもうどうしようもなかった病です、嘘だけはついて欲しくありません」
「ええ、約束します、勝てば必ず」「ですわ、でも相手は強いですわ?」
意を決した鋭い眼光のクノイチふたり、
ひとりは重りのついた鎖を、もうひとりは大きな十字型武器を手に取った。
「わかりました、若の命、この手で救ってみせましょう」
「負けはしません、ジッポンの将来のためにも、必ず……必ずっっ!!」
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「勝者、ザンビア!!」
第二試合で勝ち名乗りを上げた兎獣人の女性、
ひょんぴょん飛跳ねて喜んでいる、ボリネー先輩もご満悦だ。
「勝ったザンビアも負けたネスラも、ご購入の検討はサンネイズ商団までデュフ!」
目の前で熱戦が繰り広げられている中、
チヨマル王子はというと……
「もっとちこうよれい」
「はーい、お菓子あーーーん」
「チヨマルさま、ジュースもどうぞー」
ベルベットちゃんアンナちゃんに挟まれてデッレデレしている。
「うむ、くるしゅうない、くるしゅうなーい!!」
(あっ、ちょっとむかつく)
こんな事でちょっと嫉妬する器の小さな僕
だめ貴族だもの。 ミスト
「なんだミスト、私といちゃつくか」
「い、いえリア先生……なんでもないです、はい」
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