第106話 告白イベントもやり直し
再テストが筆記実技ともに終わり、
アメリア先生はどこかへ行った、シャワーかな?
そしてソフィーさんに連れて行かれたのは大天使噴水のある中庭だ。
「あ、あれは!」
そこで待っていた男ふたり、
学院生活三年間を同じGクラスで共に過ごした仲間だ。
「アレグ!メイソン!」
「おう久しぶり!」
「再テストどうだった?!」
軽くハグして再会を喜び合う。
「多分大丈夫、それにしてもわざわざ王都まで?」
「お前に会いに来たんだよ!」
「男爵就任式、招待してくれたのにごめんな!理由は察せ!」
うん、お金がなかったんだろうなあ。
「さてミストくん、急いでやり直しましょう」
「え、何を?」
「告白イベントです」
よく見るとソフィーさん、いつのまにか学院の制服に着替えてきてる!
「ミストくんたちはそのままでいいですよ、時間もありませんし」
「え?時間?たち?」
「終業式の間なら下級生が乱入して告白する事も無いでしょう」
「そしてミストだけで告白するのは寂しいだろう?」
「だからさ!俺たちも隣りで告白するよ!」
あーそういう事か、
よく思い出せば何かよくわからない奴に蹴られながらだったからなぁ。
「じゃ、じゃあ、告白をすればいいんだよね、ってあれ」
ふと後ろに気配を感じて見ると、
用務員のおじいさんがしれっと花束を持って待機していた!
(確か前は花が一輪だったような、奮発したなあ)
「それでは……オホン」
あ、ソフィーさんが噴水前でスタンバイした!
「皆さま、今回は私ソフィー=ミンスラーに告白していただけるという事で、
至極光栄に思っております、ですがいくつか条件があります、まず告白していただいた方とは、
結婚が前提となります、ですので軽い気持ちでのお付き合いを考えてらっしゃる方はお断り致します」
前口上まで再現してくれている、律儀だ。
「そして私はこの学院服ひとつで嫁ぎます、
後ろにお金や地位があるとお思いの方は見当外れになりますのでご注意ください」
あれ?前の時は一番地味な服とかじゃなかったっけ、まあいいか、
実際はお金も地位もあったんだよなあ、Sクラスのぼっちゃん三人はわかっていたんだろうな多分。
「最後に、結婚していただける方にはとある重要な魔法をかけさせていただきます、
少しお教えしますと、結婚すると魔力が減る恐れがあるのでそれを防ぐ魔法ですが、
まったくリスクが無い訳ではありません、その内容は結婚式の日にお教えします」
あ、ちょっと説明がくっついてる!
結婚すると魔力が減る、うん、間違ってない、
正確には結婚して夫婦が夜にベッドでする行為によって、だけれども。
(そしてリスクってなんだろう、怖いよう、この聖女様)
「では告白の方を、よろしくお願いします」
みんな僕を見る、あ、そうか僕からか。
「ええっと、ソフィーさん、ミスト=ポークレットです、貴女のような聖女様と結婚できれば、
僕の出来る事を、出来うる限りを最大限なんでもします、でも何をどうすれば良いかわかりません、
なので教えて下さい、そして僕を好きに育てて下さい、全力で応えます、よろしくお願いします!」
頭を下げて手を差し出す、
うん、即興で考えた割にはなかなかじゃないかな?
続いて僕の隣にアレグが立つ。
「聖女ソフィー様、アレグです、この将来の準男爵が、貴女を幸せにしてみましょう、お試しあれ」
なにが『お試しあれ』だよ!って突っ込みたくなるが我慢、我慢。
次はさらに向こうに立ったメイソンだ、どんな言葉を吐くのだろうか?!
「ソフィーちゃん!ぼ、僕と、●ん●り●ん●り改めい●ぐ●ーずして下さいっ!!」
ど、ど、ど変態だああああああああああああ!!!
なんという卑猥な事を……多分相手が誰でも、
たとえ聖女様だってこんな事言われたら逃げ出すと思うぞさすがに。
(あ、後ろで用務員のおじいさんが花束を差し出した、丁寧に片膝着いて……)
これで告白する人は全員のはずだ、
ソフィーさんがゆっくり僕の方へ近づいてくる気配……
そして手を握り、顔を上げた僕におもむろに唇を重ねた!!
「!!」
長い接吻ののち、
ソフィーさんが僕に抱きつく!
「嬉しい!結婚しましょう!!」
あ、涙をこぼしてる、
相手は僕なのにいいぃぃぃ!!
「ミストおめでとう!」
「やったなっ!ミストやったっ!」
アレグもメイソンも祝福してくれる、
ついでに用務員のおじいさんも花束を脇に抱えて拍手、
うん、良かった。告白イベントのやり直しができて、本当に良かった。
「さて、次はわたくしの番ですわよ?!」
ソフィーさんの後ろからやってきたのは、
学院の制服に着替えたベルルちゃんだった、
あいかわらず胸がはちきれそうだ。
「あれベルルちゃん、どこ行ってたの」
「一応、非常勤教師ですので終業式で生徒にスピーチですわ」
「あっそうか、それもお仕事か」
それが終わって慌てて着替えてきたのか。
「ちょっと待ったーーー!!」
「ベルル様、ベルルさまーーー!!」
「わたくしめにも、ちゃ、チャンスをーー!!」
あ、校舎から三人、生徒が走ってきた!
「もう、まだ終業式の最中ですわよ?」
「こんな事だろうと思って抜け出してきました」
「終業式くらいとばしても怒られる程度で済みます」
「それよりも、ベルル様に告白したくって!」
あー思い出した!
