第35話 オークの森浄化作戦

「ブヒイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」

「よし、片付いたわね」


 目的地だったオークの森最大と見られるダンジョン、

 その最下層、地下三十階のボスを退治した所だ、とどめはアメリア先生、

 そしてリア先生が倒し終わった四匹のオークを確認している。


「オークエンペラーにオーククイーン、オークプリンスにオークプリンセスか」

「このオークエンペラー、クラウン付きだから間違いなくこのエリアの首領ボスね」

「伯母上さすがでした、このクラスでさえも瞬殺できるのは知る限り、あとは騎士団長くらいかと」

「勇者クラスなら誰でもできるし、他の三匹をみんなが抑えていてくれてたおかげよ」

「逆です、伯母上が一番やっかいなのを倒してくれるおかげで皆、楽に……」


 なんて褒め合っているうちに僕はオーク一家惨殺事件の四遺体を回収する、

 オークのお母さんが何か大層な杖を持っていたがレアドロップなんだろうか?

 ボス部屋を見回すとオークのくせに玉座まであって後ろに宝箱があった。


「これなんだろ」

「……罠ではないようね、ミストくん、開けてみて」

「はい……これは、綺麗な指輪がふたつも!」


 ただしオークサイズだ。


「これはレアアイテムですわ、生命の指輪といって、つけた者の能力を上げる指輪ですわ」

「ベルルちゃんよく知ってるね」

「これには、とあるオプションがありましてよ、ある加工をすると輝く生命の指輪になりますの」

「ああそれは聞いた事あるな、かなり面倒くさい方法だが」

「リア先生も知ってたんですか、その方法って?」


 と話していたら、ボスを倒したあと姿が見えなかったメイドふたりが、別の扉から出てきた。


「面白い物を見つけました」

「是非見てください、なかなかのものです」


 ついていってみると、そこにあったのは……


「わあ!すごい!これって、温泉?!」


 溢れる湯気と匂いで一発でわかった、

 オークが整備したせいかかなり粗い作りではあるものの、

 ちゃんと換気も地上まで昇るようになっている巨大風呂だ、ソフィーさんもびっくり。


「さすがオークの領主ですね、結構深そうですが」

「浄化魔法をかけてみますわ、えいっ」


 ベルルちゃんがクリスタルの杖を出して魔法をかけると、

 ドロドロしていた感じのお湯が一瞬だけ綺麗になった、

 でもまた濁ったお湯が混じる、一度本格的に掃除した方が良さそうだ。


「ふむ、見た感じ、溺れるほどの深さではなさそうだな」

「そうね、この手の温泉は美容にも良さそうね、入れるかしら?」


 リアさんアメリアさん両先生の声に、

 メイドのキリィさんが手を入れて確かめる。


「場所によりそうですね、湧き出る部分は熱そうですが淵はぬるめです」

「深さも外であればあるほど浅いので入りやすそうです、ちなみに中に魔物はいません」


 モリィさんのお墨付きも出た、ソフィーさんが少し考えたのち凄い事を言う。


「みなさん、外はもう夜でしょうし、今夜はここで泊まっていきましょう、いかがですかアメリアさん」

「そうね、お風呂もある事ですし、わざわざ地上で野営する必要はないわね」

「ということでさっきのボスの部屋で食事にしましょう」


 確かに明日もオークの森の残り半分を調査しないといけないから、

 どうせ泊まるならここがいいかも知れない、オーク王の寝室とかありそうだし。


「ミストくん、用意するから手伝ってくださいね」

「は、はいっ!」


 やった仕事だ!と喜んで敷物やら食器類やらをポーターバックから出す、

 食事はメイドふたりがすでに作ってきたものを預かっている、

 それを並べてみんなの分揃える、うん、完璧だ、良い仕事をした!


「それではこの地域のボス制圧を祝して、乾杯!」

「「「「「「かんぱ~~い」」」」」」


 アメリアさんの号令で皆一気に飲む、僕は果実汁だけど。


「さて、これからの予定をソフィーから頼む」

「はい、残りのダンジョンを全て攻略、オークの森も全て踏破して地図を完成させたら、

 ベルルちゃんと一緒に大規模な浄化魔法をかけて、この森一帯の魔物の力を弱めます」


 そんなことできるんだ……


「はいですの、さらにかつてフォレチトン村にわたくの大お婆様がかけたような結界魔法も施しますわ」

「それで今回のミッション、依頼クエストは終了になりますね」

「え、結界ってことは、オークの森を完全に浄化しちゃうの?魔物なくしちゃうの?」

「ほぼそうなりますね、とはいっても奥にはもっと他の森も沢山ありますから、

 村隣りのいちエリアくらいでしたら問題ないかと、すでにこれは計画の一部ですから」

「では食事をいただきましょう、そのあとは、皆さんであのお風呂を堪能しましょうね」


 みなさんでって、アメリアさん、みなさんでって!

 という事は、ぼ、ぼぼぼぼぼ、ぼくもーーー?!


「伯母上、久しぶりに伯母上の背中を流させてもらいたい」

「あの広いお風呂は楽しみね」

「はいですわ、わたくしでも大丈夫な浅い場所もありましたわ」


 みんな普通に入る気でいるけど、

 リア先生やメイドふたりも居る訳だし、

 さすがに一緒という訳じゃないよね、とパンをはむはむしながら考える。


「ミストくん」

「はひっ?!」

「ポークレットファミリーみんなでお風呂、楽しそうね」

「そ、そうですね」

「ミスト様、広いからといって泳いではいけませんよ?」


 ……僕も一緒に入るんですか、なんて聞けない!


「ああそうだミスト」

「んっ、なんでしょうリア先生」

「伯母上の次はミストも洗ってやるからな」

「ええーーーー!!」

「嫌か?遠慮するな、それくらいミストとの距離を詰めさせてくれ」


 近すぎだよ!!


「その、ソフィーさん、いいのですか」

「はい、リア先生ですからね、大切な仲間です」

「パーティーだからって、そんな」

「あらパーティーでもありファミリーでもありますわよ?」

「遠慮するな、男の身体を洗うのは弟ふたりで慣れている」


 ふたりもいたんだ弟。


「そ、それじゃあ、お、お願い、します……で、いいのかな」


 といいつつ混浴温泉にめっちゃ興奮する

               だめ貴族だもの。 ミスト

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る