第三章 冒険者活動本格化そして男爵へ編
第53話 整理しよう、男爵への道
僕が準男爵になって二週間が過ぎた、
フォレチトンはとりあえず今できる開拓のために賑わっていて、
おそらく一時的ではあるものの、多くの人で活気にあふれている。
(でもこれって、人を呼び込むための準備だからなあ)
このあたりの予算は国からの貸付金にチュニビ・カジーラからの一連の賠償金、
ソフィーさんの事実上の持参金や、
僕がアピールした『貸し』こと貴族含む一般の提供貸付金によるものだ、
それでもまだまだ本格的な開発資金には足りないし、
これだけやって人が来ませんでした、だと普通に破産する。
(そのあたりの計画、どうなっているのだろう)
夕食を終えると『居間で待ってて』と言われたのでくつろいでいる、
僕の他にはアメリア先生と、今日合流したばかりのリア先生だ。
「伯母上、ミストの様子は」
「テストはまあまあね、ようやく形になってきたわ」
「すみません、同じ内容のテストなのにまだ時間かかってしまって」
さすがに馬車で受けた時よりも点数は上がったが、
普通ならまったく出題が同じであれば、もう満点でないとおかしい。
「それで伯母上、ミストのあっちの方は」
「まだまだね、女の喜ばせ方を、もっと躾けないと駄目ね」
「すみません、同じ内容の繰り返しって怒られました」
などと会話してるとソフィーさんベルルちゃんと、メイドのふたりがやってきた。
「お待たせ、来週からの予定が決まったので打ち合わせします」
「今後の、ミスト様が早急に男爵へなるための行動ですわ」
聖女ふたりの話のあと、メイドふたりから地図が配られる、
「これは……?」
「ふむ、チュニビ北東にある魔の森だな」
「このあたりは国境と面しているようね」
剣聖と勇者は大して説明もないのにすぐ言い当てた、凄い。
「チュニビの新辺境伯、武神ガブリエル=ソルナンシュ様からの正式な依頼です」
「実際はその奥方でいらっしゃいます、アイリス=ソルナンシュ辺境伯夫人からですわ」
あーなんかカジーラで面会したとき、そんな事を言っていたような。
「チュニビは以前まで魔薬草の栽培の事実を隠すため、あえて魔物を野放しにしていました」
「まったく狩らなかった訳ではありませんが、バランスを微妙に取っていたようですわ」
「つまりアレか、国に魔物の被害が大きく及ばないようにしつつ、脅威も保たせると」
そう言ったリア先生の表情が険しい、犠牲者とか出ていそうだからなあ。
「あえて魔物地帯の中に魔薬草の栽培所を作る事で、ばれないようにしていたようです」
「もちろん安全な場所でも多少は作っていたようですわ、フォレチトンとの境にも」
僕が途中で見たやつか、あれは小規模っぽかったもんな。
「しかし無駄に犠牲を出しつつ守っていた魔薬草も、もう摘発されました」
「そこで、あのあたりの森の魔物を、一気に減らして欲しいとの依頼ですわ」
「ふむ、冒険者パーティー、ポークレットファミリーへの依頼だな」
「魔物に関しては任せてちょうだい、まだまだやれるわ」
アメリア先生がやる気なのは本当に頼もしい。
「ダンジョンもいくつかありますが、ひとつだけ非常に深いダンジョンがあります」
「そこのボスさえ倒せれば、後はそこまで大した事はないようですわ」
「逆に言えばそのボスがやっかいなのだな?」
「それはそうと、国境への道にあるこの×は何かしら?」
アメリア先生の疑問にリアさんが答える。
「そこは魔女の出没地帯です、隣国との貿易に必要な山越えルートなのですが、
よく魔女と山賊の一味が現れて、積み荷を奪ったり人を殺したり攫ったりするそうです」
「そちらの解決、魔女の捕縛と山賊の一掃、行方不明者の捜索も依頼されていますわ」
こっちもこっちで大変そうだ。
「以上ふたつのクエストが冒険者ギルドを通してポークレットファミリーまで来ています」
「依頼主はチュニビのソルナンシュ辺境伯ならびに国と冒険者ギルドからですわ」
「ちなみに私も国からの出向として参加する、王国騎士団副団長の私と、それと特別顧問の伯母上もだ」
「まだまだ私も騎士団の一員として魔物を倒せるわ、嬉しい話ね」
なるほど、アメリア先生っていまはそういう肩書きなのか。
「この依頼を、クエストをクリアすれば、武神ガブリエルさんから男爵の推薦がもらえます」
「あとはフォレチトンの開発計画がお城に認められれば、すみやかに男爵になれますわ」
「ミスト、男爵の基準程度なら一時的な、書類上の移住でも十分、人口を稼ぐ事ができるぞ」
