第11話 商人さん達と一晩
日がかなり傾いてきてオレンジ色に雲が色付き初めている下をベースキャンプに向かって山を登っている、此の世界の人は特に鍛えなくてもかなりの速度で進む。
「最後に団長さんと話してたのは何ですか?金貨って聞こえましたけれど」
リサが話しにくそうに言う、お金の話は聞きにくいけど気になる感じか。
「馬車と馬をどうするかって相談されたんだ」
前を歩くリリカが気付いた風に言う。
「そうか建前は囚人の護送だから」
「うん、歩かせると繋がないといけないからね」
「馬車は大丈夫として馬を買うの?」
「うん、パンテさん一家用とで三頭頼んだ」
「そう」
リサが少し明るく答えた、覚えがあるか好きなのか。
まもなくキャンプに着くが少し気掛かりがある、下の子が少し大人しい?いや元気が無い?。
屋台の中で鍵を閉めてライカさんが美しいおみ足でペダルを漕いで太股を露にしていてパンテが宝石を磨いている、リオナさんが少し離れた所で人待ち顔をして見張りをしている。
角に置いて有る四人掛けテーブルに、知らない商人風の女と護衛っぽい軽鎧男女の計三人がいる、マミルちゃんはテーブルにぎりぎり頭を出してコップを睨んでいる。
どう言う状況??サインラル邸に向かうときまで何も無かったはずだけど。
日が赤く色付いた頃キャンプ地に到着した、真っ先に赤毛のリオナさんがこちらに来る。
「お帰りなさい旦那様」
「ただいま、何かあった?」
「いえ、特には、ただ彼らが此方で今日泊まりたいと、何でも此の通りを使うときの常留個所だそうで」
「それは構わない早い者勝ちなんてヤクザじゃないし、それでマミルちゃんはどうしたの?」
「はあ、それがその・・・」
「気になるから、たった一人の年下なんだし」
「その、この人達を歓迎しようとしてその、ジュウスを出してしまったようで・・」
「それで落ち込んでいるの?」
子供らしい落ち込み方に心底安堵した。
「すみません、私が見よう見まねで作ってみたんですけど、どうも違うみたいで」
冷蔵庫にある材料だけでは無理だ、バナナは其のつど狩場から直接獲っているからね。
「マミルちゃん!夕食後にミックスジュース作って上げるよ」
「ママが出来ないって・・」
「秘密の材料が有るのさ、大丈夫まだまだ有るから」
「ほんと!!ありまとうごじゃあす」
後ろの二人こけない!。
「始めまして私たちはトラポス商会のセミスと此方が護衛兼商人見習いの兄カテルと妹メリルと言います」
「僕はここの取り纏め役のオムル、右がリサで左がリリカ後此処にいるのは職人のパンテさん一家、此方がリオナさんで屋台の中にライカさん、此の子がマミルちゃんでお姉ちゃんのシャサちゃんが怪我で安静にしている」
視線を向けて少し間を空けると商人らしく言葉を繋ぐ。
「セレガの街に帰る途中ですが此処で一晩休んでから向かうのを私のルーティンにしていまして、その辺りの一画でテントを張らして頂けないかとご挨拶をさせて頂きました」
見ると二頭立て幌馬車が一台、下り坂の少し手前に止まっている。
「構いませんよ、僕たちは事情で後二日は此処で足止めされますのでのんびりしていますからリズムが狂うかもしれませんが、此方は気遣い無用でお願いします」
「有難うございます此方も気遣いは必要ありませんので、所で先ほど頂いたジュウスと言う飲みもなのですが・・どのようにして・・あ・いえ、すみません」
ここの設備とリオナさんの態度でなんとなく深入りを避けたみたいだ、商人としてのなにか矜持があるのかな?。
「一月後にサソウス領地首都コールに行けば手に入りますよ、代わりにあの宿泊車両で泊まりませんか?」
「良いんですか・あっ、いえすみません荷物が有りますので」
