第4話 カレーとパンケーキ


 「ねえ、リサさん私達家族に成る訳だけどなんて呼べば言い?」

 「え、?あ、あのリサでいいです」

 「分かったリサ姉さんね」

 「何で?」

 「背徳感が良いんだって彼が寝言で言ってたわよ」


 嘘付け絶対嘘だ聞いた気になってるだけだ、絶対スキルだ。


 リリカと一緒に暫く寝てない。


 「こいつはリカちゃんで良いよ」

 「リカちゃん言うなー!!」

 「何でそんなにいやがるの?」

 「小さく成っちゃう気がするのよ!」


 まじか。


 騎士たちが来る前に私達はキャンプ地に帰った、ゾルダン男爵家の土地から多数の白骨や奪った美術品などの証拠が出てるし仲買人の取調べで生きた証人が3名違う貴族の家で見つかったらしい。

 この貴族は救助目的で買っていたらしく少ない税収の殆どを使って囲っていた、サインラル男爵、絶対忘れない様にしよう。

 これだけ証拠が有れば私達は要らないだろうしリサさんは声を知られてるしややこしく成りそうだからね。

 

 「リサさん神の声お願いします」

 「いやあぁぁぁっ!!」

 ありゃ荷車に隠れちゃった。サインラル男爵の使ったお金少しでも返してってことずけて貰おうとしただけなのに。

 「わざとでしょうが」

 「可愛いからね」

 「其の言い方気付いてるのよね」

 「まあね、絶対本人には言わないけどね」


 相変わらず冴えてるね、彼女が言っているのはリサのスキルの事だ、今の自分を冷静に見れば分かる彼女のスキルは間違いなく。


 テンプテイション、誘惑だ。


 リリカはピーピングウィンドウで通信したときに怒りが霧散したことで気付いたらしいけど、いやあなたのスキルも大概だからね。

 でも自分の身の上の何割かは自分のスキルの所為だって気付いたらショックだろうな。


 私はやる度に大きくなる息子といちゃつけたことで分かった。ホントこの歳でときめく事が出来るなんてリサ様さま、裏も無いみたいだし現状維持で問題なし。


 今日は再会記念にご馳走を出せとリリカが言うので買い物は明日にしよう、で目ざとく見つかった穴風呂を少し大きくして温泉を出し暴風板を目隠し状に吊るして皆で入る事に成った。

 血糊なんかも着いたからね。リサが艶やかに服を脱いでいく、少し大きいお尻が可愛い。


 「ふん!」


 おや横で張り合うようにリリカが脱いでいく発達途中で水平にトマトが自己主張している。


 鎧が完成した日にお礼だといって一緒に風呂に入った時に触っても良いと言うので揉んでみたら少し痛そうにしたので以後一緒にお風呂が時々あったが触っていない。


 因みに母もリリカの母も生暖かい目で共同風呂を見ていたことは知っている。まあ冷たい目をしているけど美人さんだし、ツンツンだけど基本行動はデレだし良いのだけど時々母'sが乱入してくるのはどうかと思う。


 リリカの父は時々村に来てよろしくやっているのでスレンダー美女だがなるだけ見ないようにしている。

 なかなかに良い男だがリリカの不器用の原因である、今だにリリカがあたふたするのを喜んで色んな便利グッズを買ってきている。

 当然私も喜んで覗き見ているわけだが、彼女も父親は好きなようで怒った振りをして良く抱きついている。


 嫉妬じゃないよ、多分。


 さて昨日のポジションプラス前方にリリカで湯に浸かっているけれど当然後ろにもたれてはいない、風を感じているとパシャパシャ掛け流し以外の音がするので後ろを見るとグリンと首を戻された。

 「洗濯しているだけよ」

 「はい」


 少しずれた所で音がするので地面に窪みを別に作ってしているのだろう時々柔らかい物が肩に当たって体育坐りしながら幸せを噛み締めていた。


 湯から上がって二人に体を拭いて貰うとご馳走作りだ、リリカの言うご馳走とはカレーとパンケーキのこと。

 

 釘をあげた事で知り合いになった大工と相談して水車とポンプを作って自動掛け流し水道を作ってから共同風呂とスパイス採集に村単位で協力してくれたので出来たメニューだがレシピは非公開だ。

