第77話 いつのまにか帰ってきてました
「ミストくん、ミストくん、着いたわよ、起きて」
「んっ……ん、んん?もうカジーラ?」
「何を言っていますのミスト様、もうフォレチトンですわ」
そうだった、昨日、いや正確には一昨日の夜中にカジーラへ着いて、
久々に親子再会して顔を見せ終わっただけで眠りにつき、
昨日は丸一日カジーラで親子での食事や孤児院に行ったり、
武器防具専門店ハンターを見たりと色々して過ごして、
夕食会が終わって馬車でフォレチトンへ向かったのだった。
「ええっと、今は明け方?」
「そうですね、夜通し走りましたから」
「ミスト様、朝食まで四時間程、ちゃんとしたベッドで休みましょう」
うん、いかに揺れない馬車とはいえ、
そこで眠るとのちゃんと家で寝るのとでは質がまるで違う。
「ミストくん、私たちも仲良くなりましょう」
「そうですわ、昨日はお義父様とお義母様にあてられっ放しでしたから」
「うん、久しぶりに会ったら非常に仲が良くなっていたね」
いや非常というより異常なくらいラブラブだった、
あれは僕が居なくてもこうしているから大丈夫という事なのか、
早くこんな風に息子も婚約者と仲良くしなさいという事なのか……
(まさか誰かに命令されて見せつけてる、なんてことは)
我が家はこんな時間なのに留守番の騎士団が玄関前で警備してくれていた、
このへんしっかりしてくれている、たかが準男爵、実際は村長みたいなものなのに。
「ただいまー……あれ?
開けっ放しの扉がある、
あそこは確かメイドの部屋、
キリィさんモリィさんの部屋だが中は何もない、がらんどうだ。
(もう片付けちゃったのか、早いなあ)
新しいメイド、ミランダさんジゼルさんの事を考えれば当然か、
もしメイド四人ってなっていたら一部屋だと狭すぎだし、
その時は最悪、近い廃屋でも借りるしかなかったかも。
「いや今日はリア先生いないし、帰ってきてもアメリア先生と同じ部屋になれば、
エスリンちゃんが来るまでは僕の前の部屋が……」
「何の話でしょうか、もう新しいお屋敷が出来かけていますけど」
「えっソフィーさんそれ本当?!」
いつのまに!!
「男爵就任式の日に完成予定で、就任式もそこで」
「ちょっと早すぎない?いくらなんでも」
「ミストくん、建築魔法っていうの知ってる?あとはまあ、お金さえあれば」
すごいな、これも国中から集めた投資のおかげなのだろうか?
ベルルちゃんは食堂からお菓子を持ち出してモキュモキュやってる。
「それいつのまに」
「んん~?……んっ、逆ですわ、食堂にお菓子を置いてきて、ついでにいくつか」
「あ、そうなんだ、仕入れてきたのを食堂の倉庫へ」
チュニビとカジーラで目一杯買ってきたらしい。
「ふう、疲れたわ」
「あ、おかえりなさいアメリア先生」
続いて新メイドふたりも。
「失礼いたします」
「わあ、鍛冶工房の寮を思い出します!」
それは褒めてるのか貶してるのか、どっちだ!
「じゃ、ちゃんと夜が明けて朝になったら、あらためて集合ね」
アメリアさんはさっさと部屋へ、
ソフィーさんはメイドを空いたメイド部屋へ案内、
ベルルちゃんは僕と一緒にお風呂へ、ってお風呂?!
「さ、まずは汗を流しますわ?」
「う、うんっ」
ひとり入るのがめいっぱいの浴室なんだけど、
ベルルちゃんくらい背が低いとイケるか?!
(お互い交互でもいいか)
……結果、とんでもなくめっちゃ接触したお風呂だった、
接着といって良いくらいだった、ベルルちゃんの太眉でくすぐられるくらいに。
「お風呂は旅の疲れを洗い流していただけますわ」
「うん、でもやっぱりお風呂は大きい方がいいかな」
「もうすぐですわ、新しいお風呂はちゃんと五人同時に入れる大きさですわ」
どんだけ大きいのそれ!