見張りも兼ねて近くでテントを張るようだ、残念、感想を聞きたっかたのにカテル兄妹はとっても残念そうにしているのに。
マミルちゃんが蛇口でパンダ模様のマイコップを洗っているのをセミス女子が不思議そうに見ている。
パンテさんが畏まった様子で歩いて来た。
「お帰りなさいませ旦那様、速さを第一にして三十ほど出来ました見て頂けますか?」
「皆が来るのが明日に成ったから余裕が出来たよ、夕食後に見に行きます」
「解りました、でしたら私は薪でも拾って来ましょう」
「ちょっと待って、・いた、こっちは駄目だよ此処より下で探してね、あっ!!ちょっとセミスさん、トイレの説明するからそこらでしないでね」
熊の確認をしてから腰を浮かすと。
「私が説明してきます」
リオナさんがそう言って三人を連れて二階建て列車に向かっていく。
村長さんの家からパンを貰ってびっくりの量、忘れてた、まあ今日は十一人いるし何とかなるか、具少な目シチューを煮込む間にセミスさんたちにパンの消費を頼んで序でに火を分けてあげた、トイレのことをあれこれ聞かれたけれど自分で作ったと正直に言うと困った顔をされた。
リオナさんが屋台に帰らず林に入っていくのがみえたので後をウインドウでつけた。
色が本当に白くうなじが扇情的な女性、何か有ってはいけない、うん。
しばらく坂を下りるとパンテさんが居た、当然だね。
焦ったように抱き合いスカートをたくし上げられたリオナさんが岩に腰を当てて片足を膝立ちさせる。
子供がいる夫婦ってどこも一緒だなあと高ぶる気持ちを抑える。
なんとなく手を洗って気持ちを切り替えよう。
パンを沢山消費するためにおかずはシチューだけ、後は油を熱して砂糖を準備、リサは植物の根を焦がしたお茶とそれに入れる牛乳を用意している、ナイスだよリサチャン。
少し風が出てきたので防風板を立てた、列車の先に固定したので動くことは無い、ふと先を見るとセミスさんのテントが結構はためいている、馬車を風除けにしているがあまり効果は無いようだ。
即席で鉄製のダンボール形状拡大鉄パーテイションを作って持っていくことにした、幌に合わせてアールをつけて片付けるも幌の補強も出来るようにし、二つ合わせれば馬の雨除けにも兄なら超大盾としても使えるようにハンドルも工夫した。
持っていこうとしたら風で飛ばされそうに成ったので慌ててカテル兄妹を呼んだ。
馬車と合わせてくの字で囲って馬車下の板も動かないように固定したら美味い具合に風を遮った。
「これで大丈夫ですね、なんならこのパーテイションお持ちいただいても構いませんよ」
「有難うございます、明日は朝のうちに町に入りたいので早めに出たいと思いますので」
「気にしないで下さい家では余っている物で、それに母に商人には恩を売りなって言われているので」
此の世界の商人は生前の合衆国以上の危険が伴うのに謙虚なので家庭によってはこういう教育をする、御遍路様扱いと言えば解り易いか。
焚き火も美味く燃えているのを確認して戻ろうとしたときにパンテさんとリリカが背負子いっぱいの薪を背負って帰ってきたので森のほうを照らしていたウィンドウを閉じた。
油が十分熱せられたので砂糖を盆にぶちまけると籠と大きな器を持っているリオナさんとライカさんと目が合った。
「其の籠に此の紙を敷き詰めて待ってて下さい、リサさんシチューとお茶をポットに」
「はい、ミルクは多めでいいですか?」
其の間にパンを油に投入、藁半紙を油きり籠に敷いて頃合になったパンを油を切って上げる。
藁半紙で軽く拭いて砂糖に投入、まぶして出来上がり、五人で五個プラス三個はそのままでジャムとバターを添える、割り当てね。
