第287話 アンデッドダンジョン作戦会議

 メランのお城に到着、

 すっかり治ったターレイさんが満面の笑みで迎えてくれた。


「ようこそポークレットファミリーの皆さま、今夜はご馳走を用意しておりますわ」


 国王陛下自身としては『まだダンジョン攻略をしてもらっていない』という事で、

 僕らの事はまだ完全には認めないものの、妻の『個人的感謝』には今回は従うそうだ。


(なんだそれ、こじれたツンデレか)


 前に僕に対し個人的忠告というか独り言だっけ?

 この国全体に僕らが認めてもらわなければとか言っていたから、

 今回のダンジョン攻略が成功したら大々的に広めてくれるのかも。


(まあ、まだA級パーティーだからね)


 歓迎の夕食会に例の、アルドライド国王の血が流れる、

 第二王子の側室、第二夫人シルミーさんも同席してくれたが、

 ずっと作り笑顔みたいな感じだな、まあいいや他所の奥さんだし。


(ってここの姫様に手を出す気は無いよ!)


「ミストくん、こちらの魚はサザンヌからのようです」

「こちらのスープはシータートルのようですわ、ミスト様」

「うん、どれも美味しいね」


 僕と和気藹々食べるソフィーさんベルルちゃん、

 リア先生はキリィさんモリィさんと黙々食べている、

 メイドエルフ三人は肉より野菜が好みなようでサラダをおかわりしている。


(でかいエルフのセクレドさんが、サラダであの体型を維持できるのかな)


 ちなみにメイド服ではなく『エルフドレス』らしい、生地薄めの重ね着。


「オッホン、初めて会う者も居るので改めて、ワシはジタフと言うドワーフじゃ」


 いつのまにかやってきていた昔の衛兵隊長で、

 国王陛下がまだ王子だった頃の教育係だったけ?

 ジタフさんがあらためて自己紹介をした、また武勇伝を聞かされるのだろうか。


「食事中ついでじゃ、アンデッドダンジョンについて、軽く説明しておこう」


 話によるとサザンヌとの国境近くにある墳墓ダンジョンで、

 元は大昔、推定3500年前の遺跡で、当時の王様が祀られていたが、

 その最深部が魔界と通じてしまい深い深いダンジョンになったとか。


(あ、黙々食べてたリア先生がここはジタフさんに話しかけるみたいだ)


「ジタフ殿、そのアンデッドの特徴は」

「上階層は王と一緒に埋められた家来がスケルトンになったもので弱い、

 だが中階層からは魔界からのアンデッドが多くひしめき合っていて、

 その出現エリアが最近、急速に上がってきておるらしい、スタンピードの前触れじゃな」


 あらためて説明するとスタンピードとは魔物の大氾濫、

 過去、アルドライドでは勇者十二人中、九人を失った。


(とはいえその時の勇者の称号は、終わってからの後付なんだっけ)


「なるほど、ジタフ殿、では下階層は」

「わからぬ、ボス部屋まで何階あるのか、どのようなボスなのかもな」

「それを一度に、一気に最下層まで行けと言うのか」「依頼ではな」


 それって結構、無茶なゲームなのでは。


「ミストくん、私達ならできます」

「そうですわ、考えてもみて下さいまし、光魔法はアンデッドへの相性、抜群ですわ」

「だと良いのだけれど」


 国王に目を向けるとなぜか頷かれた、

 王妃は笑顔、シルミーさんはなぜか目を逸らした。


(つまりこれは、僕たち任せかー!)


 いや依頼されてるからそりゃそうだが、

 何がどうなっても知らないが頑張れって感じに受け取った。

 リア先生が話を続ける。


「それだけ深いのであれば、援軍はあるのか」

「あそこは墳墓だけあって少し深く潜れば金貨や昔の武器が手に入る、

 さらには貴重な闇魔石も沢山取れるうえ、上層階から中層階すぐの所までは、

 冒険者に人気のダンジョンでな、ワシの甥も今回の大規模討伐に参加するそうじゃ」

「という事は援軍ではなくライバルか」「そのようなものじゃな、他にも居るようじゃ」


 あー合同討伐となると多少面倒くさいかな、

 また変なのに絡まれなければ良いのだけれども。

 あ、リア先生が難しそうな顔してる。


「ふむ、邪魔だな」

「今回は必ずボスを討伐に行けるパーティーを、と冒険者ギルドも募集しておったのじゃが、

 どうも最初に『強い冒険者パーティー』を行かせておいて、その取りこぼしや、

 撤退した後の階で残されたアイテムを拾ったり、攻略した続きを狙っている者が多そうじゃな」

「確かに先頭のパーティーがある程度、深く潜ってくれればそれについていくだけでほぼノーリスクだな」


 つまり一番最初に入ったパーティーに道を切り開いてもらって、

 そこが潰れれば、後からついていっただけのパーティーは

 その潰れた場所からほぼ無傷で事実上のスタートか、体力魔力満タンで大暴れできるって事ね。


(で、さらにその後ろに控えしパーティーは、もっと楽して奥から事実上の戦闘スタート、と)