やっぱりアレか、ハーレムで女の子四人はべらせてっていう、
そういやベッドでもそんなこと言っていたような気が。
「さ、寝直しますわ?」
「う、うん、確かにさっぱりしたら眠くなってきた」
「今日はミスト様に大仕事がありますから」
帰っていきなり何かあるしい、
部屋の戻るとソフィーさんがすでに横になっていた。
「あ、ごめん、お風呂入ってた」
「構いませんわ、さあご一緒に」
「う、うん」
学習した僕は先にソフィーさんの頬にキスする、
するとベルルちゃんがずいっと顔を寄せて催促、
キスしてあげると僕の頬にふたり同時にキスされる。
「ではミストくん、おやすみなさい」
と、僕に抱きついてさっさと寝てしまった。
「……あいかわらず寝つき良いなあ」
「ミスト様が馬車で寝てらした間も、ずっとしがみついて寝ていらしたわ」
「そうだったんだ、先に寝ちゃってたからわからなかった」
「わたくしも休ませていただきますわ」
「う、うん、おやすみ」
こうしてベッドに両脇から捕まえられたように眠ったのだった。
(これでリア先生が加わったら、どうなるんだろう……?)
朝、といっても昼前と言っても良い時間、
結局僕らは五時間くらい眠っていたみたいだ、
遅い朝食をミランダさんジゼルさんがふたりで作ってくれていた。
「これはこれでなかなか」
「はい、オーク肉が豊富という事でふんだんに」
「野菜も種類豊富で作っていても楽しかったです、鍛冶場では重い食事ばかり作らされていたので」
「オークサラダというのは中々良い発想だね、重い食事ってどんなの?」
「はい、ドワーフ式地下煮込みとか、今夜早速作りますね」
なにそれ美味しそう!
「ミストくん食べながらでいいから聞いてね、男爵になるための最終関門があるのかわるわね?」
「ええっと、街の人数?」
「それはもうなんとか出来る予定よ、色々とからくりがあるけど省略していい?」
これって余計な事は聞くなって事かな?
「う、うん、ソフィーさんが省略したいなら」
「書類上はフォレチトンは一万人の街になるの、男爵就任式の時には」
「そのあたりは任せるよ」
「それで早ければ今週末に監査というか審査というか、査察がお城から入るの」
「あ!そんな事言ってたよね」
聞いて思い出した!
「それに領主であり男爵になる予定のミスト君がつきあって説明しないといけないの」
「ソフィーさんやベルルちゃんは?」
「まだ考え中だけれど、基本的に説明はミストくんね」
ベルルちゃんは朝食を速攻で食べ終え、
デザートのはちみつたっぷりなパンケーキに夢中だ、
うん、どう見ても食後のデザートの方が大きくて多い。
「それで僕が説明するための勉強を?」
「勉強というか準備と練習ね、監査、視察の人に見せるコースを先に回って説明の練習よ」
「ふむふむ、やってみるよ」
自分の領土の話だし。
「という事でこのあと、噴水前広場ね」
「うん、わかりました」
(そういえば何か噴水前で見なきゃいけない物があったような……?)
そうしてもうすぐお昼と言う時間、
待ち合わせの噴水前広場にソフィーさんベルルちゃんと行くと、
そこにある意味、異様な物体があった。
「これって、ベッド?!」
噴水の前にあった台座、
前々からベッドみたいな大きさとは思っていたが、
本当にベッドになっている、すごく綺麗にしてある!
「これ、新しい領主邸の寝室に入れるベッドと同じなの」
「ええっと、見本?」
「領主のベッドの展示ね」
わざわざそんなの展示しなくても!
