隣のツンデレさん
瑞原ヒロキ
第一章
第一章 第1話 転校生
新年度が始まった。中学校生活の最後の年だ。あと一年で卒業という不安や寂しさ、逆に言えばあと一年高校に入学という期待感もあった。そんな不安や期待が入り混じった季節それが春、新年度というものだと僕は思う。実際僕も今そんな感情で窓の外を眺めていた。
今年くらいは、『中学生らしく』過ごそうと思っていた。もっとも何が『中学生らしい』かなんて分からない。体育祭や文化祭などの行事や部活などに真面目に取り組んでみたり、友達と青春を楽しんでみたり、はたまた初めての恋人をつくってみたり...恋人をつくってみたりか...いいな。彼女ほしいな。とまあ、挙げるとキリがない。がそこは自分らしい、自分だけの『中学生らしい』を見つけるのも悪くない気がした。
窓の外を眺めながらそんなことを考えていると先生が教室に入ってきて朝のHRが始まった。担任は今年もいっしょだ。というか3年間同じだ。こんなこともあるんだなと思ったけれども、ころころ一年おきに変わっても嫌だし、同じ方が実際は良いのかもしれない。HRはいつもと同じで淡々と進行されていく。
だが今日のHRだけは特別だった。それは「先生から」で転校生が来ると発表されたのだ。転校生なんて初めてだったのでクラス中がざわついた。どんな人だろう、と言う人や、イケメンだったらいいな、や可愛い子だったらいいなと言う人もいた。アニメや漫画だったら美少女や美少年は全然あり得るがそんな非現実的なことがあるはずがない。別にその転校生に期待していないわけではない。というか転校生って勝手に期待されたり人によってはがっかりされたりするんだろうか。と勝手に同情しておいた。
「みんな静かにしろー。」と先生が言う、続けて、
「西園寺、入って来て」と言った。
西園寺さんか、金持ちみたい名前だな。そのまだ分からない彼、いや彼女かもしれない人に対して興味がわいた。少したって教室のドアが開き西園寺さんが教室に入ってきた。その瞬間教室は一気に静まり返った。転校生改め西園寺さんがものすごく可愛くなかったからだ。と言うのとは逆だ。そう、可愛過ぎたのだ。可愛いというよりかは美しいという言葉の方が合っているのかもしれない。そんな周囲の視線や話し声を気にも留めず黒板に自分の名前を書いていく。
「西」「園」「寺」というように一文字づつ丁寧に書いていく。いよいよ名前を書き始めた。これもまた同様に丁寧に「麗」「奈」と書き、親切に振り仮名もふってくれた。優しそうな人だなとその行動を見て思った。人というのは一つ一つの行動にその人の性格が現れると誰かが言っていた気がしたからだ。彼女は書き終えると前を向いて自己紹介を始めた。
「初めまして。
きれいな声だ。それが彼女の声を聴いた率直な感想だ。
「西園寺は空いている席に座ってくれ」と先生が、
そういえば隣の席が空いていた。これは彼女のための席だったのかと思う。転校生が隣の席に座るとか何かのノベルか?しかも女子とか。期待しちゃうじゃん。
彼女が席に座った。せっかく隣になったので挨拶ぐらいしておこうと
「これからよろしく西園寺さん」
「急に話しかけないでよ!びっくりするじゃない!でもよろしく...えっと...」
「あぁ、ごめん... えっと俺は
「そう。」
そう。って、なに、俺嫌われてるの??
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