第七章 他国を平和にすると侯爵が付いてくるとかなんとか編

第227話 ヨンスタ炎上事変

「あぁ、間に合わなかった……オプラス様……」


 両手両膝をついてガックリとうな垂れるアルアカさん、

 みんなもその炎上を見ている……ってこれリーダーの指示を待っているのか!


「よしみんな、生きている人を救出しよう、それとできれば……」

「という事です、皆さん、急ぎましょう、まずはお城の領主、新国王の元へ」

「「「「「はいっっっ」」」」」


 サブリーダーのソフィーさんが速攻で話をまとめてしまった、

 僕の考えすらまだまとまっていなかったのに!!

 まずは敵兵を倒す、倒れているアルアカさんと同じ装備の兵士には回復魔法を、

 そうでない敵側の、砂漠の廃墟で見た敵兵装備の連中は……


「な、なんだお前ら! ……うぐぅ」


 ソフィーさんベルルちゃんが無詠唱で睡眠魔法をかけて眠らせる!

 たまに効きの悪い魔法使い系、僧侶系の敵はキリィさんモリィさんが手刀で後頭部を叩いて眠らせる、

 ストンと落とす奴だ、あれって下手すると殺しちゃうって聞いた事あるけどさすがアサシン、手際が良い。


「あ! ソフィーさん、泣いている子供が」

「気持ちはわかりますが今はお城です!」

「私に任せろ」


 リア先生が離脱して子供を運ぶ、

 安全そうな所へ避難させてくれる事だろう。


「オプラス様を、せめてオプラス様だけでもっ!」


 アルアカさんが祈るように願いながら走りついてくる、

 この人もこの人で有能なんだろうってこれだけでよくわかる、

 えっ、僕? なんか知らないけど魔法かけられたみたいに足が軽いよ!


(いやこれ絶対かけてもらっている)


 たまに遠くから魔法がとんでくるも見えない防御壁で弾いてくれたうえ、

 その方向をソフィーさんベルルちゃんが一瞥するだけで

 かけてきたであろう敵が崩れ落ちる、睡眠魔法だろう。


「あっ、お城の前に軍勢が」


 僕の声にソフィーさんとベルルちゃんが顔を見合わせ頷いた。


「「ディープスリープ!!」」


 杖を掲げ今度は二人同時に声に出して詠唱、

 するとあれだけいた敵兵がほぼまとめて崩れ落ちて眠る!


「な、なんだ、なんだお前たちは!」


 体の大きな、この隊のリーダーと思わしき男が巨大な斧を構える!

 しかしベルルちゃんが杖から出した光の縄であっけなく鎧を解体し身体を縛った!!


「うぐ、うぐううう!!」


 じたばた暴れる大男をキリィさんモリィさんが同時に手刀で後頭部に喰らわすと、

 白目をむいて気を失った、ヨダレまで流して。


「よし、追いついたぞ」


 リア先生が戻ってきた、これで全員揃って中に入れる!


「じゃあ、行こう」


 僕の声を合図に城の扉を開け、

 中に居た敵兵たちも容赦なく眠らせて倒す、

 そして王の間らしき所へ到着した瞬間、僕らが見た景色は衝撃的なものであった!!


「た、た、隊長ーーー!!」


 アルアカさんが隊長と叫んだ鎧の男、

 それが敵の、おそらく一騎打ちであっただろう重厚な鎧の敵に、

 槍で胸を、心臓のあたりを貫かれた所だった!!


「グッハッハッハ、これでお前たちも終わ……ぬう? 何だお前らは!!」


 玉座の中年男性の首元へ剣をあてていたナマズ髭の鎧の中年、

 これであきらかに玉座はオプラス王で横が敵の偉い奴だとわかる情報だ。


「ベルルちゃん、今すぐなら間に合います!」

「はいですわ、鎧を脱がせますわ」


 光の縄で鎧を外し槍を抜くベルルちゃん!

 刺した方の男は鬼の形相でこちらを睨む!


「何だ! 最後の一騎打ちだ、邪魔するなぞ男らしくないぞ!」

「私は女だ、一騎打ち、受けて貰おう!」


 とリア先生は閃光一撃、剣で敵の腕を斬り落とした!!


「ぐおおおおお! ひ、卑怯だぞ!」

「一騎打ちと言ったであろう、そうでなくとも隙だらけだぞ!」


 そう言ってもう片方の腕も斬りおとす!

 いつのまにかまわりの敵兵は眠っており、

 オプラス王に剣を向けていた親玉もスヤスヤ寝ていた。


(仕事が早い!)


