第84話 大教会は許す、だが聖教会はどうかな?
翌朝、ミゲル司教がとっととお帰りになられるというのでお見送りだ、
大教会の教会前で信徒さんがずらっと並んで、ってこんなに居たんだいつのまに!
白い馬車は騎士団のもの、そういえば大教会は国王様も信徒んだったっけ。
「お爺様、わざわざありがとうございました」
「おう、王都でもまた会ってやる、司教としてな、そしてミストよ」
「はいっ」
「あらためて聞こう、大教会に入信すればもっと支援をしてやれるが?」
「お心遣い感謝いたしますが、私は両教会の繋ぎ役ですので」
昨夜の密会?に呼ばれなかったかわりに考えておけと言われた結論を渡した、
いくら正妻側の宗教とはいえ、聖教会の住民に肩身の狭い思いをさせたくはない。
「ま、そうじゃろな、国王陛下が許しておるのじゃから今更だが、
ミスト=ポークレットよ、ソフィーとの婚姻を正式に認めてやろう」
「ありがとうございます!!」
あらためて言ったのはこの場の信徒に聞かせたかったのだろう。
「じゃが聖教会は許すかな?」
「あうっ!そ、それは」
「ワシとしては今、大教会で働いている信徒が六十八名、
隣りの聖教会が四十九名、その時点で勝ちじゃから納得したが、
奴らも同じことを考える、そのあたりどう説明する?」
うっわ、もうこれだけで面倒くさい。
「その、量より質です、とか?」
「では大教会は質がないとでも?」
「い、いえそんなめっそうも」
ソフィーさんクスクス笑ってるし!
「小僧、誰の前で何をどう言うかよく考えよ、お前さんの行く道はとんでもなく歩き難い」
「はい、今のでなんとなく」
「よっぽど綿密、緻密にバランスを取り言葉を使い分けるか、己の道を作って突き進むかじゃな」
こんな僕にちゃんと助言してくれる、ありがたくて頭が下がる。
「ありがとうございます」
「ま、あとはお前さんの両親に文句でも言ってくるわい」
「そんな!その、悪いのは僕なんじゃ」
「ソフィーを嫁に貰う事が悪い事だとでも?」
「いえいえそんな」
ソフィーさんがやっと僕と司教様の間に入ってくる。
「お爺様、もうそのあたりで」
「うむう、ま、後でお前さんの両親から愚痴でも出るだろうが聞いてやれ」
「は、はいぃ」
「ワシは昨夜のソフィー、それと聖教会の小娘の説明で納得した、いや納得させられた、
お前さんはお前さんの口でワシの息子夫婦、ソフィーの両親を納得させてくれればそれで良い」
「わかりました、お会いしたらそのあたり、きちんと話します」
ソフィーさんの実家、ミンスラー家を
飛び出すのは止められないみたいだからせめて詫びないと。
「昨日も言ったように説明の義務や義理はもう無いも同然だ、じゃからこれは誠意の問題じゃな」
「それはもう」
「ワシらの方はそれで解決するが、聖教会はとんでもなくやっかいじゃ、今日にでも殴り込みに来るらしい」
ううう、怖いよう。
「対処法を見誤るなよ、奴らはワシら以上に面子を保ちたがるからの」
「心してかかります」
「では機会があればまた、今度は王都でな」
丁寧に説明、アドバイスをして馬車で去っていったソフィーのお爺さん、ミゲル司教。
僕はソフィーさんがもういいと言うまで頭を下げ続けた、領主としてというより義理の祖父に対して。
「ミストくん」
「はいっ」
「あれでも気に入られている方よ」
「えっなんで」
「ふふ、どうしてでしょうね」
大教会の皆さんも教会へ入っていく、
そして遠巻きに覗き見してたっぽいベルルちゃんが聖教会から出てきた。
「ミスト様、今夜、わたくしのお父様お母様、お爺様お婆様がいらっしゃるようですわ」
「ええっそんなに!」
「四人を乗せた馬車がこちらへ来る途中に先ほどの、大教会の馬車とすれ違わないように調整したそうなので間違いありませんわ」
どんだけ仲悪いの!
「それでベルルちゃん、僕はどうすれば」
「普段通りで構いませんわ、今日も普通に森の南で道を造りましょう」
「う、うん、わかった」
ふと噴水前の豪華ベッドを見るとマンタ爺さんがワーウルフと寝ている、
本当にフリーダムだなあこの元十七番目にこの国で偉かったと自称するお方は。
「さあ、今日もミスト様の子爵へ向けて頑張りますわ」
この日はそのあと小雨が降り始めた、
しかし雨だからといってやめると間に合わない恐れもあるので、
ベルルちゃんが魔法で見えない大きな傘を作って濡れた森を突き進んだ。
「ダンジョンの中は湿気が酷かったですわ」
そう言いながらも階層が浅いとあっさり攻略して戻ってくる、
地面をならして魔石を埋め込む作業も少し大変そうだったが泥にかまわず進め、
結果、昨日と同じくらいの距離を制覇して日帰りで夜に戻ると雨が本降りになってきた。
「うわあ、朝この降りだったら中止になってたかも」
「いえ、中止も休止もありませんわ、歩みは一歩でも止めるべきではありませんから」
「大人びたこと言うなあベルルちゃんは」
「もうこの国の法的には大人ですわ?」
「そ、そうだった、十三歳でも学院卒業したら大人なんだよね」
という会話をしながら戻ると、
領主邸の前に金色できんきらした馬車が止まっていた、あれはもしや!
「いらしてるようですわ!」
先に駆けて行ったベルルちゃん!
遅れて僕も入ると居間に居たのは、
貴族のロイヤルファミリーといった感じの四人だった!
「あの、い、いらっしゃいませっ、その」
メイド長のミランダさんが丁寧に接客してくれたようで、
暖かい紅茶をすすっている、お茶菓子はハーブを揚げたものだ、
確か聖教会は魔力が強いと甘い物は極力禁止だからか、前もってわかってくれている。
「お婆様!」
「ベルルや、良い子にしてたかい?」
「はいっ、それはもうっ!」
大きな身体のお婆さん、その胸元に抱きついて甘えているベルルちゃん、
その隣に座るのは小柄ながら威厳溢れるお爺さん、もう表情が貫録を持っている、
甘えるベルルちゃんに目もくれず僕をギロッと睨み付けると、強い口調で言葉を発した。
「誰だお前は!」
「ひ、ひいいぃぃぃ……」
いきなり怖い
だめ貴族だもの。 ミスト
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