第240話 なんだかんだで戻るよ戻るよ
ムスタ城を見下ろせる丘の上、
戦争になったらここから出陣だなと思い、
作業小屋とか廃屋とか無いか探したがそこまで都合の良い物はなかった。
「ミストくん、ではこの森の奥に結界を張りましょう」
「えっ、結界って」
「ゴスタ南にあった、男性しか見つけられない屋敷、あの結界です」
そう言って魔石を埋め始めたソフィーさん、
ベルルちゃんも手伝う、っていつのまにそんなの覚えたの?!
「ひょっとして、一目見て理解したとか?」
「意外な魔法式でしたが、そこまで難しいものではありませんでしたから」
「ですわ、応用はいくらでも効きますわ、女性しか見つけられないとか、純潔のみとか、ですわ」
純潔って!
「リア先生、綺麗な朝日ですね」
「ああ、向こうが我々に勘付いてやってこないか監視している」
「そ、それはご苦労様です」
てっきり朝日に照らされたお城を眺めているのかと……
あそこの城主、女帝がきちんと話のわかる人なら良いのだが、
せめて年齢がいくつかくらい聞いておけば良かったかな奴隷公爵に。
(いやオプラスさんが知ってるか)
しばらくしてようやく準備ができたようで、
ソフィーさんベルルちゃんが汚れた服でやってきた。
「あ、なんかごめん」
「いいのよ、さ、腕を出して」
「魔法を詠唱して魔方陣を発動させますわ」
いつのまにか森の中に広場ができててそこへ向かって三人で魔法、
といっても僕は何もしてないし腕を取ったソフィーさんベルルちゃんは無詠唱だ、
やがて成功したようでそこへ大きな魔石を埋め込む、魔法だからすぐだ。
「さあ、テントを立てましょう」
今度は僕も協力して転移テントを作る、
そのテントに繋ぐ形で馬車を置いて中へ入ると……
「うん、ゴスタ南の別荘だ」
「領主様!」
「あ、ジンくん、メランとは繋がった?」
「はい、あちらにすでにメランへのテントが」
「おお凄い、よく設置できたね」
材料はソフィーさんベルルちゃんが仕込んだとはいえ、
あちらの『サン』くん『ノウ』くんも有能だ、これだったら、
ソフィーさんベルルちゃんが行かなくても遠い遠い国と繋がれるだろう。
「それでメランは話は聞いてくれた?」
「一応、一緒に行った国代表の外務大臣があちらの国王に書簡を手渡ししたのですが……」
「何か問題でも?」
「色々信じられないという事で、信じてもらうため、転移テントでヨンスタまで来てもらうことに」
「あー、実際にアルドライド国王に会わせたんだ」
行動力あるなあ、罠とか考えなかったんだろうか。
「それでどうなったの?」
「どうなったというよりは、今どうなっているんだろうといった感じで」
「あ、そういうこと」
まだ会談中かな?
「ではミストくん、私達も行きましょう」
「ですね、報告もしないといけませんし」
転移テントで移動しながらふと思い着く。
「ええっと、騎馬って特製アイテム袋でしまっちゃえますよね」
「ええ」
「それを転移テントで移動して大量の騎馬を敵の城の前に並べるというのは」
「人ではなく馬や動物、弱い魔物の場合、短時間で精神に異常をきたしますね」
「そうなんだ、じゃあ使い物にならないね」
良い考えだったんだけどな、と思いつつヨンスタのお城へ、
そこではオプラスさんがふんぞりかえっていた、玉座取り戻したぞーって感じで。
(ここは僕が報告しよう)
「オプラス王、ただいま戻りました」
「おお、どうだ、それでどうなった」
「はい、女帝の住むムスタ城の目前まで転移テントを設置致しました」
うんうん頷くオプラス王。
「それではいつでも攻め落とせるのだな?」
「まずは話し合いです、それによってはナスタの王は」
「うう、致し方なしか」
「とはいえその可能性は低いかなと」
「なに、それは本当か?!」
……いや、この人こそ本当にナスタの王になって良いのだろうか?
「ちなみにお聞きします、女帝ミラーって何歳なんですか?」
「確か五十、ニ、三、四、五、だったかのう」
「あーそんなに」
想像してたのとちがーう!
そんなおばちゃんに『惚れました』みたいな夢を見た僕って……!!
「あ、もうメランの国王とお会いしましたか」
「ああ、それがのう、まだ信じられないようでアルドライド国王と砂漠の国へ」
「行っちゃったんですか、わかりました、僕達も追いかけます」
こうして砂漠の国へ転移すると、
今度は砂漠の城の玉座で意外な人が座っていた!
「なにやってるんですかメルさん」
自由教の教祖代理、アプス神殿調査団のメンバーで、
僕にまったく、これっぽっちも、毛ほども(異性としての)好意がない眼鏡女子だ。
「こっちの自由教教会の用事で、そのついでで留守番を任されました」
「アムムルさんはどうしたんですか、一応この国のリーダーでしょう」
「それがどうしてもオークレースに行きたいと」
あー、嫌な事覚えちゃったなぁ。
「アルドライド国王とメラン国王様は」
「ここは通過したって聞いたわ」
「ありがとう、教祖代行がんばってね」
こんな僕にもやさしく手を振ってくれたメルさん、
だめ領主そしてだめ教祖でさえやさしくされると勘違いしちゃうゾ?!
などと思いながら転移テントをぬるっとくぐり続けて……
(あー砂漠の国はあいかわらずテント渋滞がひどい)
優先して入れてもらえるとはいえ少しいらっとする、
こうしてアプス神殿からぬるっとアルドライド王国フォレチトン領まで、
あとはすぐだろう、あ!
「うがーうがー」
「ウガウガウガ!!」
「ミストくん、遊ばないの!」
(オーガ村は楽しいなあ、一瞬だけど)
そしてやってきたミストシティ、
騎士団の建物の屋上だ、こっから階段で降りる。
うん、途中で見える更衣室の扉はちゃんと閉まっているな、よし!
(結婚前に一度だけ誘い込まれてみよう)
そんな考えを心に秘めてまだ一階までしかできていない辺境伯邸へ、
いやこれ二階もできていそうだな、そこで待っていたのはサリーさんだ。
「あ、領主様ぁ、国王陛下でしたらメランの国王様と孤児院へぇ」
「え、なんで」「さぁ」
辺境伯邸から伯爵邸への転移テントをくぐり、
アメリア先生が気になりながらも歩いて孤児院へ、
いつもはこんな短距離でも馬車を使うが国王陛下が乗って行ったらしい。
(孤児院に何の用があるんだろう)
道中の会話もなく孤児院兼小児病棟へ着くと、
やっと見つけた! 国王陛下が見た事ない紫系の服を着た偉そうな人と出てきた。
「おう辺境伯、戻ったか」
「はい、その、そちらの方は……」
これはこれで鋭い眼光の、四十代後半から五十代前半くらいの男性、
その姿というかオーラで一発でメラン国王だとわかる。
「君か、勇者であり『奇跡の辺境伯』ミスト=ポークレットは」
「は、はい、そうです」
その二つ名、初めて聞いたんですけれどー!
「頼む、頼むから、私の妻の命を、救ってくれないか」
「え、ひょっとして病気、ですか」
「ああ、心臓を中心に内臓をいくつもやられていて、もう時間の問題だ、頼む、この通りだ」
深々と頭を下げられた僕は、
内心でほくそ笑んでしまった……!!
(貸しを作るチャーンス!)
しめしめ、とついつい唇が歪みそう
だめ貴族だもの。 ミスト
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