「ミスト様、ちなみにこれはこれで観光名所になっていますわよ」
「なんでー?!」
「あ、あの、お帰りなさいませ領主様」
ふいに声をかけてきた相手はメカクレ領主代行サリーさんだ。
「あっ、ただいま!そしてご苦労様」
「い、いえぇ私なんて、それでリアお姉様はいつお戻りになられるのでしょうか」
「王都で用事があるみたいで、男爵就任式までには戻ってくるって」
「そうですかぁ……それまで頑張らないといけませんね!」
あらためてまわりを見ると、
噴水を挟んで大きな教会が建設中だ。
「ええっと、こっちが大教会で、こっちが聖教会かな」
「そ、そうですぅ、男爵就任式の日までには完成させるそうですぅ」
「すごいな、これだけでも観光客が呼べる」
そして少し進むと立派なお屋敷が建設中だ。
「うわ、カジーラに住んでる父上のお屋敷みたい」
まあ、すなわち処刑されたチュニビッフィ伯爵邸みたいって事だけれど。
「ミストくん、これが新しい領主邸、ポークレット男爵邸よ」
「い、いいの?こんなに大きいの」
「ちなみにポークレット辺境伯邸はもっともっと大きいの」
もうすでにそんな計画が?!
「さあ、市場へ向かいましょう」
ソフィーさんの声にサリーさんが先導してくれる、
途中で見た無人販売所が豪華になっている、
無人なのは変わらないが棚やテントの屋根がついていた。
「これだけでも印象がかなり違いますね、あ、実も増えてる」
「あのっ、私もっ、サリーもよく買わせていただいてますぅ」
「うん、買って食べたい所だけど遅い朝食いただいたばかりだからなぁ」
そうして市場につくと拡張されていて立派になっていた、
王都で見た屋外の市場を彷彿とされる賑やかさ、と言いたいが、
お客さんはまだそれ程でも……でも以前に比べたら常時客が歩いているってだけで凄い。
「隣りの冒険者ギルドに顔出すかな」
「こちらの中は出発前と何も変わりません事よ?」
「うん、そうだけれど」
ギルマス代行に会おうかなと思ったけど今日は休みらしい、残念。
「領主様、ではいよいよ、メインの場所へ」
「え、メイン?!」
一行が向かった先は畑が広がる道、
ああそういう事か、とまわりを見て理解する、
今まで見なかった作物がいっぱい、特に果物が多い。
「すごいねこれ、開拓したんだ」
「はいぃ、出資金から様々な種を取り寄せて、
また根から植え替えた、移してきたものもありますぅ」
「このあたりサリーさんの力?凄いね」
「いえいえめっそうも、ソフィー様ベルル様のコネだと聞いていますです、はい」
「そうなんだ、それでもすごいすごい」
それで朝食のサラダが種類豊富だったのか。
「あ!サリーさんあれ」
「マンタ様ですねぇ、なんと昔、お城で十七番目に偉いお方だったそうですぅ!」
信じてる信じてる、いいのか?!
「マンタ爺ちゃん!」
「おうスケベ坊主、帰ったか!」
「うん、今朝戻ってきたよ!」
若い女性三人を前にしてもフリチンなのはブレてなくて大好きだ、
ペットのワーウルフはサリーさんの匂いをクンクン嗅ぎながらしっぽブンブンしている。
「にしてもあそこは凄いのう、たまげたわい」
「え、あそこって、ああ巨大な穴、空き地のこと?」
「もう空き地とは言えんぞ、ありゃ」
えっ?!と思いながら先を急ぐ、
そういえば今歩いている旧オークの森へと続く道も舗装されていて、
馬車が頻繁に通ったような跡があった、現にいま、正面から馬車が……
「うん、横幅も少し拡がってる」
後ろは空だったが屋根の無い荷物を運ぶ系だ、
あの広大な土地がどうなっているんだろう?
期待しながらも進んでいくと見晴らしの良い場所に出て……!
「うわっ!こ、これは!」
あの大穴がすっかり街になりかけている!!