とっても幸せそうに籠を抱えて屋台に戻って行ったので結構大きなパンだけど無理では無いだろう、リリカが唸り声を上げそうな目で見ているので慌てて追加のパンを投入、屋台から声がしたので聞いてみるとライカさんが掃除をしたのに食事を取りに来ている間にパンテさんが仕事をしたようだ、うんしっかり怒られて下さい、まあマミルちゃんの喜びのダンスで流れるみたいだけどね。
商人さんにパンとシチューを持っていき更にパンを六個揚げ終わるころに小さい影が寄ってきたのでリリカに目配せする。
リリカが屈んで近寄らないように相手をしてくれる。
「パンダさんのコップ」
今朝ジュースを入れるために刷り模様でパンダを書いてあげたやつだ、あ、此処にある忘れてたのか。
「はい。いま危ないから近寄っちゃ駄目だよ」
コップを渡してあげたけど少し俯いて動かない、ジュースは食後だし何だろう。
「???」
「ああっ!!お姉ちゃんのっ」
「リサ?」
「お姉ちゃんも欲しいって言ったのよね」
「・・・うん・」
リサが屈んでマミルちゃんの手を握って聞くと消えそうな声で答えてくれた。
「あははそうかちょっと待ってて」
マミルちゃんのはパンダが座って笹を食べているのと歩いている絵で生前で娘がよく使っていた物だ、シャサちゃんは大の字で寝転がってるパンダと枝にぶら下がるパンダの絵をすりガラス状に入れてマミルちゃんに渡す。
「ありあとます!!」
元気にお礼を言って両手で確りと持って戻っていく、リリカが私の耳元で囁く。
「わざと忘れて行ったのね両親に解らないように」
「そうかもね」
洗った後にこっそり置いたのかな。
女の子は此の世界でもおませさんはおませさん、可愛さに変わりは無い。勿論モチーフは父親の名前から選んだ、もう少し大きくなるとアノコップの運命やいかに。
三人で大きな食事用テーブルで"頂きます"すると護衛の妹メリルさんがシチューのお皿を返しに来たので話をした。
「此のお皿も素晴らしいものですね、装飾も」
気泡鉄の周りに縮小鉄をコーティングしてあり見かけも淵の部分にエンボス加工でバラの花をあしらっているちょっと見栄をはった一品。
「熱々のシチューを入れても底が熱くならないし、中身は最後まで冷めない、何より丈夫で軽い、旅にはぴったりですね」
「良かったら寄贈させてくださいませんか?」
そう言うと嬉しそうにお礼を言ってくれるが少し目が泳いでいる、またか。
「買い付けの場所を聞いて来るようにと?」
「はいっあの、商会から出来るだけのお礼をしますので、お願いしますっ」
まあ敷地内に工房を作ろうと思っているので困ったことにはならないだろう。
「二週間後にコールの町でセイランと言う人に其のお皿を見せて約束があると言ってください」
「セイランさん?」
「風刃のセイランですよ酒飲みだし目立つので直ぐ見つかります、其の時に詳しくお話しましょう」
美人で背が高く口も声も大きくスレンダーなくせに胸は有るそして自他共に認める東都一の風使い、どの屋敷に出入りしているか知らない地元民はいない。いやもっと目立つことが有るんだけどね。
メリルさんはショートの黒髪を庇うように御礼をして戻っていった、匂いを気にしているのかな。
気が付いて前を見ると口元を油でテカらせたリリカがメリルさんを目で追う、やば目かな?。こういうとき聞いても本人に自覚は無く何も解らない。
お風呂に誘うときに武器と防具をお布施しよう、そう思ってリリカを見るとニッコリしていたので正解だろう。
普通のパンを揚げたので如何かと思ったけれど小麦粉がいいのかなかなか美味かった。二人とパンテさん一家にはとても好評だった。
あっさりしたミルク茶を飲みながら生活音や風で揺れる木の枝の音に聞き入っているとライカさんがモンローウオークでシンクに行き洗い物をし始めた、意識してではなく先ほどの悶着のせいで疲れた感じだ。
