第182話 わらわらと変なのが集まってきた(一人目)

「今日は注意力散漫ね、どうしたのかしら」

「す、すみませんっ!」


 今日もコロシアムで剣の実戦稽古、

 初動が全てだというのに後出しで全て負けているような状況だ。


「いいこと? 何があってもどんな目にあっても、いつも同じ動きが出来るのが一流よ」

「はい、でもいつも同じ動きなら見破られるんじゃ」

「屁理屈は言わないの!」


 剣ではなく素手でぽこりと頭を小突かれた、

 これさえ避けられないとは……僕の今は相当な状態だ。


(まだエスリンちゃんの、えげつない責めの後遺症がぁ)


 色々とショックだ、リア先生にあれを仕込まれたという事は、

 おそらくリア先生に、っていけないいけない、集中しないと!


「なんだ、大したことないじゃないか」


 やってきたのは格好の良い剣士、

 僕より五つか六つ年上だろうか、

 白い歯がきらーんって光りそうなイケメンだ。


「今は訓練中よ」

「これはこれは勇者アメリア様、申し遅れました、わたくしAクラス冒険者パーティー、

 その名も『ジェニュインストーン』のリーダー、ガルボナ=チャイムズベリーと申します」


(うわ、Aクラスか、すっげー!)


「冒険者が出入りして良い場所じゃないわ、周りを見なさい」

「ええ、同期が何人かいましたね、これでも二年ほど騎士団に居まして」

「今は関係ないでしょう?」「いえ予備隊登録は残っていますよ」


 あー急な戦争やスタンピードで人手が足りなくなったときに

 騎士団に呼ばれる契約をしている人の事だ、確か。


「君がミスト=ポークレット伯爵だね」

「はい、ええ、まあ」

「ちっとも伯爵らしくないのはわざとなのかな?」


 いや訓練中だし!


「急に爵位が上がったもので、つい」


 ついってなんだ、ついって! と自分の中で突っ込む。


「ふうん、そういう事か、いや、納得いったよ、良かった」


(何に納得して何が良かったんだー!)


「実はウチの実家も伯爵家でね、次男なんだが実家が何かあった時の事は兄と下の弟に任せて、

 騎士団を辞めた後は冒険者をやっているんだが、魔薬草事件で取り上げになった子爵家の領地を面倒みないかって言われてね」

「はあ」

「そろそろ学院時代の婚約者を迎えに行こうと思っていたら、国王陛下からその婚約者に『結婚しても良い』と宣言があったと聞いたんだ」


(あっ、察した)


「貴方でしたか、リア先生から学院時代三年間、ガン無視されていた婚約者のひとりって」

「おかしな情報だね、彼女は男性に対してウブな所があったから、照れて恥ずかしがっていた、それだけさ」

「聞いていた話と随分違いますね」「誰から聞いたんだい?」「リア先生、ご本人からですよ」


 アメリア先生も鼻で笑ってる、ガルボナとかいう自称婚約者には見えてないけれど。


「まあ、恥ずかしい事は言えなかったんだよ、それより、婚約者であるリアが騎士団長にまで登り詰めていたとは驚いたよ」

「それは僕も驚きました」

「僕は騎士爵を申請していてね、いや正しくは推薦してもらってるんだけれど、リアを嫁に迎えて男爵になろうと思っているんだ」


 確かにリア先生ほどの実績がある奥さんが来たら、

 領地を正式に貰ったら程なくして男爵くらいにはなれそうだ。


「冒険者活動はどうするんですか?」

「続けるよ、僕が治める予定の領地はダンジョンがみっつもあるんだ!」

「へーそれはすごーい」


 うちは十何個あるんだっけ?


「ジェニュインストーンのメンバーも来てくれるって約束してくれたんだ」

「それはそれはよかったですねー」

「調べたら君だってAランクパーティー『ポークレットファミリー』のメンバーじゃないか」

「えっ、そうなんですか?!」


 いつのまにAランクに!!


「やはりな」

「は、はあ」

「納得したよ、やっぱり君はそういうクチか」


 どういうクチ?!


「ガルボナ、貴方、勘違いしてるわね」


 ここでアメリア先生参戦!


「ほう、何の事でしょうか」

「ミスト伯爵の事をお飾り、名前だけ登録して他のメンバーの力だけでAランクに上がったと思っているようね」


 ぎくーり!

