第313話 神秘の国からはるばると
合同教会へ行くとあいかわらず観光客が多い、
最近は『飾り女神の部屋で滞在できるのは3分』と決められているが、
ごくまれに奥へ出入りする時にちらりと見える御前立目当てに並び直す客も多いとか。
(入場料自由の弊害だな)
そんな人も混じっている列を横目に入ると忙しそうな神官クルケさんが、
相方の神官兼吟遊詩人のイデーヨさんと一緒に僕らに気が付いてやってきた。
「領主様、例の運ばれてきた少年でしたら最奥でベルベット様が治療中です」
「一緒に来た女性はふたりとも、言いたい事だけ言ってそのまま……」
「死んだのか」
言い難い事をズバリと聞くリア先生、
人の生き死にに直面する騎士団長様だからね、
こういう事には容赦が無い。
「いえ、疲れて眠っています」
「今は女性僧侶の詰所で横になられております」
「そうか、一応見せてもらおうか」
イデーヨさんに連れられて行ったリア先生、
僕は入れるのでクルケさんに開けてもらい奥の女神像へ。
(うわわ、観光客が漏れた光を浴びようと、相変わらず必死だ)
誰だ『御前立の光を浴びただけで寿命が十年伸びる』とか噂流したのは!
相変わらず本体の光を通してきらきら綺麗な御前立女神像、
その隣りの壁をスルーすると眩しすぎるので目を手で軽く覆いながら足元を見て進む。
「ベルベットちゃん、どう?」
「んー、むずかしーですねー」
あんまり見せないテンションだ、
僕はちゃんと見られるように女神像本体を背にするように回り込むと、
厚い毛布の上に寝かされた6歳前後の少年が苦しそうにしている。
「助かるかな」
「どーでしょー、すでにないぞーがくさりはじめてましたー」
「再生するの?」「わかりませー」
本当にギリギリで来たんだなっていう感じか。
(でも、一生懸命治療魔法をかけてはくれている)
女神像の光魔法に加えベルベットちゃんの直接治癒魔法、
他に僕にできる事は無いかな、とソフィーさんベルルちゃんにしてたような、
背中に手をあてる行為をしてみる、これで魔力が上がれば良いが……
「きゃあ!」
「ほへ?!」
「りょーしゅさまのへんたーーーー」「なんでー?!」
背中触っただけなのに!!
「いまここでそれはやめてくださーー」
「いやいや、魔力を上げてあげられるかなって」
「つないでぞーふくするあいてがいませーー」
あ、そうか、
背中に手を当てる時って必ずソフィーさんベルルちゃん二人にだもんな、
僕が単独で手を当てても意味ないのか、単なるセクハラにしかならなかったみたいだ。
(可愛い女の子みたいな悲鳴上げやがって!)
「じゃあソフィーさんベルルちゃんを連れて来る?」
「んーーー……おねがいしまー」
「うんわかった、待っててね」
最後に白装束の少年をそっと撫でて女神像エリアから抜け出す。
(本当に苦しそうだったな、何とかしてあげたい)
飾り女神まで戻るとリア先生が待っていてくれていた。
「どうだった」
「僕の見た感じだと五分五分ですね、ソフィーさんベルルちゃんを呼びましょう」
「わかった、二人とも魔法研究所だ、待っていてくれ」
素早く出て行ったリア先生、
そしてイデーヨさんが僕の方へ。
「領主様もご覧になられますか? ジッポンの女性」
「あっはい、っていいのかな女性の詰所に」「寝ているだけですから」
一応、他の神官女性に断りを言って入るイデーヨさん、
ついていくと仮眠室みたいなベッドがふたつあって、
そこで寝かされていた黒装束の女性がふたり、黒髪だ。
「ここへ来た時の状況は」
「はい、なんでも『ジッポンから噂を聞いて来ました』『若のお命をお助け下さい』だそうで」
「あー、そんな遠い国にも噂が届いてるんだ」
欠損以外は何でも治すって噂、
女神像公開時から流れたとして、
一か月半でジッポンから人が来ちゃうのか、ほんと噂は足が速い。
「そして『この国の王にお願い致します』『払える対価は何でも払えます』と言ってそのまま」
「疲れて寝ちゃったんだ、よっぽど飛ばして来たのかな、はるばるジッポンから」
もし助かればそれこそぎりぎり間に合ったって感じだ。
「名前さえ名乗る余裕も無かったようで」
「うーん、見た感じ、ジッポンのアサシンっぽいよね」
眠っている顔をよく見るとうーん美人だ、
同じ人間にしても人種が違うものの、なんかこう、
男を引きつける感じがする、なんだっけジッポンの女性アサシンの名称。
(クナイフ、だっけクノチルだっけ、小説でなんか読んだな)
とにかく小説でしか知らない国ジッポン、
それだけで興味アリアリだがとにかく今の優先は王子の治療だ。
「おふたりとも、全力は尽くしますから、今はお休みください」
そう声をかけて飾り女神まで戻ると、
ソフィーさんベルルちゃんがもう来ていた。
「早いね、ごめんね忙しい中」
「ミストくんの緊急招集ですから」
「リアさんから話は伺いましたわ」
今度はリア先生を扉の前で警備させてぞろぞろ奥へ、
ソフィーさんが僕の両目に魔法をかけてくれたので、
七色の女神像本体はそれほど眩しくなくなった、そして少年を取り囲む。
「あーー、ししょーー!」
「ベルベット、どういたしました?」
「りょーしゅさまにー、さわられましたーーー!!」
(なにその告げ口?!)
幼女に手を出す変態領主爆誕
だめ貴族だもの。 ミスト
「これは危険な状態ね」
「再生魔法を全力ですわ」
ほっ、良かったスルーしてくれた。
「ミストくん、繋ぎ役を」
「あっはい」
「わたくしはいくらでも、べたべた触って構いませんわ?」
ベルルちゃんは、ね。
「ベルベットも手伝いまーー!!」
ベルルちゃんにしがみつくベルベットちゃん、
こうして僕は両手をソフィーさんベルルちゃんの背にあてて、
少年にめいっぱい治癒魔法を注がれるのを見守り続けるのであった。
(助かってくれよ、名も知らぬ、神秘の国ジッポンの王子よ!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。