 村長が広まれば間違いなく税金が掛かると言ったので私の裁量でのみ調理が許される事と成った。

 因みに水道は飲み水ではなく生活用水で最後は洗濯穴に行っている、ポンプは板でも作れるぞ。


 パンケーキの蜂蜜は普通としてバターは何処かの地方の特産で有ったらしい、あっさり貴族の食材を作ってあんぐりした顔を村中の人にされた。あと芋で飴を作って大層感謝された。


 以前に何処かの島でサトウキビを見つけて栽培を頼んでみたけれど旨く要っているようだ、気候的には問題無い筈だから後も大丈夫だろう。何かあったときの言い分け用に近くの山に植えといた分も枯れてはいない。


 まだ食材に余裕が有ったけれど村の食料庫から出して大量に作ることにした、この食料庫も元々有った斜面に穴を掘って藁を葺き土を被せて断熱効果を増やしただけの物の内側を気泡鉄で覆って大きな氷を奥に隠し排水溝を作り私が今も維持管理している。


 軽く丈夫にしたくて作った鉄の発泡スチロールみたいな物だがイメージによる効果か一つ一つの気泡は真空状態のようで断熱効果が凄く高く氷は一月近く持ちその近くでは三度近くが保たれている。


 ベースになる主食だが残念ながら米に似た穀物は手に入らずナン擬で我慢することになるがとにかく完成だ、出来た鍋二つのカレーに手紙を付けて村長の家の玄関に置く、香りがするので直に気ずくだろう、珍しく満面の笑みのリリカと眼が合った。


 リサが顔を真っ赤にしながらウーウー煩い、眼をつぶって体を静かに左右に振っているリリカとは正反対だな、にしてもどれ程カレーを食う気だ二人で五人前は食っている。


 「ねえ、後のパンケーキ要らないの?」

 「食べるわよ、甘いものは、ねえ」

 「甘いものですか、昨日のパンよりも?」

 「え?ああバターを塗ったんだ」

 

 チロッとリリカが威圧して来たのでちゃんと説明した。


 「全然別物よ!」

 何でドヤ顔。

 「そんなにですか」

 「それ以上よ」

 リリカが興奮してきて何言ってるか分からなく成ってきたと思ったら次のナンに手を伸ばし掛けていたリサが手をピタッと止めた。


 隣のリリカも手を膝に置いている、いつのまに。

 

 「先ずはお茶で口直しですからね」

 前世の妻の言い方が思わず出た、少し気まずいので視線を逸らしてお茶を出す、この世界は生前と生態系にあまり変わりが無い様で椿科ぽい木を見つけたので作ってみたら旨くいったものだ。


 「はー、此れも何か落ち着くと言うか舌に僅かに来る刺激が堪らないです」

 「変な言い方するわね」

 弱Mっ子ですからね。掘り出し物ですからね。


 フライパンで焼けたパンケーキにバターを多めに乗せ溶ける前に蜂蜜をたっぷりかけて先ずはリリカに出してやった、そんな眼で見ないでリサさん直焼けるから。


 一口食べてほっぺたを押し上げる仕草で上下左右に体を振っているリリカを羨ましそうに見ている彼女が妙に情感を誘う、べ、別に本妻とかそういう序列的な事じゃ無いからね。


 そう言えば日本で青年に成ってからほっぺたが痺れて脱力するほど美味しいと感じたことが無かったな、などと考えているといい具合に焼けてきた。


 「はいリサさん」

 「あっ有難うございます」

 敬語?


 「うう!あっまぁいでっっす!!」

 何とか教の神父か。

 「そう?あ、急いで食べないでね最後のおまけがあるから」

 

 注意の必要は無かったようだ二人ともうっとりした顔で脱力しながら口を動かしている、こんなことなら娘の料理をもっと良く見てるんだった、私が作れるお菓子なんて後はこれぐらいだ。


 私は焚き火の横に置いた小さな鍋にほんの少し塩を入れようかと思ったがバターに多めに入れていたのを思いだして入れずに完成にした、それを食べかけのパンケーキの上に乗せてあげた、一瞬リリカが威嚇してきたが足された物を見て眼を丸くした。