「領主様ぁ、今現在で一割できているそうですぅ」
「はやっ!あ、あの中心のが領主邸?!」
「はいですぅ、来年の結婚式までには全て完成させるそうですぅ」
すごいなこれ、まだこの穴作ってそんなに経ってないのに!
「ミスト様、乗り物が出来ているようですわ」
「え?あ!これ小さいの王都で見た!」
下へ降りる階段はあるものの、
それとは別に大きな乗れる籠が設置されてある、
魔導昇降機といって魔石の力で人や物を乗せて上下する大きな籠だ。
「これはっ、馬車二台乗れる大きさですぅ」
「凄いや、でも高かったんじゃ」
「借り物ですぅ、でも将来的には買い取りも出来ますぅ」
そのへんはこのサリーさんの腕だったみたいな感じだな。
「ミストくん、乗って降りましょう」
「う、うん」
手すりに捕まって結構な速度で降りて行く、
おっかなびっくり歩いてた隣の階段が懐かしい。
「これいいね」
「将来的には、街が完成して人が増えたら、三台は欲しいですぅ」
「うん、頑張って稼がないと」
ただ、街はできても産業をもっと発展されないと、
見て来た農園だけじゃちょっと心細い。
「到着ですぅ」
降りるとすでに馬車が用意してくれてあった、
引手は騎士団の人かな?遠慮なく四人乗って走り出す。
「ほんと、こんなに大きな平地が出来るとは」
「はいぃ、区画整理も出来ていましてぇ、完成後の地図をお見せしますぅ」
と馬車の中で広げて見せてくれるサリーさん。
「うん、これはもう立派な領都だ」
「各種ギルドも移転予定ですぅ、教会も新たにぃ」
「学校もあるね、この円形はコロシアム?」
すごいなこれ。
「はいですぅ、あと領主様の判断で色々なものも作れますよぉ」
「例えば?」
「そのぉ、娼館とかぁ」
あー……
「それはともかく、これ何人住めるの」
「とりあえず二十万人はぁ」
「多すぎでは」
「隣にもう二十万人住める街をくっつける計画もぉ」
「あ、ちらっと聞いた覚えあるかも」
と話しているうちにどこかに着いた。
「ええっとここは?」
「はいぃ、かつての一番大きなダンジョンですぅ」
「ああ、オークの!」
あの一番底に温泉があるやつだ!
人が出入りしているけど何だろう?
「ここはぁ、オークの養殖ダンジョンになっていますぅ」
「え、養殖?」
「はいぃ、見学いたしましょうぅ」
入り口に『フォレチトンオークパーク』と書かれている。
「お、中にいきなり食堂が!」
「オーク肉を使った様々な料理が食べられますよぉ、それはまた後でぇ」
ダンジョンを降りるとオークがいっぱい部屋で区切られて、くつろいでいる。
「これ、育ててるの?」
「そうですぅ、魔法で浄化されたダンジョンですので、攻撃性がなくなっていましてぇ」
「安全なんだ」
「しかも餌をちゃんとあげてますからぁ、オークさんにとっては暇で、やることは繁殖くらいしかぁ」
「あー、それでオークが沢山増えるんだ」
さらに下の階には子供オークがいっぱいいて走り回ったりしている、
どうやらご褒美に美味しい物が貰えるらしいが、それを見学できるようになっている。
「だいたい五匹から最大十八匹まで走るオーク競走場になってますぅ」
「面白いね」
「見に来たお客さんがどのオークが勝つか賭けて、当たったら高級オーク肉をプレゼントですぅ」
賭けか、ってお客さんって?!
「ここ、観光名所にするの?」
「はいですぅ、オーク肉をハムにする工程とかも見学できますぅ」
工場見学に子供オーク競走に食堂か、まあまあ面白いのかな?