「急いで心臓を移植します、ミストくん、こちらへ」

「ミスト様、目を瞑っていても構いませんわ」

「う、うん」


 僕が心臓を貫かれた隊長さんの所へ行くと、

 いつも魔法を合わせる時とは違い両方から腕組みしてくるソフィーさんベルルちゃん、

 そしてベルルちゃんが魔法の細い縄というか紐というかを出して胸を切り開く、

 う、これは確かに見ない方が良い、と思ったら太い光の縄で両腕をもがれた男の鎧が外され、

 胸を切り開かれて心臓を取り出す……実際にこうやって他人のを移植するのか、生きたまま。


「な、何を! 返せ! 俺の心臓を返せえええ!!」

「ミスト様、目を瞑って下さいまし」

「あっ、はい」


 その瞬間、喚いていた男の声が消えた。


「さあベルルちゃん、入れて下さい」

「はいですわ、あとは治癒魔法で……」


 こうして隊長さんの命は救われた、

 その間に外から入ってきた敵兵はリア先生キリィさんモリィさんがどんどん倒してくれている。


「隊長! ダラス隊長!!」

「……う、お、お前はアルアカ、なぜここに……ぐはぁ」

「まだ喋らないで下さい、安静に」

「あ、貴女は」

「ソフィーと申します、とにかく今は敵を」


 玉座を見ると王がさっきまで剣を向けていた相手を、

 剣で突き刺そうとしている所だった!


「お待ちくださいませですわ! ひとりは生かせておく必要がありますの」


 ベルルちゃんの声に剣をぴたりと止める王。


「そ、そなた達は」


 そこへ答えるのは僕の役目だ!


「アルドライド王国から来ましたミスト=ポークレット、勇者です!」


 デデーン! と心の中で効果音を響かせる!


「……勇者?!」


 背中のポーターバッグを見られてるううううう!!


「と、とにかく、アルアカさんの要請で援軍に来ました、もう安心です」

「おお、おぉお、それは真か!!」


 膝から崩れ落ちて手を組み合わせ、涙を流し始めた!


「間に合って良かったです!」


 気が付いたらアルアカさんも敵兵退治に加わっている!

 しかし剣が届く前にソフィーさんたちが眠らせてしまっている。


「できるだけ敵は生かせて眠らせます、この後の事を考えて」

「ですわ、今は抵抗する敵を全員、いち早く行動不能に致しますわ」


 こうして五千人居たとされる敵軍、ナッスタ軍を全滅させたのであった。


(つええええ、こっちは実質たったの六人、いや五人、いやほとんど聖女ふたりで倒しちゃったよ)


「ほらミストくん、次の指示を」

「ミスト様、次は救護活動ですわ」

「う、うん! みんな、生きている人たちを助けて!!」

「「「「「はいっっ」」」」」


 ふう、後は僕はする事ないかな。


「ではミストくん、これからまだ息のあるアルアカさんの仲間や住民を手当たり次第に治します」

「足りない部分は眠らせている『生きた死体』を活用いたしますわ」

「えっ、じゃあ例えば内臓斬られてるナスタン軍の兵士を、眠っているナッスタ軍の兵士から」

「ミストくんは魔力を高める繋ぎ役だから、居てくれるだけでいいの」

「しかし、どちらも集めるには人手が不足しておりますわ、転移テントを設置いたしますわ」


 一旦、王様や横になっている隊長をアルアカさんに任せ、

 あと護衛でキリィさんモリィさんも置いてリア先生と馬車まで戻る、

 途中でボロボロの、おそらく途中で治療魔法をかけたナスタン軍兵士が

 眠っているナッスタ軍兵隊を槍で突こうとしていた!


「お待ちになって下さい、その敵兵は使い道があります」


 気持ちはわかるけど、この敵兵で助かる味方の命があるかも、

 でもそれを詳しく説明している暇はない、ベルルちゃんもゼスチャーで止めるよう伝え、

 急いで馬車まで戻ってささささっと転移テントを設置した!


(僕が挟まる事で凄いスムーズに設置できたらしい)


 そしてリア先生が中を確認、

 砂漠の廃墟を経由してアッサムポッサムまで繋がったようで、

 総勢51名の助っ人がずらずらと出てきた!


「ミストくん、皆さんに指示を」

「はい、えっと、みんな、みんなで住民やナスタン軍を、助けよーう!」

「んもう、後は私が説明します!」


 お飾りリーダーはつらいよ

  だめ貴族だもの。 ミスト

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