 「いいの此れ、村で神事のときしか出さないって言ってたよね」

 「此処に来る途中で少し見つけたんだ、村のじゃ無いよ」

 「いやっほうー、あっずっき、ほれあっずっき」

 当然サトウキビで作った黒糖を竹で作った活性炭で少し漉した砂糖も使っている。

 「地が出てる出てる」

 「いいのよ此れの前でっわ」

 お箸で少しずつ餡子を混ぜて一口食べて身を捩じらせているリリカを見て思い切ったように口に運ぶ彼女をじっと見てしまう。


 「あっまーいですうぅ、口の中が幸せで一杯ですぅ」

 幼児退行気味だけどいいか本当に幸せそうだ。


 「本当にこんな貴族料理が食べれるなんて、凄いです、美味しいっです」

 あれ?勘違いしている、一応訂正しておくか。

 「いや此れは僕のオリジナル料理だからね」

 前世の記憶なので罪悪感を感じながらも伝えておく。

 「え、そうなんですか?貴族料理を出すって看板のお店の料理がもう一つだったので騙されてたのかと思っていたんですけど」


 それは多分あってる、本当に宣伝道理にして貴族料理を出したら不敬罪で捕まるからね。まあ一寸した罰金ぐらいだと言葉を続けようとしたけれど、話は此処までオーラを出して次の一切れを口に運ぶリサを見てまあいいかと至福の笑顔をする二人をお茶を飲みながら見ていた。


 夕食まではオセロをしたり武器防具のメンテをしたり騎士団詰め所を覗いたりスリングの改良をリサの感想などを聞いて詰めて行ったり、それで射撃大会をして本気勝負でリサがパンケーキの生クリーム載せ冷やした柿と桃トッピングをゲットして本気で泣くリリカに一切れ上げて株を上げたり、明日の買い物リストを作ったりしながら過ごし、其の間に煮込んだしか胸肉と骨、野菜のスープでラーメンを夕食に作ってリサに仕返しとばかりに神様呼ばわりされて大騒ぎした。


 朝目覚めると体の上に暖かい物が乗っている、一瞬昨日の乳びんたが浮かんだが少し小さいし固めな感じがする熱い吐息は妖艶さに欠け幼さが伝わる。

 「リリカ?」

 「うん」

 「うんって、服は?」

 「そんなこときくの?」

 「いや、そんなことされたら襲っちゃうよ」

 「うん」

 うんって言われてもリサさん何でこうなったの、と思って横を見るとほほを染めて小さくガッツポーズをするリサと目が合った。

 「十三がラインですから」

 普通なんだ。



        ★



 リサがご機嫌で掃除をしているそのそばで私とリリカはテーブルに向かってかしこまった姿勢で坐っている、風呂に入り三人とも大きなはんてんを着ている。

 「ごめんなさい、こんな予定じゃなかったのよ」

 「当てられたね、二人とも」

 「いやじゃ、、」


 「リリカは素敵だから」

 「・・・うん、好きよ」

 「ぼくも、、」

 「オムルさん、朝食は如何しましょ・・ごめんなさい」


 二人の雰囲気を途中で察したのか謝って下がっていく、まあ朝から運動しちゃったしお腹もすくよね。


 朝食はサンドイッチとクリームスープ、茹卵にマヨネーズと辛子とヨーグルトを足して同量になるようにして混ぜて崩して卵サンド、鹿肉を柔らかく焼いて同じソースで辛子多目にしてケチャップを足しキャベツとはさむ、野菜サンドはバター、マヨネーズ、塩で。どれも私が村で作り上げた物だ、トマトが年三度れるとは知らなかったようで色々混ぜてソースも出来たし、悪戯の振りしてネット小説の受け売りを色々試してふんわりパンの元も出来た。


 「柔らかーい、おいしー、じゅーしー」

 「何時もながら、もぐ、此れだけでも、もぐ、食って、もぐ、もぐ、もぐ・・・」

 途中で意識が全部味に行ったな、ホント可愛いブキッチョ具合だ。


 私は紅茶とサンドイッチとを食べていた、老人の頃の趣向が未だ残っているようで食は少し細い、体作りに幼少期に摂取した食物の影響が結構あるので肉は出来るだけ摂るようにしているが。

 ふと気付いて前を見ると両手にサンドイッチを持って口を忙しなく動かしながらこちらをガン見している二人と目が合って思わず噴出した。


 「あははは。なに?」

 「もぐ、ほろはあい?」

 「もぐ、ごくん、その良いにおいの飲み物はナンですか?」

 「紅茶のこと?お茶の葉を発酵して見たら出来たんだよ」

 「ごくん、私もしらないわよ?」

 「あっそうか此処に来る途中で出来たんだった、道中一人じゃ食欲が沸かなくてさ」

 

 この世界のお茶は基本焦がした物だ、それなりに美味しいしコーヒーめいた物もあるが胃腸が弱った老人には少しきつい、今は子供だけれど何となく苦手意識があるのでお茶の類は以前から彼是試していた。