「じゃから無駄に消費するだけの先頭は基本、どのパーティーもやりたがらんのじゃ」

「それはむしろ、我々には好都合かも知れんな、なあミスト」

「リア先生、そうは言っても地下何階までかわからないんじゃ」


 ソフィーさんベルルちゃんを見る。


「あら、私は何階でも構いませんが」

「ミスト様、階数が多ければ多い程、金貨やアイテムや闇魔石が手に入りますわ」

「そ、そう? 大丈夫なら、ついていくけれども」


 ジタフさんが顎に手をあてた。


「ただのう、ワシの甥は特殊個人スキル『人物鑑定』を持っておってなあ」

「我々の事がわかるというのか」

「ああ、おそらく貴殿ら『ポークレットファミリー』を見ると、

 これは先頭にさせれば全て、何もかも全て持って行ってしまうと勘付くかもしれんな」


 おこぼれ狙いが何もこぼれないとわかれば、そりゃあ騒ぐか。

 その場合は僕らを押しのけて先頭で行って行ける所まで行って引き返すか、

 僕らを当てにして合同パーティーで同時にとか言いかねない。


(いや僕らが三番手とか四番手になって……ってそれじゃあ前に死人が出たら後味悪いな)


 むしろ僕らを先に行かせて、

 死んだら美味しい所を貰おうって魂胆になるか。

 こっちじゃポークレットファミリーなんて名声届いて無さそうだし。


「ミストどうする、まず順番はどうする」

「うーん、死人を出さずボスまで行って倒せるなら、先頭っていうか一番乗りで行きたいですね」

「だが我々の強さがバレれば揉めるかも知れない、国王特権でそれは」


 陛下が首を横に振る。


「依頼主ではあるものの、そこあたりは冒険者ギルドの判断だ」

「となると、我らが『弱い』と思わせる必要があるな」

「でしたらその『人物鑑定』が使えるドワーフさんに嘘ついてもらうとか」


 こっちも首を横に振るジタフさん。


「奴はS級パーティー『ディープディープトレジャー』の誇り高き戦士ジグス、

 ワシの甥っ子じゃからと言う事聞くタマじゃない、むしろ『ならば先陣で死ぬ』と言いそうじゃ」

「逆効果ですか」

「ああ、しかも後ろが安心と思って、無理して死のギリギリまで金や財宝を取って、貴殿らに助けてもらおうとするじゃろ」


 性格、悪っ!


「そんな訳だミスト、何とか最初にダンジョンに入れるように交渉してきてくれ」

「ええっ、僕がですか?!」

「そうだ、そうだな、このパーティーで弱く見えるのはミストと、他だとエルフ三人になってしまうか」


 うーん、どうしよう。


「ジグスは頭が切れるからの、ワシが何か言ったらそれをヒントに勘付いてしまうかもしれん」

「わかった、ミスト、ミストの判断でいかにも弱そうに演じてくれ」

「演じるって……」


 ソフィーさんベルルちゃんがわざわざ身体を僕の方へ向ける。


「いかにも先頭を行かせたいって思わせる事ですね」

「多少は悪者になるとか良いかもしれませんわ」

「わ、悪者って……?!」

「例えば私やベルルちゃんを虐げている暴君を演じるとか」

「ですわ、『アイツ死ねばいいのに』と思わせて最初に入れるよう差し向けるのですわ」


(うーーーん、悪役かぁ)


「ミスト、ミストだけなら弱く見られるのは簡単だろう」

「そんなリア先生」

「あとは知恵を使ってくれ、リーダーらしく指示をしてくれれば良い」


 こんな時にリーダー扱いされても、パーティーの頭脳にはなれない

  だめ貴族だもの。 ミスト


「じゃ、じゃあ最初に、順番決め会議を冒険者ギルドで」

「よし、それくらいは領主特権で手配しよう、依頼主としてな」


 国王陛下、はりきらないでー!


(……ほんと、どうしよう、特に『人物鑑定』持ちのジグスさんをどう欺くか……はぁ)


 こんな僕を見てソフィーさんベルルちゃん、にこやかに笑ってるぅ。

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