第162話 根回しには対価が必要
後日、魔力が高く共通語の会得がそれなりに出来ている者を
かいつまんでモラベスクの自由教会へと連れてきた、なんとか女性三人。
あ、先日の会議の人達ではありませんので、あしからず。 ほぼ新顔。
「辛くなったらいつでも砂漠の国へ帰れるけど、黙っては行かないでね」
「ワカッテマス」「リョウカイ」「アイーン」
こっちでの仕事は共通語をもっと学んでもらう事からはじまる、
言葉が通じないというのは意外と辛いもので、
ストレスでやられる獣人も多いとはソフィーさん談だ。
(文化も違うからね、でも極端に言えば砂漠まで食事や寝に戻れるし)
衣食住の環境はこっちの方が良くてもまるっきり知らない場所だ、
馴染めずあっさりみんな帰るなんて可能性は、なくはない。
「問題があったら遠慮なく言ってね」
「リョウカイ」「アイーン」「アイーン」
とは言うもののそれを伝える語彙力だ、
どうしてもの時はあの最近は怪しくない通訳さんに頼めば良いが、
砂漠に来るこっち側の人間、特にお城関係の方々の通訳で休む暇も無いらしい。
(その負担軽減のためでもあるんだけれどな)
でもソフィーさんが意外と会話できちゃってたように、
こっちが砂漠側の言語を理解するのもそこまで時間は……
「ミストくん、いいかしら」
「あ、ソフィーさん! ベルルちゃんも」
「ミスト様、報告しなけばならない事が出来ましたわ」
何だろう、ふたりはここモラベスクや王都で、
自由教会を認めてもらうための根回しに奔走していたはずなんだけれども。
「一応、ここに居る皆さんで会議いたしましょう」
これも一応、共通語の勉強になるのかな?
元々聖教会だったこの建物はすでに女神像がすげ換えられていて、
ベルルちゃんが魔石を元に造ってくれた女神マルシー像が飾られている。
(あんまり派手なの造って表に置くと盗まれそうだ)
集会所に集まってみんな座る、
まずは教祖の僕が開会の宣言だ。
「えーでは只今からモラベスクでの自由教第一回集会を行います」
ぱちぱちぱちと拍手、
教会の集会ってこんなんでいいんだっけ?
「それではまずソフィーさんからの報告です」
見ればソフィーさんもベルルちゃんも自由教会の聖女服を着ている、
薄いピンクはちょっと異質だが、砂漠の教会っぽくって僕は好きだ。
「まず、自由教会の存在は正式にモラベスク宗教会から許可をいただきました、
一応、代表者の採決でしたが大教会、聖教会とも賛成も反対もしませんでした」
「えっ、それで許可下りたんだ」
「はい、異論が無かった訳ですから」
積極的に黙認ってこういう事なのかな?
「ただし、反対しない理由というのも各教会には必要です、
いくら複数の方が見た『天啓』といえど夢は夢ですので」
物的証拠が無いっていうやつか。
「そこで根回しにあたって取引、対価を支払う事となりました」
「え、白金貨?!」
「いえ、お布施にはそれほど困っていませんから」
ですよねー、多分そっちよりメンツが大切かな。
「そこでミストくんには本当に申し訳ないのですが」
「え、なになに」
「大教会に転移テントを提供する事となりました」
なんだ、そんなことか。
「いくつくらい?」
「まず手始めに王都の大教会とモラベスクの大教会、あとフォレチトンの大教会を繋げます」
「ああ、ミストシティの合体教会じゃなくて噴水を取り囲んでいる方の」
僕のお仕置ベッドがある周りの。
「少し計画が狂う事になりますが、致し方ありません」
「え、計画って?」
「フォレチトンは宗教で迫害された人、困った方々の駆け込み先にしたかったのです」
「あーそんなこと言ってたね聖女集会で」
「でも、追手が転移テントで易々と入ってくる事になります」
ひょっとしてフォレチトンに入口の街を作るのって、
そういう例えば大教会と聖教会別々のカップルが駆け落ちでウチに移住しに来たとき、
追手を入れさせないために、追い返すための関所にしたかったのかな、なら転移テントは致命的だ。
「最終的には国中の主要な街を全て大教会独自に繋げたいそうです、これは国王陛下の要望でもあります」
「なら仕方ないかあ」
王様は王様用のを持っててくれた方がむしろ助かるか。
「ですので砂漠の国から更なる南下はもう少し時間がかかりますね」
「どのくらい?」
「ミストくんの、いえ教祖様の、伯爵就任式が終わってしばらく後まで」
このしばらくっていうのがわかんないんだよなあ。
「転移テントはできるだけ秘密にしたかったんだよね」
「はい、ですので利用は大教会の、かなり上位の者に限る様、お願いしておきました」
「仕方ないか、これで自由教会を事実上、認めてもらえるのならば」
ここまで妥協しないといけないというより、
この程度の妥協で認めてもらえてありがたいと思わないとな。
「じゃあもう安心なんだ」
「そうですね、ただ、聖教会にはくれぐれも秘密にするようにと」
「あー大教会だけの特権にしたいんだ」
聖教会を色々と出し抜く手段にも使えるし。
「私からの、大教会に関する報告は以上です」
「ありがとう、しょうがないよね、じゃあ続いてベルルちゃん」
「はいですの」
ってベルルちゃんも報告あるんだ。
「ミスト様には大変、申し訳ないご報告ですわ」
「なんでしょうか」
「聖教会に転移テントを提供する事となりましたの」
そっちもかー!
「くれぐれも大教会には内緒で、との事ですわ」
「あははは、はぁ」
(考えている事はどっちも同じかぁ)
どっちにも内緒にしてると言い張って誤魔化そう
だめ貴族兼だめ教祖だもの。 ミスト
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