「疲れが溜まっていますか?」
私から声を掛けられたのが意外だったのかライカさんが上ずった声で答える。
「いいえ!・旅の途中の事を思えば町に着いたように穏やかに過ごせています」
「何なら屋台をもう少し大きくするけど」
「とんっでも無いです、マットレスの寝心地も最高だし、戸締りをした後の安心感が半端じゃないです町に着いても此処で寝ようかって話してるくらいです」
「そう、ナラ良いけど、あ、忘れてた着替え駄目にされちゃったでしょ、今日はこれに着替えて」
熊に弄られた物を持って帰ってはいけないと村では良く言われているがライカさんも異論無い様で取りに行ったりはしていなかった、今日買った着替えをウィンドウから籠ごと棒で引っ掛けて出して上げた。
「まあ、有難うございます私達も何でもお手伝いするので仰って下さい」
籠の中を確認しながら有るものを摘んで何だかほっとした顔をしている、小さな布切れだが殆ど形を成していない、服の買出しはリサとリリカに丸投げしたので中身は知らない。
ライカさんの綺麗な茄子型の後姿を眺めていると下でコンコン音がするので見てみるとマミルちゃんが目を輝かせて見上げてくる、才能有るんじゃないか此の子。
「ジュースだね、一寸待っててね」
すでにリサは冷蔵庫にリリカはジューサーを持ってきている、此の機械はテーブルの端にクランクネジで固定して使うのでハンドルを直に回す力強い回転刃が自慢の一品だ。
私は男子が一人増えている事を思い出してウィンドウからバナナを取り出し後をリリカに任して穴風呂に向かう。夜空を眺めるための崖側以外を完全に壁で囲いトラポス商会の方々も入り易いようにした。リサの作った洗濯穴には底に羽をつけ風の力で回るようにして横に昔懐かしいローラー式搾り器も作ったら丁度リオナさんとライカさん、マミルちゃん?も来たので使い方を説明するがライカさんが何か硬質な感じ?。
「残りは後でお姉ちゃんと飲むのよねー」
「はい!」
マミルちゃんがニコニコしているのでうまく作れたのだろう、そこでライカさんが着替えを隠そうとしているのに気付いてわかった、アノ日ですかそうですかなるほど、考えませんよそんな事、まったく想像しません、はい。
慌てて手酌型の風呂桶を作って置いてきた。
直ぐに回れ右をして風呂場から出てテーブルに向かうとリサチェックが入る。
「何か時間が掛かってたみたいですね」
「洗濯機を作ったんだ、だから其の説明」
「村で水の勢い使って洗濯物を回してたあれ?」
「ここで其れは無理だから今度は風で回したんだ」
「どんなものでしょう?」
「勝手に服がぐるぐる回って汚れが落ちるやつ」
「は・あ?」
「まあ見れば解るよ、其れよりミックスジュース有難う」
「あっそうそう此れどうぞ」
リサが出してくれたジュースを一口飲んで答える。
「うん、美味しいうまく作れたね」
「いきなり無茶、リサ姉が覚えてなければ無理」
「ごめん、ほら向うに男の人がいるから」
「何時までも露天は無理よね」
ジュースを飲んで東の海の中をウィンドウで映して少しまったりした頃にマミルちゃん一行が風呂場から出てきたので偽姉妹に入って貰った。
因みに最近ピーピングウインドウを使いまくっていたせいかウィンドウが一つ増えた、以前なら意味が無かったろうが今このテントを照らせていられるのは有り難い。
トラポス商会の方は直接見えないが焚き火で出来た影やたまに聞こえる笑い声で何か齧りながらお酒でも飲んでいるようだ。
さて其の間に奉納の武器などをつくろう。
まずは戦靴三束、足元に絶対の安心が有ればここ一番で力が入る、脛当て、小さめの剣の着いた卵形サス付き中盾、バックミラーの付いたヘッドギア、これはヘッドギア内を通して後ろが見える。
