第29話 百合さんと二人の聖女


私は水玉ちゃんと一緒に雪ねえさまの旅行についてきてしまいました。


お姫さまのようなエリザベスお姉さんのご招待です。



お迎えのバスは遠足のバスより大きかったです。


中に入るとバスの奥がお部屋の様でまんなかにテーブルがありました。

天井にシャンデリアのあるバスなんて初めてです。


ジュースもお菓子もいっぱいあって、お姉さんはみんな優しくて夢みたい。



雪ねえさまも姫子おねえさんも淑女です。大人の社交場です。


私も水玉ちゃんも六年生ですからおとなの仲間入りです。


淑女は『ぷろーじっと』と言いながらかんぱいすることをおぼえました。


勉強してりっぱな淑女にならなければいけません。がんばります。




――――



お昼ご飯の時に『くまくん』と一緒に寝ていることをお話ししてしまいました。


でも誰も笑いませんでした。


『くまくん』はひーくんがくれたクレスマスプレゼントです。かわいいです。


プレゼントを大切にしているだけですからおかしくないですよね。


やっぱり大人はひとあじちがいます。おこさまな男子とはちがいます。


アリスお姉さん『くまくん』が欲しそうでしたがじょうずにおことわりしました。


大人のかけひきもおぼえてしまいました。かんぺきです。



――――



お泊りはエリザベスお姉さんの大きなお屋敷です。

お母さんはペンションだと予想していましたが違ったみたいです。


大きなお屋敷に住んでいるお姫さまのようなエリザベスお姉さん


エリザベスお姉さまの髪は綺麗で長い黒髪です。


ここで気がつくべきでした。



――――



みんなで一緒にサシェと言う香り袋を作りました。エリザベスお姉さんが先生です。


お部屋にはたくさんの花をかわかしたものと良い香りのする水がずらりと並んでいます。


ほかにもぐるぐるした形のガラスやメモリのついたガラスもありました。


理科室みたいです。


ここでも気がつくべきでした。



――――



眠るときに置く香り袋です。


眠るときの香りは男子を思い浮かべるようにと先生に教えてもらいました。



男子ですか・・・ 仕方ありませんからひーくんの香りを作ってみました。

『くまくん』をくれたのですから無視してはかわいそうです。


「素敵な恋の香り」とほめてもらいました。


お付き合いしていないのにおかしいですね。


『ハンカチ』と『くまくん』をもらっただけですよ。



水玉ちゃんは学級委員長くんの香りです。

大好きですからとうぜんですね。おうえんしています。

きっと夢の中でも会えるのです。




雪ねえさまは世界樹の香りです。

聖女さまですから自然に作ってしまうのですね。


姫子お姉さんも世界樹の香りを作りました。

聖女さまとなかよしの魔女さんですからね。とうぜんです。


でもここでエリザベスお姉さんが口をすべらせてと言ってしまいました。



  ぴんと来ましたね。



エリザベスお姉さんは聖女さまのないしょのひみつを知っています。



しかも動かぬしょうこを見つけてしまいました。


お部屋の棚に『聖なる水』と同じ小びんがありました。


雪ねえさまからもらったのでしょうか。



エリザベスお姉さんはお花の香りにとってもくわしいです。


手作り教室でもたくさんのお花がよういしてありました。まぜる用具もとくべつでした。



わたしはかくしんしてしまいましたね。


きっとエリザベスお姉さんは『聖なる水』をつくれます。


これはしらべる必要がありますね。



さりげなくさぐりをいれましょう。



――――



ドレスコードとはパジャマのことでした。

淑女のことばをまたおぼえてしまいました。


お母さんにじまんしましょう。淑女のあいさつにもおどろいていましたからね。


私は淑女なのです。もう大人のなかまいりです。




そしておふろのじかんです。


最初に雪ねえさまと水玉ちゃんがはいります。

前のお泊り会は私が一緒だったので交代です。


つぎは私とエリザベスお姉さんです。


これをねらっていました。




エリザベスお姉さんは私より少し長めの黒髪です。


お姉さんに髪を洗ってもらったので、私が洗ってあげました。

背中も白くてつやつやです。


雪ねえさまにそっくりです。しょうこはそろいましたね。


淑女らしくさりげなく聞いてみましょう。




「エリザベスお姉さん 教えてほしいことがございます」


「なんでしょうか」


「お姉さんは聖女さまですか」



さりげなく聞くことができました。かくしてもムダですからね。



「よくわかりましたね。私は『花の聖女』ですよ」



おどろきです。かくさずに教えてくれました。


お花の聖女さまでした。でもないしょのひみつにしなくてもだいじょうぶですか。




「『世界樹の聖女さま』のお友達ですからね。でも他の人にはないしょのひみつですよ」



雪ねえさまは異世界でも有名なのです。


お花の聖女さまは、お花から『聖なる水』を作る聖女さまでした。


雪ねえさまに作り方を教えてあげたのはお花の聖女さまです。先生です。



「でも『聖女の術』を使えるのは世界樹の聖女さまだけですよ」


そうなのですか。雪ねえさまはすごいのです。



「『世界樹の聖女さま』が術を使ったら教えてくださいね。なかなか見せていただけないのですよ」


私は二回も見てしまいました。じまんしましょう。




これはたいへんなことになりました。


雪ねえさまは『世界樹の聖女さま』です。聖女の術を使えるのは雪ねえさまだけです。すごいのです。


おともだちの姫子お姉さんも『恋愛の魔女さん』でした。恋の魔法をたくさん知っています。


そしてエリザベスお姉さんは『お花の聖女さま』です。お花から聖なる水をつくる聖女さまです。


たくさんのないしょのひみつを知ってしまいました。



水玉ちゃんに気が付かれないでしょうか。大人の世界はどきどきです。





ゆういぎなおふろのじかんでした。



あっ 大事なことを聞くことを忘れてしまいました。



エリザベスお姉さんは十七歳なのでしょうか

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