雨に打たれつつ
「ふぁ……」
(ついに完食……)
サンドイッチとコーヒー。その2つをついに食べ終えてしまった。朝ご飯とは思えない満足感。これ以上はいらない。これ以上はない、時間がゆっくりと流れているように感じる。寝ぼけ状態だった目も覚めていい気持ちだ。
朝ご飯でここまでの満足感を得られたのは、袖女の作ってくれた料理以来だろうか。あの時の感覚と勝負しても、勝るとも劣らない。さすがはお店の料理だ。
(むしろ、お店の味に対抗できる袖女の料理がすごいと言うべきか……)
袖女の料理の技術に今更感心しながらも、完食した後の皿とコップに向かって手を合わせ、感謝しながら大事な一言を告げる。
「ごちそうさまでした……!」
小声ながらも心からの感謝を込めた一言。やはり食事はいい。絶対に裏切らないという信頼感がある。
カウンター席から立ち上がり、レジでお支払いを済ませる。
「こちらレシートです……あ!」
そうやってレシートを渡そうと伸ばしたマスターの腕がレジの上に置いてあったダルマの置物にぶつかり、床に向かって落下する。
このままいけばダルマは間違いなく木っ端微塵。所々に散らばったダルマの破片が俺の足に容赦なく切り傷を付けたけとだろう。
だが、そうは問屋がおろさない。俺の体は前とは違い、ブランクがあるとはいえ、極限まで実戦慣れさせた体だ。頭で考えていなくても、体が勝手に反応する。
「よっ……」
結果、床にぶつかるギリギリのタイミングでダルマを掴み取ることに成功した。
「はい。落ちましたよこれ」
「あ、ありがとうございます……」
俺が手に取ったダルマをマスターに返し、レシートを受け取る。
「ほう……」
「ふむ……」
何やら奥のカウンター席に座っているおじいさん2人から視線を感じたが、まぁそりゃこんなことをしたんだから注目も集めるかと納得し、店を出た。
「げっ!? 雨降ってきた!!」
――――
伸太が去った後の喫茶店にて……
「強いのう、今の男」
「どれくらいかは定かではないがな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます