2-5 ソライ


『その精霊の愛し子というのは、メイラのことですか』

 

 意識はあるが動けないティエンの側にそう囁いたのは、風の精霊ソライだった。

 彼女の精霊使いであるミシェルは先ほどの怒りが嘘のように、彼らに背を向けて、ボイラーが消えた方向を見ていた。


(どういう?)


『メイラのことですか。やっぱり』


 ティエンは答えなかったが、ソライは黙秘を肯定を捉えたようだった。


「ち、違う!」


 慌ててティエンは否定ししたが、風の精霊は用事が済んだとばかり、彼女の現在の主、精霊使いミシェルのもとへ飛んでいった。


「ソライ。元に戻ってろ」


 ミシェルはティエンに背を向けたまま、そう命じ、ソライは吸い込まれるように彼のベルトに消えていった。


「そうか、ベルトか!」

「そう。俺の精霊鎖はベルトに編み込まれている」


 ティエンの言葉に、ミシェルは頷くとゆっくりと彼が閉じ込められている牢屋に歩いてきた。


「取引をしたい」




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