メインはオークの繁殖だから、そういったものはついでで良いのだろう。
「地下の温泉は?」
「あーそれは工場職員の保養の使っていますが、
見学客も利用できるようにしようかなぁって」
「うん、それだったら僕も入りたい」
「いまは男女別の仕切りを付けている工事中ですぅ」
「そ、そうなんだ」
それは仕方ないか。
「あと、かつてのボス部屋も展示物にぃ」
「だったらオーク一家の作り物も置いておかないとね」
「それは良い考えですぅ!ナイスアイディアいただきましたぁ」
(素材の皮とか残ってないかな、はく製にするとか)
とまあこの施設を色々見て回って、
フォレチトンをオーク肉の名産地にする事は確定した、
いや元々それしかなかったような気もするんだけれども。
「ではぁ、最後にオーク肉料理を試食していただきますぅ」
こうして入り口すぐにあった食堂へ入り、
お腹パンパンになるまで食べさせられた僕ら。
ベルルちゃんはやっぱりデザートに厳しくて、
「オーク肉に実際食べさせている果物です、って説明は無くて良いのでは?」
と注文をつけ、結果、四種類あるデザートを、
聖女ベルルおすすめのお菓子、聖女ソフィーおすすめのケーキ、
領主ミストがよく食べている果物、勇者アメリア推薦のパフェ(数量限定)で落ち着いた。
「これはぁ、視察の方に食べていただきましょう~」
必死にメモを取るサリーさん、
そして地上に戻った僕らはまた馬車に乗る。
「次はどこへ?」
「この街の超目玉、他にない名産ですぅ」
「そんなのあったっけ?!」
時間をかけて広い広い土地を走る、
うん、一生懸命建物を建ててくれている、
土を固めて魔法で浮かせて積み上げたり、あれが建築魔法か。
「サリーさん、オークのダンジョンってあそこだけじゃなかたよね?」
「はいですぅ、他に六つあって、そこでも育ててますが、
観光施設にしているのは、あそこだけですぅ」
「なるほど、量は心配なさそうだね」
「あともちろん野生のオークも街から外れた森に、それはもうたんまりと」
「でも食べた感じ、養殖のがやわらかくって好きだな」
やっぱり食べ物の関係かな?
と色々話しているうちに平地の端っこ、
山へと入る手前のダンジョンに着いた。
「あーここ確か」
「ミストくん来た事ありますよね?」
「うん、入って速攻で逃げた、ミミックのダンジョン!」
「そうですわ、後でボスを倒してちゃんと浄化いたしましたわ」
「入口が厳重だね」
わざわざ騎士団の人が入口を固めている、四人か、
でもサリーさんのおかげで顔パスっぽい、いや僕か?
領主の顔知ってないと変だもんな、と思ったらソフィーさんベルルちゃんのおかげだったりして。
「ここではミミックを繁殖していますぅ」
「え、ミミックって超凶暴で即死魔法を使う超危険なはずじゃ」
「それが浄化魔法がぁ、とんでもなく強く効いていましてぇ」
そのあたりはソフィーさんベルルちゃんの合わせ技かつ力技か。
「それでミミックの、おそらく国で唯一の養殖場にぃ」
「待って待って、ミミック養殖してどうするの」
「まず単純に研究ですねぇ、将来的にはティムできるかもぉ」
そんなの聞いた事ないけど、
即死魔法使えて超タフで超攻撃力のあるティムモンスターっていたら反則的だ。
「あとは単純に素材ですねえ、特に魔石が貴重ですぅ」
「それだったらオークの魔石もいっぱい取れるんじゃ」
「ミストくんそこは私が説明するわ、って授業で習ったはずなんだけど」
なんだろう今更。
「魔石には属性があるのね」
「うん知ってる、オークは確か……地?」
「そうよ地属性の魔石、ではミミックは?」
なんだっけ、そもそもそこまで授業で教えてもらったっけ?
