第55話 突然、リア先生と村案内デート
ソフィーさんベルルちゃんが領主邸で休むので、
僕とプリマさんとサリーさんでリア先生のお見送りだ。
「予定より遅れたが出発だ」
「そういえば昨日、朝食終わってすぐ起つって言ってましたものね」
「そのつもりだったが走行中の地震は危ないと止められてしまってな」
あ、なるほどさっきの。
プリマさんとサリーさんがリア先生の前に立つ。
「リアさん、必ず、戻ったら必ずまたギルマスルームまで来てくださいね!」
「リアお姉様、お姉様のためにも、サリー、がんばりますっ!」
「ああ、ふたりとも留守を頼んだ、そしてミスト」
僕の真正面に来たリア先生、
……今度はおでこと唇どっちにキスするんだろう?
と思って身構えていたら騎士団の兵士がやってきた。
「失礼いたします、副団長殿、先ほどの地震で馬車に不具合が発生しました!」
「……具体的には?」
「はっ、馬車二台の車輪が合計みっつ外れ、先頭馬車の魔石も出力が半減、馬も怯えております」
あーこれは仕方がない、ちょっと時間かかりそう。
「そうかわかった、一時間待つ、それで何とかせよ」
「ははっ」
「……という事でミスト、その間、フォレチトンを見て回ろうではないか」
へっ?!
と思ったらサリーさんが食いついた。
「サリーも!サリーもお供いたしますです、はいぃ」
「すまないサリー、少し空気を読んでくれないか」
「えー」
プリマさんがサリーさんを羽交い絞めにする。
「さあリアさん、行ってらしてください」
「ああすまない、ではミスト、行こうか」
「えええええプリマ先輩ううう裏切り者ですううう!!!」
さわがしいメカクレちゃんを置いてふたりで向かったのはまず噴水広場だ。
「立派な女神の噴水じゃないか」
「あ、これこの間修繕したんです、僕とソフィーさんとベルルちゃんで」
「三人でか?わざわざ領主と正妻側室で」
これには訳がありまして、という感じで僕は先日の出来事を回想して話す。
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「えっとソフィーさんベルルちゃん、これ今から直すの?」
「そうです、学院で行った行事の再現です」
「王都の戦勝記念公園での大掃除、覚えてらっしゃいますかしら?」
そういえば一年のときやらされたけどあの時は……
「覚えてはいるけどアレグとメイソンと三人で、
みんなが行く前に学院から公園までの掃除をやって、
終わった後に同じ道を反対から掃除しただけだった」
「という事でやり直しという訳ではありませんが、一緒にここの修理と掃除です」
「そうですわ、わたくしの時も当日は噴水の浄化魔法だけで、つまらなかったのですわ」
GクラスもSクラスも両極端ながら、どっちもつまらなかったのか。
「まずは女神像を作り直しましょう」
「作り直す?」
「元栓はこちらですわ、締めてさしあげますわ」
硬そうな栓をクリスタルの杖から出した光の縄で絡めて閉めるベルルちゃん、
下半分からしか出てなかった噴水が止まって沈黙の女神像(半壊)となった。
「こちらもですわ」
再び光の縄を放ち、女神像に絡めると粉々になってきらきら光りながら消滅した。
「すごい、さすが魔法だ」
「では新しいのを作りますわ」
アイテム袋から綺麗な透明の魔石を十個も出した、
それを女神像のあった所へ置いて杖から光を放つと、
みるみるうちに新しい、綺麗な純白の女神像になった。
「すごい、最初の、さっきのより大きくて立派だ」
「水も五方向から出ますわ、真上と前後左右ですの」
「それは見てみたい」
「ミストくん、その前にこれよ」
「ソフィーさん、それはブラシ?!」
柄の長い掃除用ブラシをみっつ持っていて僕とベルルちゃんに渡す。
「水が止まっている今、底を掃除するチャンスよ」
「ぼ、僕はいいけどソフィーさんとベルルちゃんがやるのは、いいの?」
「これをしに来たようなものですわ、学院では、やらせていただけませんでしたから」
なるほど、と思いながら僕ら三人は共同作業で底やあちこちをゴシゴシする、
なんだか領地のため、フォレチトンのためにやっているって感じがして楽しい。
「こういうのこそ、学院でやりたかったなあ」
「今ここでミストくんと一緒にやっていますから」
「そうですわ、これもちゃんと学院再テストの評価に入れてさしあげますわ」
こうして良い汗の流れる、楽しい噴水掃除を満喫したのだった。
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「……という感じで綺麗にしたんですよ」
「それは私も混ざりたかったな、学院では見ているだけだったから」
「先生ですものね、汚れたら今度は四人、いや五人、六人かな?みんなでやりましょう」
でもやっぱりアメリア先生が噴水掃除するのは見たくはないかな、腰痛めそう。
「この台座も洗ったのか」
「いえ、これはこのまま、ていうか元々何のための台座なんです?」
噴水前の大きいベッドみたいな台座、
僕が最初に父上から受けた説明では
アーサー=チュニビッフィ伯爵像の台座だったはずなんだけど。
「今更聞いても意味はない、ここを今後どう使うかだ」
「どうしましょうね」
「実はもう決まっている、ソフィー発案だ、
ミストが冒険から帰ってきたら出来上がっているだろう」
出来上がっている……?