それっていいのかなあ?まあ、いいからやるんだろうけど。
「という事でミストくん、来週からしばらくは冒険者です」
「一か月くらいはかかりますわ、勉強は夜の空いた時間にしましてよ」
「そこでだミスト、留守になるここを預かる中心人物に明日、会ってもらいたい」
「えっ、僕が会った事のある人ですか?」
「いや初対面だ、その者も王国騎士団からの出向という事になっているが、まあ詳しくは明日だ」
誰だろう?というか、また留守番させちゃうのか、王国騎士団さんごめんなさいだ。
「あらリア、ひょっとしてリアの弟?」
「いえ伯母上、女性です、学院時代の後輩で、伯母上にもきちんと紹介します」
リア先生の弟も騎士団に居るのか、一度会ってみたいかも。
「明日は準備、明後日は朝からカジーラを通らず最短でチュビニへ行きますね」
「えっ、父さん母さんやエスリンちゃんには会えないの?」
「時間がありませんの、魔物を抑えていた者も何人か捕縛されたせいで、
どんどん押されて街まで迫ってきているようですわ、犠牲者はできるだけ減らしませんと」
「それにミストくんに会っていただきたい方のいる町もありますから」
「えっ誰だろう?じゃあ、終わらせた帰りにはカジーラへ寄れますか?」
頷くソフィーさん、まあ仕方ないか。
「私は所用で行きもカジーラ経由だ、チュニビへは一日遅れる、
その一日分は新領主との顔合わせに使ってくれ」
「ガブリエルは私の知り合いだから任せてちょうだい、懐かしいわ、本当に」
アメリア先生と同じ勇者爵の持ち主、同じ十二英雄だから色々と思い出があるんだろうなぁ。
「そうだ、今回ってキリィさんモリィさんは」
「微力ながら私たちもお供させていただきます」
「ポークレットファミリーという冒険者パーティーの一員ですので」
「そうなんだ、良かった、すごく心強い」
「おふたりは主にミストくんの護衛よ、ミストくんはポーターに専念ね」
任されてるのか心配されてるのか、僕の立場って……。
「ミスト様、ミスト様あってこそのポークレットファミリーですわ」
「あはは、ベルルちゃん、ありがとう」
「さてミスト、エスリンからの手紙だ、ミストからの手紙を受け取った時、非常に喜んでいたぞ」
「ほ、本当ですか?!」
「ああ間違いない、返事も一生懸命書いていた、明日までにまた書いてやってくれ」
この場に居ない第四夫人のエスリンちゃん、
これだけ最高の第一第二第三夫人が居てくれていながら、
最初の、本来の婚約者だっただけに想いは募る一方だ。
「ではミストくんが手紙を早く読みたいようなので今日はここまでで」
「明日は朝食が終わったら、みなさん一緒に冒険者ギルドですわ」
「済まないが私は皆と朝食を終えたらすぐカジーラだ、伯母上、お願いします」
「任せて頂戴、私はポークレットファミリーのリーダーですものね」
「アメリア先生には頭が下がります、よろしくお願いします」
という僕の言葉で解散となりソフィーさんはお風呂へ、
ベルルちゃんは書斎へ行った、あえて僕をベッドでひとりにしてくれたみたいだ、
僕はエスリンちゃんからの手紙を寝そべりながら読む。
『拝啓ミスト様、お返事ありがとうございます、私も早く直接お会いしたいです、
準男爵就任おめでとうございます、成長したミスト様は本当に立派に、
素敵になられて、嬉しい気持ちになりました。
私も早く心の病気を治して、ミスト様の所で一緒に住みたいです、
先日はリア様と一緒に外へお出かけしました、まだ人影は怖いですが、
リア様が護ってくださっていたので、短い時間ながら何とかなりました、
これからも徐々に徐々に慣れていって、きちんと人前に出られるようになりたいです。
治療を進めるため、今度モラベスクの聖女様の所でしばらく治療を受ける事になりました、
距離は離れてしまいますが心と心は空で繋がっています、空を見上げればミスト様と繋がっている、
そう思って治療を頑張りますから、どうかミスト様も空から私を感じ取って下さい。
一日も早くお会いできる日を心待ちにしながら エスリン=ポークレットより』
(ううう、エスリンちゃん……)
また涙がこぼれた、僕は早速返事を書きはじめる、
明日朝にリア先生が出てしまう、その前に渡さないと。
「よーし、早く男爵になって、エスリンちゃんに、報告に行くぞー!!」
だがその字はあいかわらず汚かった
だめ貴族だもの。 ミスト
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