第221話 国王陛下を交えての作戦会議
国王陛下の両隣にはソフィーさんとベルルちゃん、
そしてリア先生が頭を下げながら陛下から書類の束を受け取った。
「ミスト、そこに座ってサインしろ」
「は、はい」
一段低いテーブルの椅子に座り、
重ねられた書類を一枚一枚チェックする、
ソフィーさんを見ると大丈夫ですよって感じで頷いてくれた。
(すでに検閲済みか)
という事で遠慮なくサインしていく。
「ミストくん書きながら聞いて下さい」
「あっ、はい」
「まず今書いているのは辺境伯関連の手続きですが、正式な就任は年明け初日です」
「つまり来年と同時ですか」
「そうですね、今年の内はまだ伯爵です」
とはいってもダンスパーティーではみんなすでに僕を公爵級辺境伯として扱っていた訳で、
そのせいであんな面倒くさい事に、っていま心の中でぐちっていても始まらないか、陛下の前だし。
「確認いたしますわ」
ベルルちゃんが書いた傍からチェックしてくれる、
手を動かしつつもベルルちゃんの表情を眺める……
女神マルシー様にあんな事言われちゃったからね、ベルルちゃんが悪魔に、かぁ。
「ミスト様、何かこのベルルめに?」
「あ、ううん、その、今日もかわいいなあって」
「今は大切な書類作業中ですわ」
しまった、あいかわらず僕はだめ貴族だぁ。
「なんだ、仕事中はいつもそんな感じなのか?!」
うわ、国王陛下に突っ込ませてしまった!!
「い、いえこれは」
「ミスト様は緊張のあまりこうなってしまったのですわ」
「ミストくん、サ・イ・ン」
「は、はいいいいぃぃ」
「ミスト、書き終わったら南下のための会議だ」
(とりあえず今は真面目モードにきっちり切り替えないと)
こうして中身をろくに読まない(読めない)まま、
全ての書類をサインし終えてあらためて国王陛下の方を向く。
「ここからは作戦会議だが不敬は無い、安心して喋れ」
「は、はいっ!!」
(逆にここまでは不敬があったら首が飛んだのかも、危ない危ない)
ソフィーさんが砂漠の国のさらに南が描かれた地図を広げる。
「ええっと、ナスタですよね」
「ええ、ここは国の領土が内部で三分割されていて、
北がナスタをナッスタと呼ぶ地域、ナスタの首都イチスタと、
砂漠の国を牛耳っていた悪のワーム王がよく取引していたヤスタという都市があります」
「調べた結果、岩塩などをアイテム袋へ詰めて、よく売りに行っていたそうですわ」
なるほど、じゃあその供給が無くなったのならこっちの異変に気付いていそうだ。
「南西がナスタをナスタンと呼ぶ、三つのうち一番狭い地域で、
その最大都市ヨンスタがこちらです、ここアッサムポッサムから直線距離ですと、
ヤスタもヨンスタも同じくらいの距離になります」
「ですわ、それでどちらへ行くべきか調べました結果……」
ここで国王陛下がドン、と机を叩いた!
「弱い方を助ける!」
おおー、と拍手するソフィーさんベルルちゃんリア先生、
後ろのキリィさんモリィさんまで! 僕もつられて拍手。
「なぜなら弱き者が助けを求めに来たからだ」
と、扉の外に一旦出たキリィさんがひとりの男性を連れてきた。
「あらためて名を申せ」
「はいっ、ナスタンの新首都となるヨンスタから参りました防衛隊副隊長アルアカと申しますっ!」
お、普通に共通語を喋ってる、良かった。
続いてソフィーさんが問いかける。
「アルアカさん、状況は?」
「はいっ、我がナスタン軍は裏切り者のナッスタ軍により包囲されつつあります、
我が軍に協力を要請できる国を探した結果、砂漠の国が開放されたと聞き、この笛で」
お、風の小僧だ、どうやって入手したか知らないがあれでアッサムポッサムに入れたのか。
そして話を聞き終えた国王陛下、ええっと名前の1パーツも思い出せないや、が口を開く。
「という事だ、助けを求めてきた弱者を救わなくてどうする」
「さ、さっすが国王陛下であります!!」
「それに弱い方を加勢して勝った方が、より感謝されるからな!」
それはいいけど、その兵隊はどこー?!
「ミストくん、そういう訳で腕の見せ所よ」
「ですわ、ミスト様が私たちを率いてヨンスタを助けに行くのですわ」
「ミストが居れば百人力だな、伯母上のかわりにリーダーを務めてもらおうか」
「えっ、何のリーダーですか?!」
「ポークレットファミリーのだ」
い、嫌な予感が!
「こ、国王陛下!」
「という訳だ、ミスト=ポークレット辺境伯よ、冒険者、勇者ミストとして、
ヨンスタの防衛ならびにナッスタ軍の迎撃を命ずる!」
「は、ははーーーっっ!!」
(て、え、えええええ?!)
無理ゲーの予感!
だめ貴族だもの。 ミスト
「あ、そういえば結局、アメリア先生は」
「ミストくんよく聞いて、アメリア先生はね」
「おめでたですわ」
「えっ」
「ミスト、よく頑張ってくれた、伯母上も涙を流して喜んでいたぞ」
え、え、えええええ?!
「ほう、勇者が勇者の子を産むか、素晴らしい事ではないか」
「こ、国王陛下、あ、ありがとうございます」
よ、喜んでいいんだよね?!
ちょっとパニックになってるけど僕!!
「そういう事情だミスト、伯母上不在の間はミストがリーダーだ」
「そ、そんなあ!!」
「ミストは勇者なのだから仕方がないだろう」
リア先生の言葉にみんな頷く、国王陛下まで!!
「ど、どうなっても知りませんよ」
「ミストくん、私達でどうにかします」
「ですわ、ミスト様は気を大きく持って下さいませ」
「ミストは父親になるのだからな」
「よし、男児の場合も女児の場合も、名を考えてやろう」
わーお国王陛下のサプライーズ!!
「あ、ありがとうございます!」
「よって相応の働き、期待しておるぞ」
上手く乗せられちゃった、てへてへ。
「ミストくん、最後に南西の地域ですが、ここは女帝が治める……」
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