 そ、そうですが何か? って言っちゃいけないのか。


「彼に実力があると」

「ええ、ポーターとしてのね」


 笑いをこらえるガルボナ。


「ぷぷぷ、ポーターは確かにAランクパーティーともなれば必須ですが、

 ある程度経験や身軽さがあれば誰でもできますよ、それがパーティーの要だとでも」

「そうよ、彼が居なければポークレットファミリーは崩壊するわ」

「いや意味はわかりますよ、きっとその領主様のために金で、いや失礼、領主のために結成されたパーティーでしょうから」


 いま金でとか言ったな、

 お金でソフィーさんベルルちゃんキリィさんモリィさんアメリア先生リア先生が集められるならどんな大金でも安いもんだ、

 それこそ白金貨十万枚でも釣り合わない、それが全部僕のお嫁さんだったり愛人だったりしてるからこそだ、って自慢になるのかコレ。


「そこまで侮辱するなら私が相手になるわ」

「いえいえ、今日はご挨拶までですよ、リアの結婚相手を決めるトーナメントのための」

「コロシアム、今は騎士団の訓練場に入ってきた予備隊員なら、リアや国王陛下に権限を借りている私の命令は絶対よ」


 剣を抜いて構えたアメリア先生、

 やれやれといった感じで剣を抜くガルボナ。


「怪我しても知りませんよ、良いんですか、名誉職で食っている女勇者様がこんな所で失態を演じて」

「これでも誇りある冒険者『ポークレットファミリー』のリーダーよ」

「はいはい、こっちも『ジェニュインストーン』のリーダーですが、リーダーの意味が違いますから」


 アメリア先生までお飾りだと思っているのかコイツは!


「……私まで侮辱するつもり?」

「いえ、我が『ジェニュインストーン』は実力でAクラスまで上がったというだけの話です」

「そこまで言うのであれば『ポークレットファミリー』としては引き下がれないわね」

「ではこうしましょう、正式な決闘です、もしこのリーダー同士の一騎打ちでわたくしが勝てば、

 そちらのパーティーのひとり、剣士リアさんをいただきます、よろしいですね?」

「よほどの自信のようね、なら貴方が負けたら誰を差し出すの? 貴方自身かしら?」

 

 い、いらない! いらなさ過ぎる!

 貰っても浄化済みダンジョンをくまなく雑巾がけさせるくらいしかなさそうだ。


「うちのパーティーに元聖教会の聖女がいまして、凄いでしょう聖女が冒険者をやっているんですよ!」


 あ、こいつリア先生の情報しか知らないのか。


「その方をいただけるのかしら?」

「私に勝てばね、良い条件でしょう」

「だそうよ、領主様、いかがなさいますか?」

「うーん、その聖女様はどういった方で」

「胸が凄く大きいですよ」「乗った!!」


 即答である。


(しまったー! まあいいや、魔法研究所の子のパーティーに入れる手もあるし)


「証人はいま、まわりで見ている騎士団員よ、それでいいわね?」

「もちろんですが、負けたからって見てないフリはしないで下さいよ」

「騎士団員がどういう者か、昔居た貴方ならわかるでしょう?」


 いつのまにかわらわらと見学者が集まっていた、全員騎士団員か。


「じゃ、君、合図して?」

「あ、僕ですか」


 仕方ないなあ、でも本当に強かったときの見極めのためにも、

 ガルボナの戦い方は見ておいた方が良いな、そのためにアメリア先生が決闘を?!

 負けても僕が本戦で勝って取り戻せば良いって事か、よーし、ちゃんと見よう!


「それでは……はじめ!!」


 結果、あったけなくアメリア先生が一本取った。


「くそう、もういっか……ぐふう!」


 あー今度は容赦なく剣で殴ってる、

 斬るんじゃなく殴ってる、殴打している、

 これなら痛くても怪我しても死ぬ事は無いからね、しばくとはこういう事か。


「ま、まて、ままま待て! 離れてもう一回!」

「……離れたわ」

「はい、はじめ!」

「うわ! ちょっとまだ、じゅんび……ぐはあっ!!」


 容赦なく、誰の目にも明らかなくらい完勝した。


「……大して汗かく暇もなかったわ、貴方、本当にAクラスパーティー?」

「う、ううぅぅぅ……」

「これじゃあパーティー名を『インチキストーン』にした方が良いわね」

「ううっ、うううううぅぅ……うわあああぁああああああああん!!!」


 あ、泣きながら逃げた!


「どうしようもないわね」

「うん、変な人だった」

「あんなので本当に領主に、独立した貴族になるつもりかしらね」


 ぎくり


(それ言ったら僕も……)


 ちょっと他人事とは思えない

  だめ貴族だもの。  ミスト

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