第210話 オーク息子プルプルダービー

 昨日と同じ席に着く、うん、客層は昨日より荒々しい、

 もちろん貴婦人や親子連れも探せば居るが。


(よく見たらコース、楕円形なんだ)


 地下のオークパークは右回りだったのにこっちは左回りっぽい、

 ゴールの位置とスタート地点、あと冊子にあるコース図でそれがわかる、


「えっとミストくん、説明しますね」

「はいはい、あ、オークコイン! って一枚だけ?」


 しかもオークパークのより大きくて綺麗だ。


「国王陛下から特別に許可が出ました、レースは普通のお金を賭ける事ができます」

「ええっ、いいんですかあ?!」

「もちろん売り上げの四分の一を、国に税金として納めますが」


 たかっ!


「ええっと、じゃあ当たった時のそのオークの倍率、オッズだっけ、

 それが高い馬が大量に買われて、もしそれが勝ったら」

「最悪、破産しますね」

「それってまずいんじゃ」

「今日から正式オープンまではオッズは控えめにします」

「そうなんだ、ならいいけど」


 物とか投げられて人気のオークが妨害されないか心配だ、

 だからコースが客席から結構離れてるのか、警備兵もいっぱいだ、

 もちろん楕円形にする事で向こう正面ならびにこちら側のゴールまでを

 直線にするためっていうのもあるんだろうけれども、

 その分コーナーがきついからオークこけたりしないか心配だ。


「ただ、それも完璧ではないので、メインレースのみ、

 このゴールデンオークコインでオッズを変動制にします」

「と、いうことは」

「今日は試験販売なのでひとりにつき一枚しか買えませんが、金貨一枚でこれを買っていただきます」

「ふむふむ」

「そしてこのゴールデンオークコインで勝つ馬を一頭だけ選んで、メインレースのオーク券を買ってもらいます」


 オークコインで番号の掛札を買うシステムはオークパークのレース場と同じか。


「で、当たった時の倍率は?」

「売れたオークコインを、一枚銀貨七十五枚として計算して集計します」

「あ、税金が引かれた額だ」

「はい、そして全ての金額を、当たったオーク券で均等に山分けです」

「じゃあ最終的なオッズは終わってから、いや、オーク券の販売を締め切ってからでないとわからないのか」


 でもこれなら税金があるから国に損は無いのか、あれ?


「国に税金払うとして、残り全部当たった人に分けたら、コロシアムの、いや、僕らの儲けは?」

「入場料で儲けています、あとは正式オープンまで毎週行うので売り上げを見て、足りなければ考えます」


 ここで真後ろにまたいつのまにか座っていたサリーさんが話に入ってきた!


「その、売り上げが好調なら、税金25%のうち5%をフォレチトンが頂くという事も可能になるでしょうし、

 それができないなら、いっそ税金を30%にして、それで5%をいただくという手もぉ」

「あ、サリーさんおはよう、知らなかったよ、第四位公爵家だったなんて」

「その、家はとっくに追い出されているので、触れないで下さい、サリーはサリーですからぁ……」


 触れちゃいけなかったのか。


「ミストくん、その事でメインレース前にお願いがあるの、それよりまずはこれを」

「あ、別の小冊子? 予想の冊子って二種類あるの? いや違う、これは……」

「昨夜遅く、ベルルちゃんと作った『十二公爵家』の紹介冊子です」

「わたくしどもの描いた似顔絵付きですわ」

「あ、ほんとだ! って最初は国王陛下の名前からか」


 表紙も国王陛下の似顔絵だし。


「後半にはあまり外部に出ない十三位から二十四位までも書いてあります」

「おまけで二十五位以下と公爵扱いの辺境伯、公爵候補の侯爵も少し載っていますわ」

「あれ? 確か二十五位以下の公爵って非公認、非公式なんじゃなかったっけ」

「ミストくん、どういうこと? あ、勘違いしています、非公式なのは順位の事です」

「そうですわ、二十五位より下の順位はありませんことよ、ただ暗黙の了解的にはあるようですわ」


 なんとなくの序列が二十五位以下にもあるのか、

 もしくはお城の中でだけすでに決めてありそうだけれど。


「って、なんで裏表紙のイラストが『肉のディスティネイション先輩』なんですか!」


 魔除けかな?


「今日明日、初めて見る顔があるかもしれません、それを見て覚えて下さい」

「ですわ、くれぐれも本人を前にしてパラパラ、などという失礼はやめてくださいまし」

「う、うん、わかった、あれ?コースに丸太が運び込まれてる」


 あと網とか、カーブ曲がった直線入ってすぐにはパンが吊るしてある、

 そして僕らの目の前には特に太くて大きい丸太が三連で! すごいなこれ。


「第1レースの準備ですね」

「最初は障害レース未勝利戦ですわ」

「ちなみにソフィーさんやベルルちゃんも地下のオークレース場はよく行ったの?」

「ソフィー杯をすでに開催しました」「ベルル杯もですわ」

「い、いつのまに……連れて行ってくれても良かったのに」


 行くどころか主催かよっていう。

 と、そこへ場内に音響装置が響いた!


『あーあー、おーはようござまーーす!』



(あ、聞いた事のない声だ!)


「本日の司会、実況、すなわち天の声を務めさせていただきます、

 赤い眼鏡がトレードマーク、これでも不毛なA級冒険者、サトリョッタと申します!」


 どんな眼鏡だろう、アメリア先生が以前してたみたいな面白眼鏡かな?

 職業は剣士か僧侶かはたまた遊び人か、挨拶しにきてないな、冒険者だからいいのか、

 昨日実況してくれたザッキーさんとタッシバさんもそういや直接はまだ会ってないし。


「フォレチトン・アメリア・コロシアムのプレオープン二日目となります、

 オークレース全12レースを実況させていただきますのでよろしくお願い致しますと!」


 相方はいないのか、大変そうだ。


「さっそく第1レース、障害競走未勝利戦に登場するオーク十四匹が入場して参りました!」


 おお、相変わらずでかいし意外と速い、そして腹肉プルプルしている。


「ミストくん、今日のお小遣いよ」

「あ、銀貨十一枚も!」

「メイン以外のレース、1レースにつき一枚使って下さい」

「ですわ、お客様のお金を使い過ぎないように1度に買えるのはメイン以外は銀貨一枚ですわ」

「そしてメインレースではゴールデンオークコインで買うと」


 金貨一枚なら買えないお客さんも居るのかな?

 メインまでに儲けてそれで買うぜ! ってお客さんも居そうだけれど。


「はいミストくん、双眼鏡」

「あ、ありがとう、ええっと」

 

 入ってきたオークがよく見える、

 腹肉の波打つ感じまで見えちゃう!

 そんなプルプルを見てても仕方ないや、ええっと……

 

(昨日戦った舞台のまわりでウォーミングアップしてるな)


 数字の書かれた大きめの布を前後につけている、

 胸と背中に……手元の予想冊子と見て確認する、

 オッズが一番低いのは3番のオークシップか、一番人気って書いてある。


「あ、これオークに打ち合わせしてあるとかさすがに」

「そこまで知能の高い上位種ではありません、食用の最下種、普通のオークです」

「しかも未勝利が続くと普通にお肉になりますわ」


 うっわー残酷、

 オークたち、それわかって走っているのだろうか?


「よし、じゃあ僕はまず最初だし」

「当てに行かれますか?」

「わたくしもお付き合い致しますわ」

「一番オッズが高い、オークウララで!」


 100倍である。


(これで当たったらさすがにアレだよな)


 昨日の決勝が頭によぎる

  だめ貴族だもの。 ミスト

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