底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜
@kinnikusiketarou
東京編 始まり
プロローグ
(もう何もかも終わりだ……)
俺は今の自分の現状に絶望しながら、真夜中の薄暗い道を歩いていく。
最近の若者はよく"終わった"とか"絶望"なんて言葉を軽く口にするが、そんな若者に言ってやりたい。これが本当の絶望なのだと、これが本当の終わりなのだと。
人影もなく薄気味悪いその道路からは、まるで自分が敗者だと言われている様な気がして、余計に自分の現状が嫌になった…………
――――
「…………くそっ」
誰かは言った――――人間と言うのは利用する側とされる側だと…………だが、俺から言わせてみれば、魅せる側と魅せつけられる側である。
「「「「キャーーーー!!!! ステキーーー!!」」」」
この場合、俺は魅せつけられている側なのだろう。
光る汗、毎日手入れされているであろう黒髪、ぱっちりした目、そしてその体はスラッとしていて、体操服の袖からは、筋肉質な腕が見え隠れしている。
今、その男は訓練中、キザに手を振りクラスの女子を悩殺している。
その男の名前は
市立東京第一養成高等学校の2年生でイケメンである――――あえてもう一度言おう、イケメンである。
養成学校なのに高等学校ってどゆこと? と思う人もいるかもしれないが、まぁその2つが合体したと思ってもらえればいい。
その体から繰り出される凄まじいほどに洗練された体術。その動きからは、才能はもちろんの事、毎日怠らない努力の末に、完成されたものだということがわかる。
次々と倒れていく対人用ロボット、そのたびに湧き上がる歓声、そしてそれを見ているだけの俺。
そんな日々が……続いていた。
そんなふうに頭の中で考えている俺だが、こんな体験は、誰しもが経験したことがあるのではないだろうか、才能のある奴らに対して、指をくわえて見ているだけ。
高校生であろうと、おそらく社会人であろうと、人と関わる限り、体験していくことだろう。
おっと、自己紹介が遅れたようだ。俺の名前は
なんて心の中でつぶやいてみる……聞いてくれる人はいないのに。
「いやーやっぱ違うなぁ、ハイパーは」
俺の隣にいた生徒が、周りに聞こえそうな声で、ありありと言葉を放つ。
そう………やつはhyper《ハイパー》なのだ。
hyper《ハイパー》というのは……まあ、一言で言うと、ランクのようなものだ。
ランクにはいろいろあり、上から順に……
abnormal《アブノーマル》、master《マスター》、hyper《ハイパー》、super《スーパー》、normal《ノーマル》…………そして、最底辺の中の最底辺。easy《イージー》が存在する。
だが、この世にabnormal《アブノーマル》は存在せず、事実上の最高峰は、master《マスター》となっている。
西暦2040年、突如として世界中の人間にゲームのような力が宿った。
氷を吐いたり、ものを浮かせたり……そんなゲームのような力を、世界連盟はスキルと名づけ広まった。
最初はみんなそれはもう喜んだらしい。スキルのおかげで便利になっていく生活、スキルを持った中には、若返った者や尋常じゃない知能を手に入れ、超難関大学に受かったなんてのもある。
だが……そんな生活は長くは続かなかった。
力をいい方向に使うのが人間だと言うのであれば、悪い方向に使うのも人間である。
スキルを使ったテロや殺人事件が多発、中にはネットに自殺したい人用のサイトを作り、自分のスキルを使って安楽死させるなんてのもあったらしい。
そして、テロが多発するそんな世の中に……日本を崩壊させる致命的な出来事が起きた。
県による他県への攻撃である。そうして、他県へ攻撃した県は難なく勝利し、攻撃された県をたった一月で支配下に置いてしまった。
……そして、それは皮肉にも、人間と言う欲望の生き物のタガを外すきっかけとなってしまった。
別の県どうしで戦争を始めたのだ。次々と他方で起こる戦争、ひろがる破壊の渦、他の県に攻撃した県はいつの間にか"派閥"と呼ばれ始め、今では県は無くなり、その代わりに〇〇派閥と呼ばれ始めた。
その戦争は大規模になり、今では他の派閥に襲われるなんて日常茶飯事である。
その戦争に使われている主戦力は……もちろんスキルである。
そして、俺が通っている東京第一養成高等学校……面倒なのでこれから東一と省略するが、ここは東京中から兵士志望のスキルを持った少年少女達の集う…いわば養成所である。
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