第41話 百合さんと異世界の味


天高く馬肥ゆる秋


秋も深まり肌寒さを覚えるようになってまいりました。


秋は終われどもおいしいものは沢山ありまして


乙女の悩みはまだまだ尽きません。



そんな時に声をかけてくるのですよね





「また新しいアイディア仕入れてきたから」


姫子さんからの悪魔のお誘いに乗りましてお菓子を作ることになりました。



彼女の趣味の一つにお菓子作りがありまして


正確にはお菓子創りでしょうか


新たなお菓子を創り出すことに情熱を傾けております。


――――



今回のお菓子は焼き菓子です。


シュー生地を細長く硬めに焼いてライトサワークリームを挟みます。


サワークリームではなくライトサワークリームにして脂肪分をちょっぴり削減

乙女のせめてもの抵抗でございます。


クリームにはオレンジピールが混ぜられていて面白い触感ですね。


  『オレンジの香りがする硬めのエクレア』


と表現しましょうか・・・


上手に表現が出来ない私って・・・残念



クリームに混ぜ込むものを変えてみて色々と作ってみました。

レモン果汁、ベリージャム、栗のペースト

どれが美味しいのでしょうか


せっかくオーブンを温めるのですから普通のシュークリームも作りましょう。



――――



ちょっと調子に乗りました。


日持ちのしない生クリーム菓子が山のように出来上がってしまいました。

二人分としては考えられない量です。

どちらかが止めれば良いのですがノリノリでしたからね。



さてどうしましょうか


シュークリームと言えば・・・  彼女を呼びましょうか



 >>緊急案件:山盛りシュークリームの対応について



「どこですか おゆきせんぱいの家に行けばよいですか

 おなかすいてます。

 オナカペコリーヌです」


ペコリーヌさんがやってくるようです。


「お土産にカレーパン持ってきます」


あなたどこに居るのですか

そしてペコリーヌさんカレーパン食べずに持ってくるようです。


シュークリームが食べきれなくて呼んでいることわかっていますよね。

なぜお土産としてさらに食べ物を持ち込むのでしょうか。

相変わらず行動が読めません。



――――



「オナカペコリーヌ参上っ」


早すぎませんか



「百合ちゃんもいますよぉ」


なぜ・・・


「歩いていたので捕まえてきました」


あぶない人ですよ。通報されますよ。



「捕まりました。シュークリームがあるって」


シュークリームくれるからってついて行っちゃだめでしょ

どこかで注意を聞いた覚えもありますが・・・


とりあえず試食会におふたりご招待です。



――――



それでは頂きましょうか



「カスタードシュークリームは無いんですか」


今日は生クリームだけですよ。

カスタードクリームの方が好きでしたか


「生クリームの方が好きですよ」


・・・では何故聞いたのでしょうか。


「みかんの香りがしますね。みかん入れたんですか」


オレンジです。


「何かを混ぜるのは邪道です」


それではピュアな生クリームだけにしましょうか



「みかんも食べます。美味しいですから」


邪道って言ったではないですか


「邪道でも美味しいのは合格です」


基準が見えませんが・・・喜んでいるようですので何よりです。

アリスさんですからね。仕方ないところでしょう。


――――


「この長いシュークリームさくさくです」


百合さんに高評価頂きました。


「れもん味もおいしいです」


色々作りましたから試してくださいね。

小さめに作ったのでたくさん食べられますよ。


「何という名前のお菓子ですか」


作ったばかりですから名前がありませんね。



「『フェリークエクレール』と言う異世界のお菓子だよ」


えっ 姫子さん いきなり異世界来ましたね。

妖精のエクレアですか。それっぽいですね。



「はじめて食べました。異世界すごいです。おいしいです」


「本当は『ブランシュの実』を入れるんだけどこっちにはないからね。

 代わりに入れたけどオレンジもレモンも美味しいでしょ」


異世界的な名前ですが・・・今考えましたよね。

『ブランシュの実』なんて存じ上げません。


設定を重ねてきましたが、覚えておかないと後で大変ですよ。



「アリスお姉さんは『ふぇりーく』食べたことありますか」


「初めて食べました。異世界の味美味しいよね」


アリスさんとしては『異世界』は気にならないようです。


『異国』的な意味合いだと勝手に解釈していますね。

そうして頂けるとこちらはとても助かります。



「術は使っていますか」


「妖精さんの作るお菓子だから術は使ってないよ。

 術を使うのは聖女さまに作ってもらおうね」


姫子さん 盛り上げておいて最後にこちらに投げてきますよね。

『聖女の術』を使わせたくて仕方ないのですよね。


やりませんからねっ


――――


分かっては居りましたが、4人でも消費できませんでした。


これ以上食べると乙女的に後々困るのです。


姫子さんみたいにかろりぃさんがすべてお胸に集まるのであれば良いのですが

私は脇腹に集まるのですよ。


無理に食べる物でもありません。


お土産にお持ち帰りくださいね。



「家にお腹を空かせた子供たちが待っているんですぅ」


アリスさん いつ子持ちになったのですか。

変な設定を作らなくてもいっぱいお土産あげますからね。


百合さんもお持ち帰りくださいね。

水玉さんにも持って行ってあげましょうか。



「もうひとつ分もらっていいですか」


ちょっとモジモジしながらのお願い

わかりやすい子ですね。


美味しい物を食べると大好きな人にも食べて欲しくなりますよね。

一緒に「おいしかったね」って言うんですよね。


ひーくんの分もお土産を作りましょう。


異世界のお菓子って言ってはいけませんよ。

ないしょのひみつですからね。



「今回の新作は成功だね」


そうですね。

いつの間にか名前も決まりましたからねっ


恋愛の魔女さんが妖精さんにお願いしないと作ることが出来ないお菓子です。

魔女さんのお菓子ですからね。


これ以上聖女に設定を増やさないでくださいよ。

『聖女の術』は関係ないですからね。


少し設定を魔女さんに引き取って頂きます。

設定を増やすの自重してくださいよ。



さてあとは乙女の戦いです。


夕食前のウォーキングに付き合って頂きますよ。

素振りも増やさなくてはいけません。


乙女の戦いは今始まったばかりっ


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