第133話 とりあえず答えてみた(三回目)

「……と、いう事で次は小さな成果を積み重ねて伯爵となるか、

 大きな偉業を成し遂げて辺境伯になるか、という目標になります」

「はい」

「ミスト様がどちらを狙うにせよ、行先はもうソフィーお姉様と決めてありますわ」

「はい」

「私も聞いた、ミスト、これは冒険者パーティー、

 ポークレットファミリーでの行動になりそうだぞ……おい泣くな」


 僕は居間での真面目な会議を、

 全裸で吊るされながら聞いていた……

 残念ながら当然の結果だ、相手は魔物だから浮気にならないと思ったのにぃ!


「私達は何もミストくんが夜の視察へ行った事を怒っている訳ではないのですよ?」

「そうですわ、黙って騙すような事をしたのが許せないのですわ」

「ご、ごめんよう、ごめんよう、それで、アレクスと、セスは」


 リア先生がひとつため息をついた。


「アレクス氏は婚約者のサーシャ嬢に絶賛お仕置され中だ、

 セス氏は独身といえどミストをたぶらかしたと言って良いからな、

 ティムしたラミア三匹に精力ポーションを飲ませ『ラミア漬け』の刑だ」


 何か恐ろしい事をされてるううう!!

 ごめんセス、アレクスも……グスン。


「ミストくん、何か意見はあるかしら?」

「ご、ごめんなさあああい」

「もうミスト様、そうではなくって」

「あ! ベルルちゃん、あれ使います、あれ!」

「何ですのあれって? あ、あれですわね、いま、降ろしますわ」


 ようやく床へ降ろしてもらって縄を解いてもらう、

 それくらい真面目な話だ、うん、なんとか切り抜けられた。


「ええっと、ベルルちゃん、そしてソフィーさんが僕を好きな理由ですが!」

「はいですの」

「それはきっと、ボランティアなのでしょう」

「……ミストくん、それはつまり?」

「貴族で一番かわいそうな子に、社会貢献というか、福祉活動というか」


 ちょっと自分で言っててみじめだな、全裸だし。


「ミスト様、わたくしはミスト様に、孤児にパンを分け与えるように、わたくしをミスト様に?」

「つまり、そういう事になるのかな、自己犠牲の気持ちというか、貴族全体の底上げとでも言うか」

「ミストくーん、それって私達にそこそこ失礼よ? また吊るされたいのかな?」

「ええっ! ソフィーさん怒ってる?!」

「ミスト、私は止めないからな」


(リア先生まで冷たい! 第三夫人予定のくせにぃ!!)


「ミストくん、それだったら孤児院で一番可哀想な子を見つくろうわ」

「そうですわ、わたくしも、ソフィーお姉様も、ミスト様を本当に本気で好きだから結ばれたのですわ」

「ほ、本気でボランティアをしているんじゃあ」

「ミストくんと結婚する事を自己犠牲だなんて思った事は、一度もありません」

「そうですわ、むしろ犠牲になっているのはミスト様の方かもしれませんわ?」


 何それ怖い。


「という事でミストくん不正解です、次は伯爵か辺境伯になったらね」

「もし一足飛びに辺境伯でしたら、さらに三回、答える権利を差し上げますわ」


 おお、それはビッグチャンスだ!


「ミスト、モリィが服を持ってきてくれたぞ、着ろ」

「あっはい、ありがとうございます」


 僕はお水を飲んで落ち着きつつ服を着る。


「じゃあミストくん、話を戻すね、冒険者が南の、死の砂漠に挑戦して結構、危ない目にあってるの」

「手前のオアシス的な拠点が安全地帯になってますわ、それで命は助かっているようですの」

「今までの所はな、そこで南の、死の砂漠をさらに進もうと思っている」


 リア先生が古そうな地図を出してきた。


「死の砂漠、ここにはまだ未解明の遺跡や、砂嵐に囲まれた謎の街があると噂されてる」

「なにそれかっこいいですね」

「ああ、眉唾物の街はともかく、砂漠の遺跡を見つけ出してそこまで道を延ばせば伯爵に近づく」

「そしてされらに砂漠を突き抜け、そのさらに南の国にまで安全な道を繋げれば、辺境伯も夢ではないかと」

「ですわ、そうなると他の国への貿易ルートになりますわ、その玄関口になれば辺境伯間違い無しですわ」


 なるほど、南進の道を行き止まりにしなければいいのか。


「それってどのくらいかかるのかなあ」

「そうね、二か月から四か月かしら」

「ミスト様が全力を出していただけるのであれば、一か月半でできますわ」

「私とまだ寝ている伯母上もあいかわらず協力させてもらうぞ」

「あ、ありがとうございます」


 とは言うものの、そんなに簡単に行くものなのだろうか?


「ではミストくん、早速、明日から出発しましょう」

「え、明日?!」

「はいですわ、こういうのはできるだけ急いだ方が良いですわ」

「明日には王都からモーリィも着く、フォレチトンはサリーと我がヴァルキュリア部隊に任せておけ」

「は、はい、それにしても急ですね、いや、もちろん行きますが」


 まったく相談がないのは僕が頼りないからなんだろうか?

 いや相談された所で僕に判断しろって言われても困るのか、

 とにかく冒険者、ポーターとして頑張って、足手まといにならないようにしなくちゃ。


「今回は訳あって、ジゼルさんは同行しません」

「なんで? あっ、鍛冶屋か」

「そうですわ、都市の新しい鍛冶屋を本格的に造りますわ、その指示ですわ」

「鎌とか道具を揃えたりも色々あるからね」

「キリィとモリィは今回も同行する、アサシンは重要な戦力でもあるしな」


 良かった、これでメンバー的には大丈夫そうだ。


「それではミストくん」

「はい」

「お仕置の続きをしましょうか」


(やーーめーーーてーーー!!)


 この後、例の屋外ベッドで吊るされた、もちろん全裸で

  だめ貴族だもの。 ミスト

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