第31話 百合さんと難攻不落の美女


静かですね。


付近を通行する車もなく隣家ともかなり距離がございます。


夜の音がする高原の別宅


夜会では乙女の恋語りが続いています。



――――


「ホストのわたくしがお話しないのもいけませんね。

 独り語りとなりますが聞いて頂けますか」


エリザベス先輩の好まれる殿方の条件


実は今まで恋バナはすれども先輩について聞いたことがございませんでした。

おそらくその情報を知っている人はかなり希有な存在かと存じます。



「恋について見聞きすることは多いのですが

 恥ずかしながら殿方とお付き合いをしたことはございません」


そこで恥ずかしがってしまわれるのですか。

このじゅうななさいも同様に恥ずかしい側のひとりでございますよ。



「しかしながら理想は持っております。夢と言えばよろしいのでしょうか。


 『何があっても最後まで私の味方で居て頂ける方』が私の理想です」



最後まで味方で居て頂ける殿方ですか。エリザベス先輩の背負う物は大きいですからね。



「大げさな言い方になってしまいますが


 世界のすべてが私を批判し蔑むような時が来ても、

 批判に耳を貸さず御自分の信念のみでわたくしを信じて頂ける方が理想でございます」


世界を敵に廻しても味方でいることは並大抵の信頼だけでは出来ないはずです。

そしてエリザベス先輩の敵となり得る者はおそらく強大な力を持っているのでございましょう。


本当に信頼して身を預けることが出来るのであれば理想でございますね。



「そして・・・出来ればなのですが・・・


 寂しいときに抱きしめて頭を撫でて頂けると幸せに存じます・・・」


先輩・・・ 壮大な夢の最後にとっても乙女なことをおっしゃいますね。


遠く夢見るような蕩けた表情

本当に夢として心で温めている場面なのですね。


エリザベス先輩も恋に恋する乙女です。



「わたし味方します。水玉ちゃんだって味方になってくれます。

 雪ねえさまだって味方です。

 みんなみんな味方です。大丈夫です」


百合さん お優しいのですね。力強くその言の葉を頂けるのは幸せですよ。

大人のしがらみなど関係なく味方で居ることを約束してくれる純粋な気持ち

お姉さんは百合さんの気持ちを誇らしく思います。



「先輩の立ち向かう困難は私には想像すら出来ません。


 でも先輩のおっしゃる殿方はすでにいらっしゃると感じております。

 一度胸に手を当てて心の声を聞いてみてはいかがでしょうか」


姫子さん あなた何か知っていらっしゃるようですね。

胸に手を当ててよく揉んでみるのですね・・・ げふん

胸に手を当ててよく考えてみるのですね


ハッとした顔をされましたね。誰か心によぎる方がいらっしゃるのでしょうか。



「・・・まだ ・・・まだ わたくしにはわからないのかも知れません。


 わからないふりをしているだけかも知れません。

 恋とは難しいものでございますね」



背負う物が並大抵ではないエリザベス先輩の恋


微力ながらもこの音無 応援させて頂きます。



――――



「わたくしの恋はまだまだ未熟ではございますが、姫子さん


 殿方より愛の告白をしていただいたとお聞きしておりますよ。


 しかもお断りしたとのこと

 評判の良い殿方だったそうではありませんか。

 下世話ではございますが何がいけなかったのでしょうか」



爆乳姫子さん とてもハイスペックな女性でございます。

家柄も良く、女性なら望むをお持ちでございます。

さらには学業から芸事まで多岐にわたり才能を発揮されております。


引く手数多でございましょう。

今まで私の知る限りでも数人より告白をされております。



「告白をされたと言われましても色々と思うことがございまして・・・」


一度も首を縦に振らない難攻不落の美女

謎多き美女でもございます。


告白をお断りしたとの速報を受けたときの衝撃

皆さんザワついていらっしゃいましたよ。


あの時のアリスcafeでの議論は白熱致しました。



§



『姫子さんを堕とす殿方の条件』とは・・・


アリスcafeにて急遽開かれました。


乙女会議「爆乳姫子攻略方法」

(開催場所:本人の目の前))


性格からすると年下から甘えてもらいたのではと推測

上目遣い作戦が有効なのではなど意見が述べられました。


ポンコツさんの面倒見が良いところを見ると手を焼かせる手法が有効とも

(このポンコツさんって誰っ)


極論ですが殿方には興味はないのかも

むしろ女性が・・・

(これが一番盛り上がりました)


呆れた姫子さんから答え合わせ


『全員最初に胸を見るの 最初に目を見てくれたら恋に落ちるのに』



§



「そのような議論がございましたか。


 殿方にとっては目を惹く魅力的な肢体をお持ちですからね。

 酷な条件かと感じますよ」



「告白を受けてもその方が


 私の身体を見て好意を寄せて頂いているのか

 私の内面を好きになって頂いたのか


 判断できる目が私にはまだございません。


 恋愛に対する不信感が心にある内は心騒ぐことはないでしょう」


大きくて魅力的なお胸を持つことも良い事ばかりではないのですね。

殿方が見つかるまでは私が抱きしめて差し上げます。



――――


「雪さん わたくしにとってあなたが一番謎めいていますよ。


 他の方の恋のお手伝いをされておりますが

 御自分の恋愛については語ることがございませんね。

 いかがなのでしょうか」



私の理想 お話することがございませんでしたね。



「私が殿方に求める事は予てより胸に秘めておりました。


 立ち向かうために不安で怯える私に『頑張れ』ではなく

『大丈夫』の言の葉を頂ける方


 事を成したときに『頑張ったね』の言の葉を頂ける方


 そして『ありがとう』を素直に口に出来る方でございます。


 私自身もそのような人になろうと努力しております。

 

 そして巡り会い好意を頂けるのであれば

 心より『大好き』と伝えたいと夢見ております」



殿方に魅力を求めるのであれば、隣に立つために自分もそうあるべきであると考えております。


同じ事を魅力として私の中に感じて頂ける殿方がいらっしゃるのであれば

支え合い添い遂げられると信じております。



「そうでしたね。音無さんは言の葉を大切にし言霊を信じる方でしたね。


 簡単なようで難しいと感じます。

 だからこそ夢見たいと思います。わたくしも恋に夢見ております。

 一緒に夢を諦めることなく心で育てましょう。」



エリザベス先輩 私泣いてしまいますよ。

そんな優しい言の葉を頂いたら、もう先輩のお顔が滲んでおります。



「雪ねえさま 大丈夫です。私も一緒です」


隣に居た百合さんに抱きしめられてしまいました。

百合さんの小さな身体の抱擁


温かです。


あなたは優しさを持った素敵な女性ですね。


いつも『大丈夫』と言ってくれる素敵な女性ですよ。

ひーくんが夢中になるはずです。



――――



独り語りをしてしまいましたね。


恋に恋する乙女 熱くなってしまいました。


みなさん そんな柔らかな眼差しで見つめられるのは恥ずかしゅうございます。


次のお話に移って頂けませんか

心臓が持ちそうにございません。



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