 「入れる?」

 「うん」

 「はい」

 二人分のマグカップに深めに作った茶漉し網を乗せて茶葉を被せる、お湯を茶葉が浮くまで入れて暫らく待つ、茶葉を出すとき軽くスプーンで絞ってミルクと蜂蜜を少し入れて出してやる。


 「何だろー、凄くいい気持ち」

 「ほんとー、良い匂い違う世界に居るみたい」

 リリカお前、、、。

 「此れが貴族のおちゃ・・よね?」

 「たぶん、此れと似たような物は飲んでると思うよ」

 入れ方も飲み方も食べ方もそれっぽくは無いけれど今日の此の朝食はとても気持ちが良い。


 あれだけ作ったサンドイッチもスープも綺麗に無くなってリリカのお腹が丸くなって朝食が終わった、ご馳走様をして立とうとするとリサが少しまじめな顔をして聞いてきた。

 「何と言う神様ですか?」


 ああ手を合わせていたからな、考えると何だろう?何も無い訳でもないよな、子供の頃に祖母に何か繋がるようなことを聞いた気がする。

 「つくも、・・八百万の神様?」

 「や・お・よ・ろ・ずのですか?」

 「ああそうだそうだ、万物に等しく神様が宿っていると言う言い伝えに近い物だよ」

 「万物、全ての物にですか?」

 「そう思うと僕たちが生きるのに神様の助けなくしては成り立たないだろう」

 「ほんとですね!」

 「だから全ての神様に感謝をするんだよ」

 「はいっ、えと、ご馳走様でした。」「した」


 リリカ・・・。


 それから暫らくしてリリカが復活したので訓練を始めた、その様子を見ていたリサは少し不満げな表情をしていたが近くで参加する事にしたようだ。


 見よう見真似で型を作る姿はこの上なく可愛く思わず手が止まるたびに本気の正拳や蹴りが飛んでくる、危なくてしょうがないので八双の動きの練習法をリサに教えた。


 元々両手剣の構えだが右手と右足、左手と左足を同時に正又は逆に動かす。相撲の手砲とか張り手の練習に近い。


 全ての格闘技の基本だ、八双の構えから右足に力を込めて右ストレートみたいな。


 リリカはひたすら私の攻撃を避けていた、特にそうする様に言った訳ではなく何時もと違う私の動きに攻めあぐねていた。

 「足運びに気をつけて」

 「僕が置く足の位置で攻撃は分かるよね」

 「足を浮かすな死に体だ」

 「目を見るんじゃない、虚を取られる、全身を見て」

 「分かるようになったら僕が置く足を邪魔するんだ」

 足を置く場所と体勢で攻撃の幅が決まる、達人同士の試合が陣取り合戦と言われる所以だ。何だカンダ言いながら彼女の身体能力に舌を巻く、傷つけない程度とはいえ割と本気で打ち込んでいるが掠りもしない、本気で私の練習に成っている。


 次の瞬間に顔面にもろに拳を食らった、リサッ!そこで転ぶのは反則だっ!!。

 違うからな!リリカっウィ~するな!!。



        ★


 鍛錬が終わり幸せなお風呂に入ってから三人で山を降りている、もう一日此処に居る心算なのでキャンプは片付けていない。


 育母は貴族の家でかくまって貰えた様で私の妹の家庭教師をしている、そう私の両親は生きていた、母の切れっぷりも有った様だけど実子で特徴的な目と髪をした私を逃したのが犯罪計画の根底に関係したようだ。


 「取り合えず買取所に行くのよね?」

 「うーん一少し気掛かりが有るんだけれど」

 「あいつら?」

 「いや、一寸違う」

 「連帯処刑ですね」

 「うん、盗賊は無いけど、貴族も三家族いる」


 此の世界に科学捜査は無い、一応心眼や同調、看破等のスキル持ちの判別師という職があるけれど問題はそれが人間だという事、スキルは人を選ばないから。

 

 残された子供などがどんな奴に利用されて神輿になるか分からない。


 日本でも同じで証拠が残らない犯罪は疑わしきは罰する、面倒だから、時間が掛かるからという裏の事情もあって魔女裁判を今だにしている、痴漢とかね、此方の世界では悪意による死体製造は桁が変わる、井戸に毒なんて話は普通に聞く、特に貴族の家族はまず間違いなく看板にされる。つまりそう言うことでリリカとリサが居れば助かる子もいるかなと。

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