「ひょっとして、僕の銅像ですか?」
「見たいか?」
「いえ、あんまり」
というか、嫌だ。
「安心してくれ、像ではない」
「ほっ、よかった、って像じゃなければ僕の絵とか?」
「絵でもない、ミストに関係あるかといえばあるが、完成してからのお楽しみだ」
意味深だなあ、と思いながら以前ソフィーさんベルルちゃんとデートした道を歩く。
「あ、まだ無人販売所あるんだ」
「パーシブの実か、どれ」
ひとつ取って空中に放つと剣で四つに割った!
「すごいすごい」
「お代はここか、入れたぞ」
「すみませんご馳走になって」
うん、おいしい、リア先生と並んで食べると、なお美味しい。
「廃屋も酷いのは壊し、直せるのは綺麗に直している」
「バーナレー大商会がやってくれてるんでしたっけ」
「少し前までやっていた、だな、今はチュニビとカジーラで再編成した自前の組織だ」
村唯一の有人商店に着くと活気があふれていた、
まだ所々棚が崩れているが事前に地震の告知があったようで混乱は無い。
「さっきミストが言っていたバーナレー商会が、形だけ作ってくれていたので引継ぎは楽だったようだ」
「どうして急に撤退しちゃったんでしょうね」
「さあな、おそらく自分たちはここに相応しくないと感づかされる出来事でもあったのだろう」
今まで見なかったような魔道具が取り揃えられてる、
まだバーナレー商会の箱もいっぱいあるので本当に急に出て行ったのだろう。
「騎士団の方々も警備してくれていますね、ありがたい」
「仕事があるのは良い事だ、うむご苦労」
リア先生だけじゃなく僕にも敬礼してくれている。
そんな商店を抜けると畑が連なる道へ出る、
地震が合図だったのか人がぽつぽつ戻ってきてて、
いつもの畑にいつものワーウルフ連れのお爺さんがいた、
うん全裸だ、これでこそのマンタ爺さんだ、リア先生なら大丈夫だろう。
「マンタ爺ちゃん!」
「おうスッケベ坊主じゃないか!」
うん、爺ちゃんだけはスケベと言い続けてくれて構わない。
「えっと、三人目の奥さんです」
「お初にお目にかかります、王国騎士団副団長、リア=アベルクスです」
「おうっ、ワシはマンタ、これでもこの国で昔、十七番目に偉かったのじゃ!」
ああっリア先生相手にそれはシャレにならないんじゃあ。
「はて、こちらの資料ですと十四番目だったはずでは」
「ぎくり!!」
「……冗談です、以後、お見知りおきを」
なぜだか本気でどっきりしていたように見えたけど、まさか、ね。
「そうだ、マンタ爺ちゃん、オークの森が」
「おお見たぞ、綺麗さっぱりじゃ」
「個人的に爺ちゃんのお屋敷も建てたいな」
「いいやワシは質素な掘っ立て小屋で十分じゃ」
「そんな事言わないでよマンタ爺ちゃん」
そんな会話をした後、僕とリア先生はあらためて崖まで行った、
オークの森がほとんど更地、人の集団がいくつか動いているから早速調査か、
知らない間に下りの階段も復活している、きっとあの時さっさと無詠唱でやったのだろう。
「……本当に凄いですね、ソフィーさんとベルルちゃんの魔法」
「ミスト、よく覚えておくといい、あのふたりはミストのためなら何だってするだろう」
「どうしてそんなに僕に惚れてるでしょうか、元々プロポーズしたのは僕ですよね?」
黙り込んでしまうリア先生。
「……ひょっとして、僕、プロポーズするように、仕組まれた?」
「そこまで大袈裟なものではないにせよ、誘導はされていただろうな」
「えっ、やっぱり?!じゃあもし僕がプロポーズしないで帰ろうとしていたら」
「ソフィーが直接か間接的に頼んだ誰かがプロポーズくらいして行けと言っていただろう」
「僕だったらそこまで言われたら断れないや、なるほど、じゃあ僕はプロポーズさせられてたんですね」
凄くホッとした、
僕のプロポーズを受けたのは明確に僕だったから、という事になるからだ。
「さてミスト、まだヒントもやれないが、聖女ふたりがミストを好きな理由に心当たりは」
「いえまったく、全然」
「そうか、私はミストが正解を当ててしまう事が楽しみでもあり、不安でもある」
「えっ、そういう答えなんですか?!」
「……ヒントになってしまったか、すまない、今のは忘れてくれ」
知ると何かが変わってしまうのだろうか……?
「さあ、そろそろだろう、戻ろう」
馬車まで戻るとすでに騎士団がいつでも出発できるようになっていた、
先ほど、故障を説明していた兵士の耳元でリア先生がつぶやく。
「……気を使ってもらって済まない」
と言っていたように聞こえた。
「さあミスト、少しの間とはいえお別れだ」
「はいリア先生、その、チュニビでお会いしましょう」
「ああ、またな」
おでこにチュッ、としてくれたあと、唇も軽く触れてくれた。
「行ってらっしゃい!」
軽く手を振ってくれたリア先生、
うん、僕の三番目の奥さんだ。
「あああ行ってしまいましたあ」
「でもサリーちゃん、よく我慢しました、えらいえらい」
いつのまにか後ろにプリマさんとサリーさん、ついでにモリィさんがいた。
「んもうサリーもリアお姉様に、せめてハグしてもらいたかったですぅ」
心底ガッカリしている、フォローしなくちゃ。
「ええっとサリーさん、その、いっそ僕では」
「あ”あ”?!」
本気で『何言ってるんだコイツ』って顔された
だめ貴族だもの。 ミスト
「あわわわわごめんなさいいいぃぃぃ」
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