フルアーマーもそうだが後ろから抱き付かれて小剣で鎧の隙間を刺される事がままある、剣を自分に向けるには致命的な時間が必要なのでその対策だ、同じ意味で肘当てにも突起を付ける。
ふんふん兄カテルは単純な腕力型か、だったら今の長さで縮小鉄を使って硬さと重さを持たせ鍔を大きめに作り握れるように、並の鎧なら砕けるだろう。
妹メリルさんはなるほど水使いですか、剣は少し変則にして持ち方は盾と同じだけど剣、突っ込んできた奴は盾のように構えるだけで勝手に切られてくれるし、少ない腕力でも抗える様に両手を組んでも使える形に、水使いは水流を操るぐらいと思われているが実はレクチャーするだけでえらい事が出来るので、身を守るのを優先する。
胴体は拡大鉄の骨組みに鋼でハニカム構造、隙間に気泡鉄、其の周りを縮小軟鉄で覆い小さな穴を無数に開けて刺突系武器相手の滑り止めにした、剣術は鎧に正確に歯を合わせるが乱戦になると刃が滑ってくるほうが怖い、強度に自信があるので出来ること、脇下まで覆う胴鎧を三台作って兄妹さんを呼ぶ。
訝しみながら此方に顔を出した二人がテーブル狭しと並んだ武器防具を見て目を見張る、夢なら覚めるなと言わんばかりにゆっくりと近づいてくる。
「此方をどうぞ、折角再会の約束をしたのに何か有っては目覚めが悪いですからね」
「本当に良いのですか?流石に此れはただとはいかないでしょう」
「当然です、人前では出来るだけ装着してオムル工房を宣伝して下さい」
グリフォンの家紋をひし形にあしらったマークを入れてみた。
「なるほど聞かれたら答えれば良いのですね、それなら」
「えーと、あれ此方が女用ですよね剣を間違ってません?」
「普通に見える剣を持ってみれば解りますよ」
カテル君用の剣に手を伸ばすメリルさん。
「え?あれ、チョッとなぁにぃ此れー!!」
何とか浮かせたけれどそこでギブアップ、五倍の重さだからね。
「とんっでもなく重いわよ、何此れ?」
「企業秘密です」
「ほう、これは良い、デカイ剣は護衛に向かないし今の剣は力を入れすぎると折れるんだ」
そう言って上段から切り下ろしたら踏ん張った足元の地面が揺れた、二人きりで護衛をするんだから其れなりに力はあると思ってたけどそれ以上だよ。
昔刀について調べたときに鋳型に流した物とたたき上げた物との違いが載っている本があった、同じ材料、比重、焼入れのもので何倍もの違いが有った、締めには叩くことで分子が揃うのではと書いてあった。
縦方向と横方向にそれぞれ分子を揃え二枚合わせて一枚としランダム配置の柔らか目の芯鉄を二枚ではさみ・計四枚を三セット二十四枚でサンドするイメージで作った、割り箸程度で二メートルにしてもどうやっても折れない、曲がらない、なんだろ?。
「じゃあこの大きな鉤爪みたいなのは軽いの?」
「はい、此処に左手を入れて普段は前腕をこの湾曲部に嵌めて固定します」
「あれホントに軽い、でも振り回せるほどじゃないよ?」
「グリップの少し上に楕円の穴が有るでしょう其処を右手で持って防御や刺突で時間を稼ぎます」
「攻撃は違う方法でって事?」
「すみません、先ほど聞き耳を立てていまして、水使いなんですよね?」
私が下手な声色で誘導したんだけどね。
「ええだけど錬度ばかりが高くて役に立たないわよ」
「企業秘密が混じりますので後で説明します、今は此処の装備の確認を」
「おお此の盾凄いぞ衝撃がまるでない、戦斧でも軽く往なせそうだ、しかも手の平が他に使える」
「其の盾を足に履いたらアノ木の上から跳び降りれますよ」
「あははは、本当だジャンプも凄いー」
此の子の心臓も大概だな足に嵌めてガショガショ跳ねテル、でもこれは有りだな皆用に作ろう。
