第35話 百合さんと異世界の夢


やわらかな日差しを感じ目が覚めると


背中にやわらかながらも圧倒的な感触


昨夜は姫子さんと一緒に眠ったのですが、いつの間にか抱き枕にされております。


動けません。声をかけるのですが返事がありません。



あっ 水玉さん 良いところに来ていただけました。

姫子さんを起こしてください。


写真撮らなくても良いですからっ


さらにぎゅっと・・・ 姫子さん 起きてますねっ



――――



みなさん早起きですね。


百合さんたちはすでにお庭を散策してきたそうです。


アリスさんが見つけたカエルの小次郎くんが可愛かったそうでして・・・


なぜ 小次郎くん・・・


深く考えるのはやめましょう。アリスさんですからね。



――――



朝食後はゆっくりとお茶を飲みながらプチ女子会


茶葉は私が持ち込みました。新茶ですよ。



「良い夢が見られましたか」


とてもやわらかな夢が・・・いえ夢ではなく現実でしたね。



少し挙動不審なランドセルガールズ


おや 想い人さんとお逢いになられたのでしょうか。



「ひーくんなんて出てきていませんっ」


誰もひーくんなんて言っていませんよ。

これは指摘すべきでしょうか 指摘したら負けでしょうか



「私は・・・ その・・・」


表情だけで内容のわかる水玉さん お可愛いことです。


まわりから優しいまなざしがふたりに注ぎます。


少し離れましたので恋しくなってしまいましたか。

明日学校で会えますよ。



――――



簡単な清掃と身支度を済ませまして帰路につきましょう。


管理人さん ありがとうございました。

今回も楽しく過ごすことが出来ました。


水玉さんはちょっと涙目 名残惜しいですよね。



バスに乗ってもぶんぶんと手を振るランドセルガールズ


可愛らしく感じてしまいます。



「帰り道は家に着くまでずっとさびしい気持ちになります」


楽しかった反動ですね。


でもまだ旅行中ですよ。楽しみましょう。



「帰ったらひーくんにいっぱい自慢できるよ。楽しいよ」


思わぬアリスさんの発言に首を縦に振る百合さん


不意打ちには弱いようです。



何を自慢しましょうか。


ひーくんの香りのサシェを作ったことをお話ししましょうか。



「先生が男子の香りを選ぶといいって教えてくれたから作っただけです」


エリザベス先輩はそんなこと言いましたっけ お姉さん覚えていませんよ(棒)



「だから水玉ちゃんも学級委員長くんの香りを作ったんだよ。ねぇ」


同意を求められて苦笑いをする水玉さん


そろそろ言い訳が苦しくなって参りましたよ。それが可愛いのですけど



「サシェ 今夜から使ってくださいね。 夢で逢えますように」



――――



「学級委員長くんとは進展ありましたか」


そこ気になりますよね。

お姉さんちょっとだけ知っていますよ。



「連絡先を交換したと聞いておりますよ」


「どうして雪ねえさまが知っているんですかぁ」


「私も知らないよ どうして教えてくれないのっ」


百合さんも知らなくて当然ですよ。

旅行前の最新情報ですからね


「仲間外れじゃなかったんだ よかった。

 でもどうして雪ねえさまが・・・ あっ(小声)」


違いますよ。『聖女の術』は使っていませんよ。(小声)



 真っ赤な顔をしながら連絡先を紙に書いて渡したでしょ


 お勉強のわからないところを教えてもらう為なんて言いながら渡したでしょ


 学級委員長くんも真っ赤になっていたでしょ



 無事渡してひとりになったら嬉しそうにぴょんと跳ねたでしょ



そんな大胆なこといけないんですよ。

恋する諜報員が見逃すはずないでしょ。



「そう言えばニコニコしながらスマホ見てたね」


エンジェル先輩 一晩一緒でしたからね。バレていますね。



「えへへ 毎日ちょっとだけメールするようにしたの

 雪ねえさまに教えてもらったから」



前回のお泊り会での乙女会議で決めましたからね。



『連絡はSNSではなくメールか電話にすること』

『毎日 何でもいいからお話しすること』

『お返事はもらえなくても当たり前 今の自分を伝えること』


SNSでは一言だけで終わるけど

メールなら文章にしなければ成り立ちませんからね。

少しでもたくさん話せるようにする乙女のてくにっくです。


「そのテクニック 自分でも使えば良いのに」


エンジェル先輩 辛辣でございます。



SNSが中心となった昨今

既読が付いて返信が無いと焦るよりも

手紙を出して胸焦がしながら返事を待つ方が正しい恋する乙女だと思いませんか


私は古い考えだと自覚はあります。

でもこんな私の歩調に合わせてくれる殿方が良いのです。



「お返事はいただけましたか」


「ふたつも来ました。えへへ」


「何をお話したのっ」


「ないしょ・・・ あとでね(小声)」


ないしょだそうです。でも百合さんはあとで教えてもらえる様子

聞こえてますよ。でもふたりのないしょにしておいてください。



「ロギング取ろうか」


姫子さん 真顔でつぶやくのやめてください。冗談に聞こえませんよ。


だめですよ。覗いちゃだめですからね。本当にだめですよ。





夕暮れの世界樹広場にはお母さまがお迎えにみえています。


お迎えありがとうございます。無事帰着致しました。



「本当にありがとうございました」


ふたりとも良い子にしていましたよ。こちらこそありがとうございました。



「お仕事の邪魔をしませんでしたか」


仕事なんてしていませんよ。遊びに行っただけですよ。

じゅうななさいですよ。



「それでは名残惜しゅうございますがお暇させていただきます」


エンジェル先輩とエリザベス先輩は引き続きバスでお帰りです。



「ごきげんよう」


カーテシーで見送るランドセルガールズ

上手になりましたね。


お姉さんたちも合わせましょうか


「「ごきげんよう」」


アリスさんもやればできる子なのです。



バスに手を振るふたりと困惑するお母さま方


「雪ちゃん あのお嬢さまは私たちと話をしても良い方なのかしら」


私の先輩ですよ。百合さんも水玉さんもお友達になりましたよ。


それにふたりとも立派な淑女です。




旅行という異世界の夢が覚めて


明日からは日常が始まります。


でも今夜は夢の続きを見ましょうか。


枕元にはサシェを置いてね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る