「ヒント、ミストくんが魔女に呑まされた魔石のどっちかよ」
「どっちかっていうとあれって光と闇が……あ、闇属性!」
「そうよ、ミミックやサキュバスやアンデッド系が持っている魔石よ」
確か光魔石に次いで貴重だったはず!」
「じゃあミミックの養殖というより闇魔石の採掘的な?」
「採掘っていうか、あとはミミックの外殻は盾や鎧の素材になるわ」
「ミミック自体がレアですからそれは売れますね」
これはオーク肉とは別の特産品にできそうだ!
「あとこれはまだ秘密なんだけれど、例の魔女の技術を応用して、
闇魔石と私とベルルちゃんの光魔法で、面白い事ができるかもしれないの」
「え、どんな?僕が呑まされたような?」
「あれは魔力が非常に強い聖女が、自分を魔物化しないと作れないから無理よ」
「じゃあどんな」
あ、ふと見ると普通の人、ミミック養殖の作業員みたいな人が来た。
「んーここでは言えないわね」
「うん、その方がいいと思います」
「あの領主様、あと、とっておきのものがぁ」
サリーさんと作業員についていくとさらに地下へ。
「こちらですぅ」
「わ、ちっこいのがいっぱいいる!」
「ミミックの子供ですぅ」
かわいい、器用にぴょんぴょん跳ねてる。
「生まれた時から人の手で育てればティムできるかもという実検と、あとぉ」
「あと?」
「こちらを食べてみてくださぁい」
作業員から渡されたのは、茹でたミミックの子供?!
蓋がパカッと開いていて身がくり抜かれてスプーンが刺さってる、
渡してくれた男性作業員が説明する。
「すでに小さい魔石や硬い筋は取り除いてあります」
「食べられるんですか?」
「大きいミミックの肉はとても無理ですが、子供なら丸一日煮込めば」
ちゃんとお水も持ってきてくれている、
ここは試しに、えいっ、と食べると口の中に濃厚な味が広がる!
「んまあああああああああい!!」
なにこれ、こんなの初めて!
噛むと意外とやわらかいし、
何だろうこれ、牛系モンスターの舌を煮込んだやつの何倍も濃厚だ、
おそらく何もつけていないのにこの味は凄い、
あっというまに食べ終わってしまった、お腹いっぱいだったのに!
「これは高級食材になるわね」
「はいですわ、食べ終わった後のさっぱりしたデザートが引き立ちますわ」
「わっ、私も、サリーも食べ終わったとき、すごいって思いましたっ」
みんなにも配られていて大絶賛だ、
ミミックって食べられない肉の代名詞みたいなものだったのに!
「よく気付きましたね」
「その、リアお姉様から以前、アメリア様がミミックの子供は
めったに見かけないけど肉を煮込むと美味しいという話を聞いていたそうで、そのっ」
「養殖でこれが出せたらすごいね」
うん、儲かる匂いしかしない!
