第150話 そして悪は滅びた

「この俺が、この砂漠の王たる俺が、うおぉぉおおおお!!!」


ソフィーさんベルルちゃんの光魔法が敵を、

死の砂漠最大都市の首領、ワームみたいな顔した親玉を貫き倒す!

巨悪が滅びた瞬間である、長かった、ここまで最初の街を解放してから一月ちょっと、

間に二つの街を次々撃破といった感じで解放し、ついにラスボス退治に成功した、

僕もポーターとして大活躍した甲斐があったようだ。


「これで全て片付きましたね」

「めでたしめでたし、ですわ」


さすがに疲れきった様子で僕に抱きついてくる!


「ふたりとも、お疲れ様」


僕にできる最大の仕事は、こうやって労をねぎらうことくらいしかないけれど、

それでもこの聖女さまが喜んでくれるなら、本当に本気で喜んでもらえているなら、うん、それで良い。


「残党は我々ヴァルキュリア騎士団に任せてもらおう」

「もう刃向かう気力も無いでしょうけれどね」


というリア先生アメリア先生も城への突入から休まず頑張ってくれた、

さらにキリィさんモリィさん、さすがアサシンだけあって敵の罠にいち早く気付いてくれた、

ポークレットファミリー、本当に良いチームだと思う。


(これで砂漠の国も平和になるよね)


城から出ると解放された民が熱狂的に向かえてくれる、

ありがたいけれど疲れているのでさっさと休みたい、

いくら回復魔法があるとはいえ、戦い終えた直後に休息は必要だ。


「さあミストくん、怪我や病気の住民を治して回りましょう」

「これからが本当の始まりみたいなものですわ」

「えぇ……」


タフな聖女さまに付き合わされてまだまだ仕事はいっぱいのようだ。


(よし、とことんつきあうしかないな!)



夜になってようやく落ち着いた頃、

リア先生がやってきた、残党狩りが終わったのだろうか。


「言葉の通じるご老人が見つかった」


案内されて行くとお城の別館といった感じの離れ、

そこに寝かされていたのはもう、いつ寿命が尽きてもおかしくないようなお爺さんだった。

ソフィーさんがやさしく語りかける。


「ソフィーと申します、貴方のお名前は」

「……アズール」

「さぞかし魔力の高い方とお見受けしますが」


えっ、そうなの?!


「結界のために、生かされて、おる」

「貴方がこの強大な魔法結界の作り主なのですね?」

「われが死ねば、結界が、ほころびはじめる、そのために……」


あ、喋れるの疲れちゃったみたいだ。


「頷くだけで構いません、砂漠からこの国を護る結界を存続させるために、無理に生かされていたのですね?」


ゆっくり頷いた。


「アズールさん安心してください、結界はすでに張り直しました」

「!!」

「より強硬に、より長く持つ結界です、ですからもう、安心してください」


それを聞いて涙を流しはじめた。


「あぁ、これで、やっと、し……」


治癒魔法をかけるソフィーさんとベルルちゃん。


「せっかく平和になったんですから、もう少し」

「そうですわ、皆の喜んでいる顔を見ていただきたいですわ」

「あぁぁ、では、もう」


お水を飲ませてあげると安らいだ表情で落ち着いた。


「いまはここまでにしておきましょう」

「無理をさせてはいけませんわ」


外へ出るとため息をつく聖女さま。


「持って十日でしょうか」

「倒したワーム王の魔力で今まで持っていたようですわ」


ワーム王て!

そりゃあ似てたけれども。


「じゃあ、静かに休ませておくべきなのかな」

「そうですね、外を見せてはあげたいですが」

「二百五十歳くらいですわね、色々とお聞きしたい所でしたわ」


この国がこうなった原因とか知っていそうだけれど、

あの分ではどれだけ会話できるか、といった感じだ、

せめて最期は安らかに、平和を実感していってほしい。


「では食料の配布ですわ」

「あ、うん、あれ? ソフィーさん?」

「……今なら間に合うかも知れません」


何の事だろう?

結局、その日は転移テントでワーム王国もといアッサムポッサム国から出て行ったっきり戻って来なかった、

僕はベルルちゃんらと虐げられていた国民に食料を、

フォレチトンから駆けつけてくれた大教会聖教会の皆さんは健康状態の悪い国民を治療して夜が明けた。


(二時間くらいは眠れたかな)


多分、三万人くらいはいるぽいアッサムポッサム、

その中で、あのお爺さん以外にひとりだけ言葉が少し通じる女性が見つかった、

あのワーム王のお供でさらに南の国に行ったとき、

訳あって一ヶ月半ほど滞在し、そこで共通語を少し身につけたらしい。


「ミストです、貴女のお名前は」

「アダッマー、イイマス」

「ええと、知ってる言葉は」

「コンニチワ、サバクノクニカラキマシタ、オニイサン、イイオトコネ」

「あ、はい」


お世辞の言葉を知っているのか。


「オニイサン、マッサージ、イカガデスカ、イマナラ、ギンカ……」

「あ、もういいです、はい」


うん、どんな仕事に行っていたのかよくわかった。


「通訳は頼めますか?」

「チョットダケヨ、アナタモスキネ」

「うーん、じゃあ、お願いします」


って、なんで脱ごうとしてるの!


「キリィさん」

「はい」

「あとはよろしく」

「かしこまりました」


(まったく通じないよりもはマシかな)


というような事がありつつ、

朝になってからも食料配布、健康診断、残党狩りをし続けたお昼過ぎ、ソフィーさんが帰ってきた。


「さあ、お爺さんの所へ行きましょう」


僕とソフィーさん、ベルルちゃん、

あと古代遺跡調査員の所長さんとお付きの男性だ、

あのキャッキャウフフな眼鏡率多め研究員はいない、少し残念。


(お爺さん、寝てるのか起きてるのか、わからないな)


ソフィーさんがそっと近づくと目が少し開いた。


「これは、読めますか?」


顔の前に出したのは、あの古代遺跡で発見した古代文字だ。


「ここへ来し者、女神マルシーの加護がある者である」

「読めるんですね?!」


うお、これはすごい!


「あ、あ、あ」


お爺さんがゆっくり手を伸ばす、

何か伝えたい身振りでもあるのだろうか?

そう思ってその行き先に注目していると、

ソフィーさんの胸元まで伸び……!


むにゆっ


目を見開いてニッコリ笑顔のアズールじいさん!


(こんのスケベジジイがあああああ!!!)


正妻に目の前で手を出された

だめ貴族だもの。 ミスト

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