「メリル、やりすぎ!!で此れはメイル?」
「はい、被って貰うと左下に磨いた鉄板が有るので良く見てください」
此の世界も右利きが多いので左のガードを固めるのにも一役買っている。
「ん~これは後ろか後ろが見えるんだな此れは思いつかないぞこんなもの」
「調整はどうですか?良い感じに映ります?」
「大丈夫だよ、旨く軽量化も出来ているし」
「あたしはもう少し上にしたいかな?」
「形を含めて調整をしますので少し屈んで貰えます?」
「はいどうぞ、え?え、あ、そこ、其処で止めて、あれ?形もぴったりに成ってる、鉄よねこれ気持ち良い」
言葉、言葉を選んで大人の息子が暴れるから!。
「カテルさんも」
「ああ、お、ほう、本当だピタリとフィットするな」
「でしょう此れ着けてた方が気持ちいいかもズット着けてようかな」
やめてください何かに怒られそうだから。
「此れは肘当てか前腕に付けるタイプだね、此の突起は独特だね」
「体重移動を旨くすると鎧抜きに使えます」
踏み込み足を旨く使えればね、支え足を意識するとワンテンポ遅れる上に体重が載りにくい。
鎧抜きは先が尖っていない刺突武器で刺さるつど抵抗が生まれるのを防ぐようになっている、水の抵抗を減らす船底の先みたいに。
四つとも微調整をして胴鎧も試着して貰う。
「此れは又、軽くて丈夫そうだね厳つい光沢もいいね」
「内側に立て筋が有ったでしょう其処には特別な鋼が入っています」
微調整をしながら説明をしていると手元が狂ったのかクレームが来た。
「あの旦那さん、チョッと胸リアル過ぎません?出来たら必要最小限で」
おおう、やってしまった乳首まで付いてる!!うわ耳が暑い、恥ずかしい、いや少しは考えたけれど最近やりすぎたか、心のブレーキは昔から緩いほうだからな、色々と。
「も少し背があったら嫌いに成ったかもです」
いやあのカラカッタ訳じゃないんです本当に、最近からだの若さに振り回されているんです。
「ごめんなさい」
とりあえず謝りながら調整しなおすと耳元で。
「ふふっ良いわよ、兄さんなんか十歳で変な店で身包み剥がされて家に泣き付いてきたのよ」
すみません七歳で全て経験しました、いや百歳だけれども。
二人は剣を振ったり、腕振り体操をして確認をした、絶賛して貰ったので無かった事にして戦靴の調整をする、これも喜んで貰えた、一足は予備にして女性の足に会うようにしておいた、男は知らん。
「それじゃ此の盾をセミスさんに渡して、左手で大きな盾のほうに風を受けて盾ごと体当たりをするんです、衝撃を受けると三つの内握っているハンドルの剣が飛び出ます、目の位置に蜂の巣状の覗き網が有りますから利用してください、中盾の方は右手で先に対鎧剣を付けていますので刺突に使って下さい」
大盾の欠点は構えると相手が見えなくなること、孫に連れられて見て私もはまったアニメ映画の盾には覗き穴がついていたのでそれを模した。
この盾にも仕掛けがある、中型盾にはサスペンションが腕の上で前後に動くように作った、最初は拳の上にあり剣先がきっちり決まったスピードで肘まで下がる、ダンパーの効果で。
おもちゃの注射器を押し込んだら決まった速度で沈んでいくのと構造は同じだ、効果は殴打武器のブラックジャックと同じで皮の筒の中に砂を詰める代わりにサスを効かす、本当かは知らないが門下の武器マニアが言うには体重が何倍にもなったような効果があるらしい。
大型の盾は少し大きすぎるくらい、風使い用に風を内に孕み易いようにデザインした、当然サスを付けるがへこんだ後にはシーソー式に短剣が飛び出す、トリッキーな武器を持つくせに防御力が高い、ハンドルを握らないと剣は出ないので安全だ。
