第165話 だめ領主は空気が読めない
ズッガーーーーーン!!!
凄まじい爆音と衝撃、
しかし向かってくる風や木や岩はソフィーさんベルルちゃんが魔法障壁で防ぐ!
あれだけの大魔法を放ってもなお残したありったけの魔力で国王やみんなを護っている、
ちなみにミストシティは前もって告知済みで人はいなく、もちろんそちらも防御魔法が張られている。
(フォレチトン街の方にも連絡は行ってるから、孤児院の子が少しびっくりする程度かな)
マンタ爺ちゃんがどうだろう帰りに聞いてみよう、と思いながら崖を見下ろす、
見事なまでの大穴、奥の方で湖を少し、いやかなり広げてしまったらしく水が流れてきている、
これはこれで新たな川というか下水ルートか何かができるはずだ、あと温泉も山肌から湧き出ている。
(削れたダンジョンもいくつか見える、これもまた何かに使えるな)
と一通り見ていると後ろでぱちぱちと拍手が聞こえた。
「これほどまでの威力とはいや、恐れ入った」
立ち上がった国王陛下だ、
僕もミストシティの四倍以上の大穴に足がすくむ、
でもこれで更なる大きな街どころかリゾート施設も造れるだろう。
(さあ、この後は少し休んでミストシティだっけ、いやミストシティから王都へ戻って休むんだっけ?)
今の爆発で段取りも頭から吹き飛んだがソフィーさんベルルちゃんが覚えて……
「だがこれ程の魔力、わが国には危険すぎる、今すぐこの者どもを捕らえ、地下牢へ幽閉せよ!」
(……え?)
と思ったら騎士団の男性たちに取り囲まれる!
いやいやいや、こうなる心配をソフィーさんベルルちゃんが言ってはいたが、
ちゃんと忠誠心を見せれば問題ないはずだったのでは!
「ソフィーさん? ベルルちゃん?」
僕の問いかけに無反応、駄目だ、魔力の使い過ぎでぐったりしている、
ビッグバンメテオ自体の魔力は全てを使い切るものではなかったが、
その後の王様たちを護る障壁でどうやら使い果たしたっぽい、これはまずい!
「えっと、国王陛下」
騎士団に剣を向けられながらも僕はソフィーさんベルルちゃんの手を離し前で出る、
リア先生アメリア先生もヴァルキュリア騎士団の女性陣も動かないっていうか、
僕らが剣で囲まれているせいで動けない感じだ、うん、ここは僕しかない、膝を着こう。
「国王陛下、何か不敬があればお詫びします、どう考えても全て私のせいです、
ソフィーさんもベルルちゃんも、僕の妻です、妻の力が、忠誠心が国王陛下の心に届かなかったのであれば、
それは全て私の責任です、どうか、どうかこの私だけを罰して下さい、僕の首で妻が助かるのなら」
……これでスパッと首が跳ねられたら、それはそれで仕方が無い、
僕は冷静というより怖がったり泣いたり後悔したりは死んでからにしようと腹を決めた、
そして今、僕がするべき事は一分一秒でも時間稼ぎをする事、なぜかそうすれば少なくともふたりの命は助かる気が……
(話を続けられるだけ続けよう、首が斬られるまで)
「ただ、ただひとりだけ、最初の婚約者であるエスリンちゃんだけはもう関係ないので、
罰するような事はしないでください、遺言のようなものです、エスリンちゃんには結局、僕は何も……」
「もうよい、何も殺すとは決めてはおらん、だが危険すぎる、さあこの三人を捕らえよ」
と、僕に剣を向けていた騎士団が一転して外へ、いえ国王の方向へ矛先を変えた、
さらに見ていただけのヴァルキュリア騎士団も、そして剣を抜くリア先生とアメリア先生。
「国王陛下、私の夫となるミスト=ポークレットは至らない所ばかりですが、それでも私の愛する夫です」
「ふふ、陛下、女勇者と国王陛下の剣の稽古ができるなんて嬉しく思いますわ」
あ、あきらかにみんな僕の側についている、かな?
「……宰相、ターナーよ、構わん、まずはミスト=ポークレットをひっ捕らえよ」
「陛下、申し上げにくいのですが、私も姪の病気を治していただきまして」
と、リア先生の後ろへ。
「そうか、ではミゲル司教」
爺ちゃんだ爺ちゃんだ、
マンタ爺ちゃんみたいな僕の精神的なお爺ちゃんじゃなく、
ソフィーさんの祖父であり僕の義理の爺ちゃんで大教会のお偉いさんだ。
「陛下、そのあたりでもうよろしいのではありませぬか、ミスト殿の足が震えておりますぞ」
あ、ほんとだ、いつのまに!
「司教……」
「もうここまでで十分でしょう、これ以上の芝居はこのジジイには身体に悪くての、芝居で相討ちなどまっぴらでな」
あ、国王陛下に結構失礼な言い方を!
ソフィーさんのお父さんはめっちゃ怖い顔してるし。
「……ふはは、ぶははははは!!」
国王陛下が、笑った?!
「いやはや失礼、とんだ茶番であったな」
「そ、それじゃあ」
「許せ、それだけ畏怖を感じる魔法だったと表現したかったまでだ」
演技か、良かったーーーーー!!
「しかしミスト=ポークレット、貴殿の器はよくわかった」
「い、いえそんな、もったいない」
「いや、小さく脆い器だったという事だ、男なら剣くらい抜け」
あ、怒られちゃった。
「さて、リアよ、ミストシティを案内してもらおうか」
「はっ、皆よ、崩れて危険な場所は無いか先に見て回れ」
みんな剣を収めた、良かった、集団演劇は終わったらしい。
「ソフィーさん、ベルルちゃん!」
魔法がきつかったのか、まだ顔色が悪そうだ。
「すみませんミストくん、少し戻って休みましょう」
「はいですわ、馬車に乗って教会まで戻りますの」
「ええっとまずはソフィーさんから僕につかまって」
僕も魔力を消費したはずなんだけどな、と思いながら馬車へ、
ベルルちゃんはキリィさんモリィさんが支えてくれている、
あ、そういえばこのアサシンメイド、寸劇が始るといつのまにか姿が消えてたけど、どこにいたんだろ?
(ひょっとして僕が首を斬られそうになったら、瞬時に助けるために隠れていたりして)
そんな小説の読み過ぎみたいな事を考えながら、とりあえず馬車に乗る僕たちであった。
(……本当に、お芝居、どっきりだったんだよね……?)
実際の所の空気が読めない
だめ貴族だもの。 ミスト
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。