「それでミミックの餌は?」
殻とスプーンを回収する作業員さんが答える。
「オークと同じように雑食です、むしろオークより雑食です」
「じゃあ何でもいいの?」
「中のほとんど入っていないパーシブの実でも平気で食べます、もちろんオーク肉も」
あまったオーク肉はまとめてミミックの餌にできそうだ。
「ちなみに最下層に温泉があるのはご存じで?」
「えっ何それ知らない」
作業員さんに飲み終わった水のコップを渡すソフィーさんが代わりに答える。
「ボス部屋の奥に湧いてたのだけれど、沸騰してて人は入れないの」
「そうだったんですか」
僕も飲み干したコップを渡すと再び作業員が答える。
「ミミックを茹でるのはそこでやっています」
「なるほど、それは楽ですね」
生きたまま放り込んでいるのだろうか、
さすがに暴れるだろうから危なそうだ。
「見学なさいますか?」
「ま、まあ見るだけなら」
とまあ見た結果は安全だった、
ミミックを閉じ込める檻はベルルちゃんが出発前に、
大きな檻を魔法のクリスタルでコーティングしたものらしい、
いつのまにそんなの作ったんだって聞くと、
ミミックダンジョン攻略が終わった時点ですでに考え付いたそうだ。
(これでミミックを茹でれば簡単に倒せますわ、とか言ったんだろうな)
子供ミミックを茹でるには檻の隙間があるからそこまでは考えてなかったんだろうけど、
小さい温泉に重いミミックの蓋があったからそっちを使っているのだろう。
「ミストくん、これでとりあえず産業としては合格に思えます」
「はい、オーク養殖場七か所、ミミック養殖場一か所、あとは街の整備ですね」
「大きなアピールとしては街の中で安全に養殖できるっていう事よ」
そうだった、ここも街予定地の一部だ。
「ではミストくんのリクエストに応えて、街をざっと見て帰りましょう」
そうして外に出た後は要所要所の予定地を回る、
コロシアム予定地では早速というかアメリアさんが騎士団相手に稽古をつけていたり、
街からさらに外の、深いオークの森への門ができていて冒険者を誘ったり、
高級宿もしくは娼館の予定地が領主邸予定地よりかなり遠いのを確認したりした。
「ミストくん、娼館建てるのはミストくんの判断だけれどもミストくんは行っちゃ駄目よ?」
「は、はいもちろんです」
「ミスト様、そのためにあのメイドをふたり雇ったという面もお忘れなくですわ」
やっぱりかーー!
それもあったのかですよねーと思いながら街の下見は終わった、
そして馬車は元の巨大魔導昇降機に戻ってきて僕らは上へ。
「アメリアさん置いてきて良かったんですか」
「置いてくるも何も最初から自分での行動よ」
「そうですわ、ご自分でスッキリされて戻ってきますわ」
そして上についたら別の馬車が村の入り口まで戻る所だったので乗せてもらう、
荷台部分なので普通に揺れるがそこはソフィーさんが魔法で安定してくれた、
フリチンで畑仕事を続けるマンタ爺さんを横目に馬車は女神噴水の前まで戻ってきた。
「さて、各教会の説明はそれぞれがするのでミストくんは大丈夫よ」
「そうですわ、ではこれから教会の建設状況を見てまわりますわ」
「そうね私も行くわ、じゃあサリーさん、後はよろしくね」
そう言ってソフィーさんは大教会の、
ベルルちゃんは聖教会の建設中の建物に入っていった、
残されたのは僕とサリーさん。
「凄いですね、本当に街になるんだあって感じです」
「移住者も絶賛募集中ですぅ、あ、ほらぁ、観光案内の方がぁ」
まだ作ってる途中の街なのにもう観光客が来ているのか、
と思ったら旗を持った女性ガイドが巨大ベッドの前で説明を始めた。
「はーい、このベッド、こんな所になぜ?と思うでしょう、これ実は!
ここフォレチトンの領主様が毎晩眠ってらっしゃるベッドと、まったく同じ物なのです!」
うん、まだその予定だけれども。
「ではなぜここにあるかと申しますと、ここの領主様が悪さをした時、
ここで奥様となられる聖女様が、公開でお仕置をされるそうです!」
ええええええええええええ?!
「その恥辱行為をするための処刑台とでも言えますね、
お仕置は完全一般公開だそうですから領主様と聖女様のベッドでの行為を
生で見られるというめったにない体験ができるかもしれません!」
何されるのここでー!
「ちなみにそういった『子作りの一般公開』はめったに行われないと思われるので、
普段は空いていればどなたでも自由に座ったり寝たりできるそうです、
もちろんここで寝泊まりしても構いませんが貴重品の取り扱いにはご注意下さいね」
知らない間に僕専用のえげつないお仕置場が出来ていた
だめ貴族だもの。 ミスト
あーサリーさんが何かつぶやいている。
「わっ、わたしもリア先輩にここでお仕置され、たいぃ……ふひっ」
駄目だ、これはそっとしておこう。
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