第268話 とりあえず答えてみた(六回目)

「ミストくん、王都は王都でお城の新年パーティーがあるのよ」

「そちらに出席する方々が抜けただけで、各公爵家の方々は残っていますわ」


 聞くと当主や跡継ぎは国王陛下を追って転移テントで王都へ行くが、

 次男三男とか娘夫婦とかは同じテーブルで残ってくれているらしい、

 出て行った人の数が多いから気になったが教会関係者は軒並み残ってくれている。


(逆に新年のこのタイミングで、出席してくれただけで感謝か)


 じゃあ僕らは王都のパーティーに行かなくて良いのか聞いたら、

 いくら国王陛下のお気に入りでも公爵になってからの招待だそうだ。


(あーつまり血の繋がった身内が中心か)


「あ、でも僕が公爵になるには薄くとも、お城の血が繋がってないと駄目なんじゃ」

「そこはもう心配ありません、私の大お婆様は昔の、アルドライド国王の娘の子ですから」

「あー、じゃあ一応はソフィーさんもアルドライドの、お城の血が」


 知らない間にというか、とっくに、

 最初から公爵の条件はひとつクリアしていたのか。


(あ、教会合同の音楽隊がスタンバイし始めた)


 ということはイッツダンスタイムだ。


「さあミストくん、踊りましょう」

「は、はいっ」

「今回は侯爵ということで、ゆっくりめ、長めで、愛を語り合うように」


 確かに落ち着いたムードの曲が流れ始めた、

 僕はいつもより、といっても踊る機会なんてそうは無いが、

 教えられていたパターンを急がず落ち着いて踊る、うん、良い感じだ。


「あとは小声で語り合えば、本当に仲の良い夫婦と思われますよ」

「じゃ、じゃあ何を……」

「音楽で周りには聞こえませんから、どんな言葉を囁いてくれても平気ですよ」


 うーん、延々『愛してるアイシテル、あ・い・し・て・る』とか呟くのはどうだろう、

 いや、それよりも何か会話らしきものをしている方が良いかな……あ、そうだ!


(よし、ここで使おう)


「ソフィーさん」

「はい、ミストくん」

「答える権利を使います、ソフィーさんが僕を愛する、一番の、真の理由を」


 えっ、ここで?!

 っていう反応になるのを覚悟したが……


「ふふっ、嬉しいですね、このタイミングで答えを当てていただいたら、最高の思い出になります」

「では答えますね……」「はい、どうぞ」


 密着して耳元で僕は囁いた。


「愛しています」

「私もです、愛していますよ」

「そのソフィーさんが僕を愛する理由、それは……」


 今度は反対側の耳へ移行し、そして告げる。


「世界平和のためでしょう」

「……それは、すなわち?」

「ソフィーさんは僕を愛せば愛するほど魔力が強くなる、

 強くなった魔力で世界の紛争や魔物の氾濫を防ぐために」


 ……返事は無い、まだ言葉が必要か。


「さらにベルルちゃんと繋ぎ合わせる魔法、あの威力を高めるために、僕の力が必要で、

 それには僕を愛させる必要があった、僕にはその力があった、それはおそらく難しいバランスで、

 元の魔力が少ない男性でないといけなくて、それが最も適したのが……僕だったと」


 ゆくりとしたダンスに緩急をつけるソフィーさん、

 そして今度はソフィーさんが僕の耳元で……


「……よく気付かれましたね」

「そ、それじゃあ」

「ただ、ミストくんが魔力を繋ぎ合わせるのに最適になったのは、偶然ですよ」

「えっ、じゃあ計算して自由教の教祖にさせたんじゃ」

「私やベルルちゃんは預言者ではありませんから、ただしもちろん、ある程度の予測は過去の資料、歴史書から」


 あーつまり、死の砂漠に怪しい神殿がある事は掴んでいて、

 そこで実際に掘ってみて、出てきたのがそういう物だったから利用した感じか。


「ということは、別に計算尽くという訳ではなかったと」

「でもミストくんと心置きなく愛し合うために、アルドライドのために、

 世界を平和にしようというような考えを持っているのは、正解と言えますね」

「え、正解?!」

「はい、ただしそれはミストくんを愛するための、手段でしかありません」


 つまり世界平和のために僕を利用したんじゃなく、

 僕のために、僕と愛し合うために世界を平和にしたいって事か。


(そこまでいくと、怖いな)


「だとすると僕を愛する理由が世界を平和にするためというのは」

「順番が違いますね、ミストくんを愛するために、障害を無くし地位を上げるために、

 皆さんに感謝させてより多くの味方を付ける事で、ミストくんとより愛し合える環境を目指した結果です」

「じゃあ僕の、『ソフィーさんが僕を愛する一番の理由』の答えとしては」「不正解ですね」


 違ったかー。


「ふふふ、でも、そこまでたどり着いたのは褒めてさしあげます」

「ほ、本当ですか」

「ええ、ミストくんも成長してるんだなって感じると、嬉しくて」


 お嫁さんを喜ばせるのには成功したみたいだ。


「ミストくん」

「はいソフィーさん」

「愛しています、本当に、本当に心の底から、魂から、愛しています」


 そっと僕の頬にキスしてくれた。


「あ、ありがとう」

「ふふふふ、結婚式までに当てて下さいね、

 あと一回か二回は答えるチャンスがあるでしょうから」


 ……二回となると、結婚式当日と、あとはその前に公爵になった場合か、

 でも今回のが外れたとなると、もう出せる答えは……アレしかない。


(それは、ソフィーさんが、ベルルちゃんが、実は……魔王だという推測)


 もしそうだったら僕は……僕は。


「ミストくん」

「はい」

「……ミストくんからも頬に、お返しのキスを」


(しまったーーー!!!)


 やはり大事な所は抜けている

  だめ貴族だもの。  ミスト


(こういうとこだぞ、ミスト……と自分で突っ込んでおこう)

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