第31話 いつまで経っても反省ばかり

 用意が全て終わる前にパンテさんが戻ってきた。置いてあったのはタンスと食料と水、ばかばかばーか。

 生存競争に喧嘩売ってんのか、かしまし娘。確かに重いけど一番重いけどぉ日本じゃ無いんだ歩いたら普通に十日とか川に会えなかったりするんだ葉っぱ絞ってコップ一杯の水を一日かけて作ってどうやっていきんだ馬鹿野郎。


 たまに果物とかあるけど間違いなくやばい奴がいるよチンパンジーの原種でも200キロ越えの握力で人間食いに来るんだからな、見逃される可能性が無い分他の肉食獣より質が悪い、子供が居なければホントに。一度家に帰れ!!。立ち眩みしそういや今若いんだった。


 彼女達は背の高い順で年齢も合ってるそうで上から、少しぽっちゃりなポーステさんシッカリ風で口が軽いハミラさん、やせ、スレンダーで超ショーカットなキリスラさんこの人が要注意。全員二十台後半。


 子供たちはストレートヘアを肩で切りそろえたレイミちゃん、御下げのミレアちゃん、ハミラさんは御下げを編み上げて似てるな、天パのマジョリちゃん、一番かわいいグロスくん四歳。


 「適当に食べてその間に治すから」


 「わあっ、やった」

 「ありがと、良いことあるよ」

 「うまぁい、ちょっとこれ隠しとこ」

 突っ込まないぞ。


 馬車をジャッキアップする、デバスさんが手で持ち上げて下に脚立を置くだけ、車軸をのこぎりで切断、デバスさんに引き抜いてもらう。軸の固定具も曲がってる。

 あんまり手を掛けると何をするか分からないけど、あ、騎士団の皆さん。


 「さすがに駄目ですよ」

 「僕達が馬車から持ってきて付けるからぁ」

 「馬車に戻ってください」

 「さあ」


 流石に手を引かれるのは、ねえってば。

 馬車の中は自由が利かないので馬車の影で軸受けと軸を作って一体型に練りつける、今のを外すと箱自体の強度が下がるので新たに付ける。

 コの字型のドリルとボルトナット、スプリングワッシャー、スパナと一緒に前後輪分作ってレクチャーをして渡す。一応ネジとボックスレンチも。


 「おまえたちおいでー」

 正直乗りで言ってみたのだが、こちらを向いたのでおいでおいでしたら三頭とも来た。

 「名前も付けるか性格のままでいいか?」

 ばふ。

 がう。

 ふぃひ。


 そうかそれじゃあ、首輪に名前を入れようか。首輪は首を守るのにも有効だ少し幅広に。

 一番体躯のいいオスのナク、大人しい雌のネル、何時もきょきょろしてる雌のユウ、勿論日本語なのでこちらでは意味が違う。

 そうしてみると、他の部分が気になってしまう足をかまれないようにとか背中に盾とかお腹は動きを阻害しないように、あ、まだ成長するな、家紋も入れとかなきゃだし。

 オオカミたちは別に嫌がるでもなく装着し元気に飛び跳ねてる、三メートルくらい。


 「じゃあご飯食べといで、今晩は風呂に入れよ」


 シンシアちゃんが両手にハンバーガーを載せたお皿を持ってこちらを見ていたので合図とばかりに手を振ると駆けていった。ラッキョウは大丈夫か?。


 「おーい、肉と葉っぱ以外はやっちゃ駄目だぞ、あ、いやパンは大丈夫。」

 オオカミが絶望の顔をしてこちらを見たので追加で報告、納得したようだ。明日はちゃんとメニューを考えよう。


 さて次はとパンとジャム、ベーコン入りサラダを貰いスープをポットに入れてパーテーションの影に移行。

 あれ姦しの声がしない食われたか、いや居るな固まって食べながら何か見てる、あちこちの胸元、ブローチか、良いところで、グッジョブ私。


 ウィンドウを開いてローデルさんを見つける。

 「ローデルさん、いい?」

 焚火の前にいる人影に声をかける。

 「ああ、いいよ」

 彼女たちは荷車にいるようだ、薄っすら話し声も聞こえる。

 「はいこれ」

 テニスラケットに順番に乗せて渡す。

 「大丈夫そうだね」

 「どうしたか聞いた?」

