第172話 青空就任パーティーは誰でも参加可能です

「……という訳で両教会の皆さまとは今後ともこのモラベスクにおきましては、

 一緒に共存しあっていきたいとの決意を胸に、自由教教祖としての挨拶を終わらせていただきます」


 書かれたメモを読み終えるとぱちぱち中央の細長いエリアから拍手が聞こえる、

 左右の大教会、聖教会エリアは知り合いしか手を叩いてくれない、これが黙認というやつか。


(でもまあ、仕方ないよね、異教徒だもの)


 壇上から降りると女勇者アメリア先生が皆に言う。


「さあ、ここからは宴だ、全てフォレチトンで用意した、

 各宗教に適した処理をした料理だ、遠慮なく食べるが良い」


 フォレチトンから来た各教会の僧侶が各テーブルに料理を運ぶ、

 大教会は大教会で、聖教会は聖教会で各エリア用意し宴が始まる。


「では皆さん、かんぱ~い」


 お酒より水率の多い乾杯を僕の合図ではじめ、

 いざ青空パーティーがはじまるとそれなりに賑わっている、

 もちろん自分たちの教会のエリアのみで。


(まあ、こういうのは参加した皆さんが楽しんでいただければ)


 外でこういう形での宴会は珍しいというか多分モラベスク史上初だと思われるので、

 それはそれで盛り上がっている感じ、僕が変につつかなければ。


「国王陛下はもうとっくに帰ったよね、これは」

「ええ、相変わらず最初にワインを飲んで、肩を叩いて帰られましたね」

「うーん、あれについて聞きたかったんだけれど」


 今回は、一言も無かったなぁ。


「ミスト様、あれって何ですの?」

「いや、ミストシティの隣に四倍の大穴開けたよね」

「ネオミストシティの事ですの?」

「その名前は却下! あの時、国王陛下が僕たちを捕まえようとしたのって」

「ミストくん、あれは気にしないでください」「ですわ」


 あれ、急に奥さん揃ってちょいマジモードになった。


「いやでも、あれって本気も混じっていた気が今更して、それにどこまで……」

「ミストくんには関係のない事くらいに思って下さい」

「そうですわ、ミスト様はもう記憶から無くしても良い、他愛のない出来事ですわ」

「そ、そうなんだ、そうなの?!」

「どうしても詳細を知りたいのでしたら十年後に」「覚えていたらですわ、でも忘れて下さいませ」


 そこまで言うのであれば、まあいいか。


「相変わらず仲が良さそうじゃの」

「あ! おじぃ……大教会のミゲル司教様! この間はどうも」

「どの間じゃ、そんな事より伯爵就任おめでとうと言ってやろう」


 おお、普通に褒められたっぽい!


「ありがとうごます、式典は」

「窓からちらっと見せてもらった、ちらっと、な」

「は、はい、お恥ずかしい限りです」


 そういえば、あの時にこのお爺さんに助けてもらったような。


「それであの、フォレチトンでの、国王陛下が……」

「陛下はもう気にしておらん、忘れよ」

「は、はいいぃぃぃ」

「ソフィーよ、何も無かった、じゃからあの権利もまだ有効じゃ」

「……ありがとうございます」


 あっ、あの一度だけミンスラー家が願いを叶えてくれるという、あれか!


「よって戻りたくなったら権利を使っていつでも戻るが良い、ではの」

「戻るつもりはありませんから、大教会のミゲル司祭様♪」


 あー急に他人行儀になっちゃった、のかな?


「ミスト様」


 声に振り返ると今度はベルルちゃんのお父さんとお爺さんが!


(あー面倒くさい)



 ……とまあ二時間半くらい大教会聖教会あと自由教会の宴が終わり、

 これでひとまず『普通の』僕のパーティーは終了で、一旦、来賓の皆さんが帰る。

 そのあとテーブルが綺麗にされ、あらためて料理が並べられ、やってきたのは……!!


「みんな良く来たね、今日はご馳走だから、お腹いっぱい食べてね」

「はーーーい」「すっげー」「おいしそー」「ほんとにいいの?」「なにこれ初めて見る肉だ!」


 両教会の孤児院大集合だ。


「みんな中途半端な時間で悪いけど、お腹いっぱいになるまで食べてもいいからね!」


 僕の言葉にみんな嬉しそうだ、

 孤児のみんなも、それを世話する職員の皆さんも。


「じゃあ席に着いたら乾杯するよ!」


 そんな言葉も関係なくすでに食べ始めている子がちらほら

  だめ貴族だもの。 ミスト



 こうしてモラベスクの孤児全員にお腹いっぱいになってもらった、

 大教会聖教会関係なく、おまけに孤児院のランクみたいなものなども関係なく。

 みんな大満足で笑顔で帰っていった、起き上がれない病気の子も笑顔で手を振って運ばれて帰る。


「あー終わった、やって良かったー」

「これでひとつ、モラベスクに伝説を作りましたね」

「さすがミスト様ですわ、誰にも真似できませんの」

「ソフィーさんベルルちゃんが調整してくれたおかげだよ、ありがとう」

「そんなことないです」「ミスト様だからですわ」


 もう夕方だ、帰って今度はフォレチトンの孤児院にご馳走を振る舞おう。


「じゃ、帰ろうか」

「まだですよミストくん」

「ミスト様、大事な用件が」


 えっ、何だろう。


「あと何があるの?」

「帰りも大教会に挨拶して行って下さい」

「聖教会もですわ、そして『最後に聖教会へお礼の挨拶に来ました』と言って下さいまし」

「ミストくん、わかってると思うけど大教会にも『最後に大教会へご挨拶を』って言うのよ」

「ええっと、僕はモラベスクにおいて、大教会へは『最初も最後も大教会』に、聖教会には『最初も最後も聖教会』に

 挨拶して帰ったっていう事にすればいいんだよね、真偽は別にして」「はいそうです」「そうですわ」


(MECCHA・MEN・DO・KU・SEEEEEEEEEEEEE!!!!!)

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