第15話 ふたり目の婚約者です!

「朝ごはんですよ」


 ゆっくり目お婆ちゃんメイドが呼びに来てくれた、

 ベルルちゃんを見て少し動きが止まったが、ゆっくりと出ていく。


「そうだ!ベルルちゃんって昨日一日食事はどうしてたの」

「きちんと保存食を持ってきていましたし、水はこちらで現地調達を」

「えっ、いつのまに?この屋敷でずっと箱の中に隠れてたんじゃなかったの?」

「いいえ、馬車から抜け出した後は比較的まともな空家を失敬させていただいておりましたわ」

「そうなんだ、まったく気付かなかった……じゃ、朝食ついてに家族に紹介するよ」


 びっくりするだろうな、

 というか僕だって今もびっくりしている最中のようなものだし……

 廊下に出ると父上が丁度、母上をお姫様抱っこで食卓へ連れて行く所だった。


「男前の父上にご報告が!新しい婚約者です!」

「もうか?もうなのか?!」

「はじめましてお義父様、お義母様、ヴェルカーク聖教会からこっそり嫁に参りました、ヴェルカーク=ベルルでございますわ」


 こっそり?!いま、こっそりって言ったよね?!


「オホン、我はローガン=ポークレット、このフォレチトンの領主だ」

「せ、聖教会から……あぁ、あぁ……」


 母上が父上から降りて、頭を下げて伏している。


「信仰を疎かにして申し訳ありません……」

「いいえ良いですわ、わたくしが嫁ぐ以上は、女神セレネ様への全ての罪も功績も、

 ポークレット家の中で一緒になりますから、ご安心くださいませ」

「もったいないお言葉、ありがとうございます……」


 あっ、母上は聖教会の方だったのか、

 父上が少し考え込んだのち、驚きの表情になった。


「ヴェルカーク……ヴェルカーク?!聖教会で最大派閥の、あの?!」

「ですが六女ですから、わたくしひとり嫁に出てもまったく問題などございませんわ」

「いやはや頭が痛い……息子よ、王都で何があった」

「そのあたりは食事しながら話します、母上も起きて」

「お義母様、起きてくださいまし」

「もったいないお言葉、ありがとうございます……」


 食卓ではちゃんと四人分用意されてた、

 ソフィーさんの分だったのか急いでお婆ちゃんメイドが用意してくれたのかわからないけど、

 メニューの内容はなんとなくソフィーさん考案な感じがする、うちにはなかなか出せない、きちんとした朝食だ、

 みんな座って父上の挨拶で食べ始める所だが、ベルルちゃんが母上の前の水に魔法をかけた、続いてベルルちゃんの前のにも。


「あれ?何したの?」

「聖教会の信徒は獣の肉を食べる前、聖水を飲まなくてはいけませんの、その処置をいたしましたわ」

「えっ、そうなの?夕べ母上そんなことしてたっけ」

「今は魔力はほとんどないけど一応、手はかざしてたわよ?」

「なるほど、普通の水を浄化魔法か何かで聖水にしてから肉を食べるんだ」


 確かに今日の朝食にはオーク肉のスープがあるからな。


「おはよう、では、いただこうか」


 父上の言葉でみんな食べ始める、

 さっきまでのソフィーさんが連れ去られた事件が嘘のようだ。


「ベルルちゃん、その、本当にソフィーさんは」

「何の問題もありませんわ、もし何の連絡もなく五日間帰ってこなければ、わたしくが様子を見てきますわ」

「そんなことしたら、ベルルちゃんまで戻ってこないんじゃ?!」

「わたしく、そんなに弱くありませんことよ?もっとも、ソフィーお姉様の方がお強いですわ」

「本当に、本当に信じて……いいん、だよね?」


 ……元々ソフィーさんもベルルちゃんも、なぜ来たのかわからないと言っていい、

 その二人がいなくなった所で、ある意味、本来の普通の状況になるだけとも言える、

 でもやっぱり夕べ愛し合ったソフィーさんを幻にはしたくは無い、うう、助けに行きたい!


「息子よ、そのベルルさんとは学院で知り合ったのだな?」

「はい、本来なら二学年下なのですが、飛び級で一年で卒業してしまって、そのまま家へ」

「なぜだ?なぜウチなのだ?!」

「ええっと、僕の誕生日プレゼントらしいです」

「ん?ん?ん???」


 わかる、僕も頭からいっぱいハテナは出した。


「あ、あの、ベルル様」


 母上が恐縮しながら震える声を出した。


「お義母様、お義母様になるのですからベルルで良いですわよ?」

「はいっ、ベルル、さん、王都のアビゲイル聖司教さまは、ご健在でしょうか」

「あの大お婆さまなら元気ですわ、あと百年は生きてもおかしくないくらいですわよ」

「そんなに……あぁ、いつかもう一度お会いしたく思っております」

「お義母様の身体、朝食が終わったら見せていただきますわね、ソフィーお姉様では完治まではできていないようですので」


 そういやソフィーさん、朝食も食べずに連れて行かれたんだよな?

 お腹空いてないかなあ、大丈夫かなあ、どんな扱いを受けているか心配だ、

 エスリンも連れ去られてから一度も目にしてないし噂すら聞かないから、どうなっているか……



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~一方その頃、ソフィーの馬車は~


「……ということで我々チュニヘルク一族はアルドライド王国の東部を一手に担っているんだよ!」

「東部と言っても東端の、他国や魔物の森との単なる緩衝地帯ですよね?」

「そこを徐々に押し広げているんだよ!きっとチュニビはこのまま行けば領土を広げ今の二倍、三倍、いやそれ以上になる!」

「夢物語ですわね」

「君の力があれば可能だ!どうだ、我々と国の半分を手に入れようじゃないか、そしていずれは独立すら考えている!」


 普段はミストには絶対に見せないような冷たい表情で聞いているソフィー、そこには恐ろしさすら感じる。


「それは謀反を企てているということですね?」

「将来の可能性の話さ、今すぐどうこうって事はない、でもそれが可能な理由をこれから見せてあげるよ」

「何かわかりませんが見せて良いものなのですか?」

「ああ、もし君がおかしな事をしたらすぐにフォレチトンは領主もろとも焼き払うからな!」

「あら、私があのような所をどうこうされて何か困るとでも?」


 それを聞いてにやりと悪い笑みを浮かべるルーベン。


「やはり単に逃げてきただけの聖女か、いや、追い出されたか?

 まあいい、あそこはウチの言う事を聞かないから遅かれ早かれ潰す予定さ」

「では彼らが言う事を聞けば焼かないと」

「そのためにあんな辺鄙な所を、今まで残してきてやってたんだ!素直に言う事を聞いていれば男爵にしてやったものを!」

「どのような命令ですか?これからの参考のために聞かせてください」

「もうすぐうちの領だから見えてくるさ、こっちは裏道、抜け道で俺たちチュニビッフィ家しか知らない近道だ、ほら、あれだ」


 山の間に隠れるように広がる畑、そこに生えているのは……


「これは……麻薬草ですね」

「ああそうさ、我々の隠された名産品だよ」



  知らない所で麻薬が密造されていた 

                   だめ貴族だもの。 ミスト

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