実は団長さんの戦闘スタイルで団長さんはこれと小さな傘の先に三叉剣を付けた物を二つ自在に飛ばすが名前を聞いて驚いた、盾はショッキングピンクで綺麗な盾、傘は蜂という意味でエルメ○とビッ○だそうだ覗きながら突っ込んだのは仕方ないと思う。
「メリルさんこれからあなたに戦闘時に動かずに人を壊す方法を教えます」
「え?禄にいない水使いにですか?」
そうエゲツナイ使い方が有るせいか水使いは少ない、コミネ村には二人いて一人が使えた。使い方はあの怪物から得たみたい、ひょっとして以前に来ていた奴の子孫なのかも知れない。
コップに水を入れてテーブルに置いて説明をする。
「これは水なんですが人体にも沢山ありますが水自体を移動させることは出来ませんよね」
「ええ添うよ、水の有るところで渦にしたりは出来るけど」
「そこでこれから水の姿を見て貰います、絶対他言は無用ですよ」
「一生?」
「そうです」
「・・・・わかった」
何か違う覚悟の響きがあったけれど、まあいいか。
「それじゃ始めますよ」
目の前にピーピングウインドウを開いてみせると手を突っ込んだり顔を突っ込んだりした後冷静になるまで少し掛かったが落ち着いたので続けた。
「此のコップと同じものが見えますよね」
コップの淵に指を出すとコクコクと頷いたので本番だ。
「それじゃぁ此れを拡大しますよ」
「拡大って?、わあ大きくなった」
録音、ロック音出来ない。
「もっともっと近付きますよ」
「え、と、これ水?」
「そうですまだまだ近付きますよ」
「もう何かぶつぶつのある丸いものが凄いスピードで動いてるのが見えます」
「それが水の正体です、其の動きを止めて下さい水使いなら可能なはずです」
「えと、集える天使よ我が願いに答えて歌え、ともに連なり力を得ん」
途端に凍りだすコップの水を唖然として見ている、えらく可愛いなおい此れが素の彼女かな。
「其れが”コールド”の魔法です」
「こんな事が・・」
根が素直じゃなければこんなに直ぐには出来ない、コミネ村でも可愛い系のおばちゃんしか出来なかった、見た目の事じゃないよ。
「次は元通り動かしてください」
「はい、集える天使よ我が願いに答えて歌え、ともに連なり力を得ん」
直ぐにコップの氷が溶け出したのを高揚して小さく震えながら見ているメリルさんが両手を胸元で握り締めてうんうん言ってる、すっげー可愛い。
「そのまま続けて、もっと早く動かして、呪文なしで出来るはずですこれは”ヒート"の魔術です」
「ヒ、ヒートォ?」
ずっこける位可愛い。噴出しそうなのを堪えてコップを見ていると湯気が出てきた。
「もっと早く、見えなくてもイメージ出来るはずです」
「ヒートオ!!」
ごぼゴボボヒュゴボゴボゴボ。
コップの水は見事に沸騰した、イメージ力が凄い子だ沸騰まで行ったのは始めてみた。
「凄い凄い私こんな事が出来るんだ旦那様のおかげだね」
「自身に力が無いと出来ないよ、それじゃ応用に掛かろうか?」
「はい」
なんかどんどん可愛くなるんだが魅了のスキルなんて持ってないよね。
テーブルにコップ三つを並べて中に野菜を入れる、距離を五メートル、三メートル、二メートルに置いた。
「野菜にも沢山水が入っているからそれをヒートしてみて」
「はいっ、ヒートォ」
反応は全部に出た約五秒で手前から順に最後は十秒ほどで破裂した、試したところ十メートルで一分が限界だった、剣の間合いで60度なら三秒!使える。
「此れで最後だよ肉にも水分は入っているから頑張って」
「はい、旦那様、行きます!」
湯上りのリサとリリカに怒られながら肉片掃除をすることになった。
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