 「ドレンクって奴らしい、いつも黄色い帽子をかぶって使える女を見つけちゃ食い物にしてる」

 「黄色い帽子って皮を染めた奴?」

 「テカテカしてるって言ってたから、見たのか?」

 「見た見た小屋の近くで」

 「まだいるのか?」

 「ずっといるよこの先もずっと」

 「そうか」

 「違う違う、多分ラプトル」

 「・・因果何とかだな」

 「能力目当て?」

 「スキルが”調律”だと」

 「それ癒し系最上位スキルだよ」

 「ああ、奉仕をしながら施すのが売りだったらしい」

 「スキルが裏目に出たと?」

 「そうだな突然声が聞こえなくなったのを勘違いして自分に掛けたんだ」

 「日本ならあれだな・」

 「「眠れる森の美女」」

 「ちゃんと助かった」

 「ああ」

 「それじゃあ又」

 「暫くよろしく」

 「はーい」



 次は伝声塔チェック、ウィンドウは自身が動くと精度が落ちる、具体的には最大サイズのウィンドウと同じリングに立って使う感じ、ただ特定の物や人と紐づけるとちゃんとしているらしい、私が見えないので意味があるかは微妙。


 馬車移動中は精神的な酔いが酷くて使えない。


 「うーん、やっぱりこの辺かな」


 他の領地の三倍はあるジーニアス領、統治者が変わったことが無い事で有名、領主の名字が名前になる唯一の土地。

 ここの南東に十年ほど前コルトバと言う町が出来た。という一方的な伝声が届く、今がどうなってるか知らないが、そのあたりから声が聞こえる。

 私ものんびりしている。声が切望と言う感じがしないせいもあるし、ウジさんがここの傘下にいるのもある。

 明日は聞こうかな。


 さて私もサンドイッチと紅茶を注文しに来た、うん何かそういうシステムになってる。

 「野菜サンドと豚カツサンドと紅茶」

 「豚カツでよろしいですか、味噌カツもありやすよ」

 「どこの誰だよリリカ、今日は豚カツで」

 「ハーイ、右にお進みくださーい」

 多分やらかしてるのはリリカ、時々私の記憶を理解してやがる絶対。


 右に進むとお盆に紅茶と水のコップをハニラシアちゃんが置いてリサがわら半紙を引いて野菜サンドを載せる、お、コーンおまけか忘れてた、ありがとう。

 ユリシアさんの前でしばらく待つ、一度弱温で上げてあるのですぐできる、また胸元開ける、熱い振りすんな汗かいてないぞ、見るけど。


 こういうのをシステム的とか調和的とか言うんだっけか、久しぶりで、天気も良くて気持ちいいな。


 「ジャンタンポン」

 「うをふあいあ、ご、ふり」

 「勝ったー」

 「マミルモー」


 小さく回りながら屋台に帰っていく姉妹を見ながら水で流し込む。


 「何してるんだい?」

 セリアーヌさんが上から聞いてくる、食べる場所を探していると捕獲された。

 「ヤリキメ?」

 セミスさんが小首をかしげて言う。


 そうそうこっちではそういう。やったるぞー、きめたるぞーって覚えた。ヤリキメ、ヤーだったか。

 「ああやって元気にしてると周りからも話しかけられやすくなるかと思いまして」

 「お父さん?、いやもう少し遠慮がある感じん~」

 「良いんだセミス、今あったかいから」

 「クリームさんとマリナさんは一人でいますね」

 「森が近いとね、監視だよマリナは一度感じた光景の変化を理屈抜きで把握できるんだ。」


 「ところであの姦しは何者です」

 「旅芸人だと」

 「あーそれで衣装や装飾品を優先したのか」

 「いつもユーラ、ミレジ、バルバザを移動して稼いでるそうだ偶にうちの町にも来てね知った顔だったんだ」

 「芸人ってこう?」

 手を振ったりすると。

 「いや吟遊詩人に近い方だね、この先の伝声塔に旦那の一人がいるらしい、色恋沙汰があると良いなって言ってたよ」

 

 いやなんかごめん、人生浅いようで深く、深いようで薄い、さんざん経験しても変わらないな。

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