第231話 えっ、いつのまにベルルちゃんにこんな弟子が?!

 お相手はアポ無し訪問を嫌うという事で、

 事前にきちんとお手紙を送って返事を待つ事になった、

 本当にあのまま出立するのかと思ってヒヤヒヤしたよ。


(そして今日も復興作業だ)


 とりあえず主要な治療所を三人で見て回る、

 内臓損傷や欠損系の治療はようやく落ち着き、

 生き残った人々の健康診断が中心、このあたりはフォレチトン大教会聖教会自由教会、

 通称『フォレチトン教会連合』から、魔力の高い方々をできるだけ多く呼んできている。


(アッサムポッサムよりも、人の数が桁違いだからね)


 敵が五千人で包囲できるまでに減ったとはいえ、

 内戦が終われば首都となるかもしれない大都市だ、

 住居が崩壊した人々はミストシティの住宅街に避難してもらっているものの、

 まだここヨンスタに残っている住民を全て診ようとすれば、僧侶が何人いたって足りない。


「あれ? フォレチトン以外の僧侶とかも居ますよね」

「そうですね、そのあたりはフォレチトンに居る方が自主的に他所へ声をかけて下さったようで」

「ですわ、聖教会としても、大教会より多くの聖女を動員して、復興後の信者拡大を目指しておりますわ」


 あーあーはいはい取り合い奪い合いね。


「もちろん魔法があまり使えない方もお手伝いに……ほら、あのお方とか」

「え? ソフィーさん、誰……あー! 確か、僕の元婚約者の!!」


 医療品を運んでいる健康的な身体の女性、

 前も教会で見た、元引きこもりの、ええっと名前は……


「お久しぶりですミスト=ポークレット様、ペネロペです」

「うん、覚えている、魔薬草関係で処刑された貴族の中で、僕が生かせてってお願いした」

「その節は本当にありがとうございます、最も当時の記憶はもうありませんが」


 へ?! って思ったら僕の表情を察してかソフィーさんが説明してくれる。


「ミストくん、彼女は生まれ変わったのよ」

「うん、見た目で大体わかる、あと声で」


 丸々太って歩くのも、いや動くのも大変そうだった引きこもり女性が、

 まだ標準よりはあちこちあれだけれど、ちゃんと普通に動ける身体になっていて、

 声も太っている女性特有の野太さから、まあまあ普通になっていた。


「彼女はチュイラクス男爵家で悪に染まって行くのに我慢できなくて、

 かといって抵抗も密告もできずに引きこもっていたのだけれども」

「うん、だから生かしてあげて欲しいってお願いした記憶が」

「精神的にもすっかり、やる気と言うか何か行動するという事が、

 まるっきり出来ない病気とでもいいますか、まあそんな状況だったので記憶を消しました」


 さらっと恐ろしい事を言う。


「記憶を消したのって、全部?」

「ほぼそうですね、それで当時二十二歳、精神疾患が記憶を消す事で治るかどうかのテストも兼ねて」

「それでこうなったんだ」

「最初から大人ですからね、学習能力はありましたから、半年でこのように」

「なるほど、教会の皆さんも協力してくれたんですね」「孤児院ですね」


 そっか、そこからか。


「ペネロペさん」

「はい、ミスト様」

「もう婚約者ではありませんが、これからもよろしくお願い致しますね」

「生かしていただいた恩に報いるよう、魔法はあまり使えませんが、頑張ります」

「うん、よろしく」


 荷物を持って行っちゃった、

 当時二十二歳って事は今は二十三歳かな?

 最後に残っている準愛人に入れる気はないけど、たまには会いたいな。


(次の治療所は、っと……)


 まだ焦げ臭いヨンスタの街、

 冒険者ギルドも依頼は復興のお手伝いらしい、

 あ、思い出したけれど『マジカルリスタート』の皆さんは無事に帰ってきました、

 なんでも突然の『お城消失事件』として原因不明でイチスタから調査団が向かうとか。


(足止めは大成功だな)


 これで女帝が物わかり良くて挟み撃ちにできれば良いが、さてはて。

 次の治療所は学校かこれ、三種類の僧侶服が見える、自由教少ないなぁ頑張れ!


「ししょーーー、ベルルししょーーー!!」


 聖教会の聖女服に身を包んだちっこい少女、

 あきらかに年齢一桁な子がベルルちゃんに真っ直ぐ突っ込んできた!


「まあベルベット、わざわざここまで?」

「ししょーのために、ししょーのお力になるために! きましたー!!」


 元気な子だなあ。


「ベルルちゃん、この子は」

「愛弟子ですわ、おそらく弟子で一番魔力がありますの」

「そこまで?!」

「おそらく、わたくしが同じ八歳の頃よりも魔力がありますわ」

「一体どこで、いつのまに弟子って!!」


 髪の色が青っぽくって表情が少し大人びている感じ、

 甘々タイプのベルルちゃんとはまるっきり違うから親戚でも無さそうだけれど、

 それでこの魔力ってどこから引っ張って来たのだろう?


「彼女は実は、魔女の森で保護した少女ですわ」

「そうなんだ、ってひょっとして、魔女の娘?!」

「違いますわ、でも魔力を見込んで育てられていたのは事実ですわ」


 ベルルちゃんの喋りを真剣に聞いているベルベットちゃん、

 いや、真剣というかワクワクしながらかな、ベルルちゃんの声が大好物みたいな。


「あれ? じゃあひょっとして名前は」

「ですわ、わたくしが付けましたわ」

「そうなんだ、じゃあベルルちゃんはお母さんみたいな」

「将来的にはそうなるかも、ですわ」

「えっ、つまりどういうこと?」


 僕の娘に?!


「ベルベットは聖女の英才教育を施して、

 将来的にわたくしとミスト様の間に生まれる、男の子の婚約者にする予定ですわ」

「えええもうそんな事に?! って聞いてないんですけれど!」

「ミスト様に認めてもらえるように育てている途中ですわ」

「……男の子が生まれなかったら?」

「生まれるまで子作りいたしますわあ!」


 うーん、すぐ生まれたとしても八歳差、いや九歳差くらいかな、

 僕とリア先生以上の差だ、でもまあ僕とアメリア先生を考えたら、ってそれは極端か。


「えっとベルベットちゃん」

「はぁーい!」

「ベルベットちゃんは、それでいいの?」


 って八歳にわかるかな、話していた内容。


「ミストさまぁー」

「はいはい」


 スッ、と子供用の杖を出して僕に向ける!


『ビッグバンメテオ!!』


 ひいいいいい!!


「……なぁーんて」

「くおらあ」

「きゃあ! ししょーーー」


(あ、あせったあああ!!)


 八歳児に本気でビビらされる

  だめ貴族だもの。 ミスト


「さあベルベット、回復魔法をかけて回ってきなさい」

「はーい、はぁーい!」


 末恐ろしい娘だ。


「ミスト、ソフィー、ベルル」

「あ、リア先生!」

「探したぞ、例の女帝から返事が来た」


 はやっ!!


「それで何と」

「ああ、『我々は女性の皆さんを大歓迎致します、是非、年内に』とのことだ」

「じゃあすぐ出ないとですね、って女性の皆さんって!」


 僕は来るなってか。


「ソフィーさん」

「行きましょう、ミストくんが居ないと意味が無いですから」

「ですわ、女装する必要はありませんわ」


(するかーーーい!!)

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