第119話 愛人に相談だ
夜、知らない街についた、
ソフィーさんベルルちゃんは施設の整った大きい教会へ、
ナリューくんを連れて入っていったっきりで邪魔できない、
僕は本来みんなで泊まる予定だった大きい宿の最上階に入って、
運ばれてくる豪華な夕食に舌鼓を打つ、アメリア先生と一緒に。
(キリィさんモリィさんはどこへ行ったのだろう)
ふたりきり、マナー良く食べるアメリア先生が話し掛けてくれる。
「ここは亜竜系の魔物肉が有名だそうよ」
「そうですか、アメリア先生ってドラゴンとか狩った事あるんですか?」
「若い頃は何度もね、今だってポークレットファミリーでなら余裕よ?」
「うーん、そういえば空中移動に竜を使ったりしていましたね宰相さんとか」
「ドラゴンのティムは城の特権よ、
でも王家の血筋が入った公爵家なら許されるケースがあるわ」
と雑談しながらふと思う、
ソフィーさんとベルルちゃんがナリューくんについていて、
しっかり治療のための検査をしてくれているのに僕といったら……
「どうしたの? 正妻が気になる?」
「正妻というより、ナリューくんが」
「行っても邪魔なだけよ、貴方は任せた側なのだから、最後まで責任持って任せなさい」
「はぁ」
「寂しいなら私が後で慰めてあげるわ」
そう言った表情はいつものキツい感じじゃなく、
やさしい、やわらかい表情だ、いつもは眼鏡のせいで少し損をしている気がする。
「アメリア先生、もうちょっと眼鏡を増やしてみては」
「そうね、でもこの間、お洒落な色付きにしたらリアに笑われたわ」
「そんな、一度見せて下さい、笑いませんから」
夕食が終わり豪華なお風呂でアメリア先生に背中を流してもらう。
「きょ、恐縮です」
「愛人だもの、これくらいして当然よ」
「その、なんでこんなにも僕に良くしてくれているのでしょう」
「今更? そこまで深刻に考えなくても良いわ、それぞれにはそれぞれの事情、想いがあるのよ」
「そう、なんですか」
アメリア先生だって、今からでもちゃんとした貴族の所へ嫁ぎ放題なのに、
これだけ美熟女なら、なおさら……あ、そうだ、あの事を聞いてみよう。
「アメリア先生、その」
「なあに? ミスト」
「その、母上が、王都別邸でパーティーのとき、ダンスを踊った時、
離れる際に、僕にだけ聞こえるように、ぼそっと『可哀想に』って言ったんです」
「……それは確かに?」
「ええ、聞き間違いではないと思います、あれってどういう」
きゅっ、と身体を密着させてくる!
あ、ああ、あああたってるからああぁあ!!
「きっとミストの背負っているものの大きさを憂えているのでしょう」
「背負っている、聖女様をですか」
「フォレチトンの開拓と言う大きな物もよ」
「そ、それは確かに」
「大きく強い駒が豊富とはいえ大将は、領主は貴方よ、その背負うべきものは大きすぎるわ」
確かにそうだろうけれども、
母上の言い方からはそんな風に感じなかった、
もっとこう、僕の立場というよりも、僕が何かされているような、そんなニュアンス……!!
「そんな事を気にするくらいならもっと甘えなさい、
本当なら、本来ならもっと甘えられる時に甘えるべきだったのよ」
「でも急にそんな」
「それくらい息抜きしないとこれからやって行けないわよ?」
そう言われるとアメリア先生から母親のような安らぎを感じてしまう、
本当の母上がやっと元気になったのに、裏切っているようで少し心地が悪い。
「どうしたの?」
「その、アメリア先生も洗わせてください」
「あら嬉しいわ」
……母上もこうやってあげたら喜ぶのだろうか、
そしてあらためて父上もひとりで大変だったんだろうなという事を考える、
いや、今だってカジーラで夫婦そろって相当大変な思いで仕事をしているはずだ。
(僕は、学院に出る前、父や母を助けられなかったのだろうか)
今更ながらそんな事を考えると、
この今の幸せすぎる状況がなぜ転がり込んできたのかわからない、
僕がソフィーさんベルルちゃんに愛されている理由のヒントもそこにあるのかも。
「どうしたの?」
「あ、すみません、痛かったですか」
「心ここにあらずよ」
「ごめんなさい」
「そうね、帰り道にカジーラへ寄るから、そこで両親と向き合いなさい」
(うん、そうしてもらえるなら助かる)
風呂上がり、バスローブのアメリア先生にベッドへ押し倒された。
「不満があるなら言いなさい、不安があるなら相談しなさい、
自分が押しつぶされそうになったら助けを求めなさい、
貴方に足りなかったのは人に頼るという勇気、そしてその選択を知る事よ」
アメリア先生に愛されながら考える、
僕はちゃんとソフィーさんベルルちゃんと家族を築き上げていけるのだろうか、
そして、僕はきちんと『僕が愛されている理由』に辿り着けるのだろうか?
(こればかりは自分で答えを探して当てよう、男として、貴族のプライドとして)
「アメリア先生、僕、決めました」
「ふふ、何を?」
「何があっても、どんな事があっても、
貴族のプライド、男のプライドを持って、みんなを守り続けると」
それに対して返事は無かった、
うん、僕がこれからやっていける事は、
プライドを持ってソフィーさんベルルちゃんリア先生エスリンちゃん、
そして今、愛してくれているアメリア先生やキリィさんモリィさん愛人の皆さんを、
僕が精いっぱい出来る限りを尽くし、力になり、愛して守っていく事だと胸に誓おう。
(そうすれば、みんな笑って過ごせる幸せな家族になるはずだ、
うん、心の底からみんなで笑い合える、素敵で素晴らしいポークレット家にしよう)
とはいえこの夜は、アメリアに思う存分、甘えてしまったミストなのであった……。
翌朝、色眼鏡をかけたアメリア先生を見て豪快に笑った
だめ貴族だもの。 ミスト
直後、ポカリと殴られた。
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