第226話 いざ南進、そして僕らが見たものは
「では行って参ります、数日かかりますが到着し次第、転移テントを設置しますから」
「「「「「はいっ」」」」」
翌朝、ポークレットファミリー新リーダーの僕が、
あらためて待機援軍組の51人に告げると45人の衛兵、騎士さんたちが敬礼してくれた、
あとおまけにマジカルリスタートの皆さんまで……嬉しいよ。
「ほら、砂漠の民の皆さんも」
ソフィーさんの言う通り、
これからナスタへ行くと知っている褐色の皆さんも朝早いのにお見送りしてくれている、
孤児院の子たちまで眠そうにして……思わず手を振って応える。
「行ってきまーっす!」
今回も馬車は三台体制だ、
先頭はさっき到着したばかりの濃い顔男性モーリィさんが手綱を引き、
中は援軍を要請に来たアルアカさんが乗っていてあとはリア先生キリィさんモリィさん。
「方向には自信があります、どうかナスタンをお救い下さい!」
真ん中の馬車はヴァルキュリア騎士団から美声のカテリナさんが引手で
乗り込むのは僕とソフィーさんベルルちゃん、昨夜一緒に寝た三人だ。
「ミストくんの初リーダー出陣式ね」
「わたくしどもも力添え致しますわ」
最後の馬車は転移テントとかアイテム袋とか乗せた荷物運搬で、
運転はお尻が安産型のヴェラさんだ、ヴァルキュリア騎士団の大きい馬担当だとか。
(さあ、アッサムポッサムを出るぞ)
僕が『風の小僧』とかいう銀色の円形笛を拭くと
都市を取り囲んでいた砂嵐に目の前だけ穴が開く、
その先をベルルちゃんが窓から乗り出して魔法で道を作った!
「早速ですわ」
それに反応してか目の前から巨大ワームが砂の中から這い出てくる!
今度はソフィーさんが反対側の窓から杖を掲げて、無詠唱で光魔法の槍を放つ!!
「うわ、あっという間に串刺しだ!」
そしてベルルちゃんが光魔法の縄でワームを解体し、
魔石を捕り出しては光魔法を注ぎ込み浄化完了、
作った道の最先端に埋めて舗装し、さらにそこから先の道を魔法で作る……これの繰り返しだ。
(僕の仕事は、雑談に参加する事くらいなんだよね……)
と思っていたが、進んでいくうちにあまりにワームの大群が激しくなってきたら、
僕が風の小僧を吹いてワームの援軍を防ぐ、という仕事を与えてもらった、現に何匹か引き返して行く。
「ひょっとして、こっち側の方がワームの巣窟なんでしょうか」
「おそらくどこかにワームダンジョンがあるのでしょう」
「将来的に攻略候補ですわね」
(この大きさのワームが住んでいるダンジョンとか、どれだけ大きいんだ……)
そう思いながらどんどんどんどん道を南に作っていく、
一度作ると道の上は安全なためいつでも引き返せるが、
ヨンスタに着くまで休みはしても戻りはしない予定だ、道でも間違えない限り。
「そういえば途中でワームに突破されて滅びた街があるようです」
「アルアカさんによれば中央付近にまだ結界が生きているエリアがあるようですわ」
こうして二日半ほど進んだ所で弱い砂の竜巻を見つけた、
弱いといってもとても近づけないし中を窺い知ることができない。
「ミストくん、笛を」
「あっ、はい」
風の小僧を吹くと竜巻が治まり、
中に廃墟の街が現れた、中央に比較的マシな、石造りの小屋が見える。
「中間地点にできますね、ここに転移テントを」
「待って、中に誰かいます」
中を見ると……砂漠の民では無い感じの肌の兵士だ、
これはどちらかというと……
「これ、アルアカさんのお仲間かな?」
「いらっしゃいましたわ」
遅れてやってきたアルアカさんが覗く。
「これは……敵だ、ナッスタ軍の兵隊だ」
躊躇なく中に入る、
なぜなら……もうすでに、事切れていた、
僕は顔をそむけながら聞く。
「アルアカさんを追ってきたんでしょうか」
「おそらくそうだろう、この笛はナッスタ軍から奪った物だからな」
首から風の小僧をぶら下げていた。
「他に兵士はいないようです」
ソフィーさんが一応、見回ってくれたみたいだ。
アルアカさんが真剣な表情で考え込む。
「これは……どっちなんだ」
「どっち、というと」
「ヨンスタから包囲している軍が敗れて逃げてきたのか、それとも」
「それとも……?!」
「ヨンスタをすでに陥落して、私を追って来たかだ」
うん、嫌な予感しかしない。
「あら、普通にヤスタから来た可能性もありますわ?」
「方向的に疑わしい、もちろん最初からこの場所を知っていて遠回りした可能性も無くはないが」
そう言うアルアカさんは少し青ざめていた。
「と、とにかく、ヨンスタ包囲中に膠着状態で、余った兵士が追ってきたのかも知れませんし」
「奴らは多人数で一気に攻めるタイプだ、考えにくい」
話を聞いていたリア先生が遺体を持ち上げる、勇気あるなあ。
「とりあえず所持品検査だ、あとここに中間の転移テントだな」
それを聞いてソフィーさんベルルちゃんが準備を始める。
「中間休憩所として使用できるくらいには、ここを修復致しましょう」
「結界も張りなおしますわ、ミスト様もご協力を」
「えっなんで? って僕の無属性魔法が力を増大させるんだっけ」
(僕も立派な自由教の魔法使いだった、すっかり忘れてたよ)
こうして敵兵(死体)の調査、
廃墟村の最低限の修復、強い結界と転移テント設置など、
一通りの拠点作りを終えた後、夕方になったがさらに進む事になった。
「ええっと、宿泊所を作って一晩泊まってみては」
「転移テントで戻れるので、泊まるならアッサムポッサムに戻れば良いかと」
「わたくしはリーダーのミスト様に従いますが、アルアカさんが」
「すまない、一刻も早くヨンスタへ行きたい、どうなっているか不安だ、私だけ生き残っても意味は無い」
「必死ですね、わかりました、そこまで言うのであれば」
といった感じで死体を弔ったのち、さらに南下を始めた。
(今年中に到着したいし)
そう、年が終わるのが早いか、
ヨンスタに着くのが早いかといった感じで、
どんどんどんどん南下し道を作り、
アッサムポッサムを出て六日が過ぎた夕方、
ついに、ついに砂漠の終着が見えた!
「長かったー、やっと緑色が見えた」
「ミストくん、それは良いんだけれど」
「街が見えますわ、でも、何だか様子がおかしいですわ?」
近づくと見えてくる状況、
そこで僕は最悪の景色を見る事となった、
その先にあった街は……もくもくと煙を上げていた!
(あー、これは……)
先頭の馬車からアルアカさんの叫ぶ声が聞こえる。
「ヨンスタが……ヨンスタが、炎上している!!」
間一髪、間に合わなかった予感!
だめ貴族だもの。 ミスト
第七章へ続く。
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