この三人、前の卒業式後の告白イベントで、
ベルルちゃんに告白させてくれないのかって騒いでた連中だ。
「もう仕方ありませんわね、しかしここに、わたくしだけのために入学した、
勝手に決められたとはいえ一応、婚約者ですものね、広い心で許しますわ」
なるほど同級生(ただし春期だけ)であり婚約者だったのか、
本来は聖教会専門の学院に行く予定だったのがベルルちゃん目当てでこっちに入れられて、
その本人は一年で卒業しちゃった訳だから、そりゃあ可哀想ではあるよな。
「ではまずミスト様、お水をゆっくりお飲み下さいませ」
「え?あ、うん、ありがとう」
アイテム袋から出されたお水を飲む。
「さて、本日は首席卒業扱いとなったこのベルル=ヴェルカークへの告白イベントに、
ようこそお越しくださいませですわ、どのようなお付き合いになるかわかりませんが、
このわたくしと恋人同士になる以上、色々と覚悟なさいませ、よろしいですわ?」
あーなんかベルルちゃんらしいや。
「ちなみにお爺様から、結婚するならこの国で一番のものを五つ持っている家と言われていますの、
少なくともそれをちゃんと述べていただきたいですわ、それではまずそちらの方から」
あ、僕がてのひらで丁寧に指名された!
「ええっと、ミスト=ポークレットです、僕はこの国で誰よりも一番、ベルル様を愛しています、
誰よりも一番好きです、誰よりも一番抱きしめたいです、誰よりも一番護りたいです、そして、
誰よりも一番相応しい男になりたいと思っています、つきあって下さい、お願い致します!」
なんかベルルちゃんがお爺さんにしてた言い訳をほぼ引用しちゃったけど、いいよね?
そう思っていると隣に下級生が三人並んでいた、それぞれ告白する。
「スチュアーム聖教会のリーフ=スチュアームです、公爵家でもあります、
うちの教会の女神像は国で一番価値があります、教会に一度に入れる人数も最多です、
さらにジーガ教皇への謁見回数も去年最多です、あとは、
信徒とお布施を国一番にするよう努力します!結婚してください!」
あ、あと二つは確証ないのか、努力目標というか。
「貴女の婚約者、フェルマーク聖教会のスフラスです、この国で五つの一番ですが、
教会の来訪者数、信徒の増加率、お土産の売上一位です、残りのふたつは、
ベルル様への愛情の深さと、ベルル様と愛し合える自信の深さという事にしておきましょうか、
一緒にフェルマーク聖教会を大きくしていきましょう、さあ、私の手を取って、結婚を」
なんか真似されたっぽい気もするが人の事言えないからまあいいか。
「ついに告白できる時が来るとは……クラリクスフ教会の跡継ぎ、ベックと申します、
現存教会の築年数、神託の数、教会建築士の数が国内一ですが、さらに述べますと、
神託を受けた女性信徒の数、女性教会建築士の数が一番です、どうか我が教会へ、どうか」
ちょっとごまかしっぽい残りふたつだけどまあいいか、
そして後ろではお約束で用務員のおじいさんがさっきの花束をさしだす、
いやそこはせめて違う花束にした方がいいんじゃない?と思っていたら……
「ふふふ、そうですわね、では」
と、ベルルちゃんがなぜか僕の横を通り過ぎて用務員の方へ?!
「いただきますわ……ってそんな訳ありませんわーーー!!」
あ、一瞬花束を受け取っておいておじいさんにぶつけた!
酷い、これはむごい、おじいさん用務員もさすがに涙目になっている。
「これで聖教会に貸しができましたわねホルン様、今年度で定年と聞いておりましたわ、
ですので来年度からは聖教会の寮で管理人をして下さいませ、よろしいですわ?」
あーこれはやさしい、
そうか定年だったのか、
おじいさんも喜んでいるっぽい、そしてベルルちゃんは僕の手を取った。
「素晴らしい告白でしたわ、このベルル=ヴェルカーク、ミスト様と愛し合わせてくださいませ」
そしてベルルちゃんも唇を重ねてきた、
水を飲ませたのはこのためか……長めの接吻が終わる。
「よし、次は私だ」
「リア先生?!」
「騎士団の服で済まない、さっきスピーチをしてきた所だ」
「あれ?もう教師では、教員ではないはずでは」
「もちろんだ、なので今日は今朝就任したての騎士団長として話してきた」
いつのまにーーー?!
「ちなみに今は伯母上のスピーチ中だ、
告白イベントの時間を稼ぐため、めいっぱい長話をすると言っていた、
お前たち、今すぐ戻れば長めのトイレで済むぞ、戻れ」
丁寧にリア先生に頭を下げて終業式に戻る下級生たち、
それにしても次ってリア先生まで?!
「確かリア先生、先生が生徒で卒業した時の告白イベントって」
「ああ、当時、最後に『バンザーイなしよ』で終わったな」
「なんですかその呪文……」
あらためて噴水前に立つリア先生。
「さあ、私とつがいになりたい物好きな男が居るなら今すぐここで名乗り出てくれ、
ホルン、貴殿は良い、どうせ二度続けて参加したのだろう、価値が下がる」
これもあんまりな言い方だなぁ。
「あのリア先生、僕と」
「よし、結婚しよう」
「はやっ!む、むっぐぐっ!!」
唇も速攻で重ねられる!
身長差があって上からの接吻はなかなかくるものがある、
ああ、これでやり遂げた、告白イベントの幸せな上書きが、できたぁ……。
(うん、最高の想い出が、完成した)
一方その頃、終業式ではアメリア先生の超長話にみんなダレていた
だめ貴族のせいで。 ミスト
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